原則と例外
人は産まれてすぐの状態では、何もできないという訳ではないが、何事も判断することはできない。これは起こっている事象を通常の事態として認識し把握することができないからである。人は成長するにつれて、起こっている事象が通常のものなのか、それとも異常事態が発生しているのかを判断し、それに応じた行動を選択できるようになる。
基本的に、あらゆる「成長」とはこのように、面前の事象を通常のものとして把握できる範囲、すなわち原則に基づいて判断できる範囲を拡張することである。人は経験を蓄積することで、自らの原則体系を構築していく。
原則処理と例外処理そのものの差異は、同一事象を処理する際のリソース消費量の差異として理解できる。例外処理はより多くのリソースを必要とするのに対し、原則処理はより少ないリソースで可能である。未経験の事象を処理する場合と、何度も経験を重ね習慣づけられた事象を処理する場合の差異を想起すれば、このことは簡単に理解できる。
したがって、より広範囲な原則処理の可能性は、全体の処理リソースのコスト削減に寄与するものであり、組織全体に利益をもたらすが、組織の階層性という現象もこの観点から理解可能となる。
どの組織においても、高い職位はより強い権限を持つが、それはより広い範囲の事象を原則的に処理できることと同義である。他方で低い職位は権限を制限され、その範囲を越えて権限を行使する行為は、越権であり例外的となる。
この普遍的な制度は、原則と例外についての、もっとも単純な形式である。組織の階層性は、原則と例外の範囲の制度的構造体なのである。
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