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マッチングアプリで出会った人と結婚したアラサー女の婚活話 #最終話

31歳春 現在の旦那と出会う

先にカフェで待ってくれていたお相手(現在の旦那)に、私は全力の笑顔を向けて挨拶をして席に座った。
まずは当たり障りのない雑談(「暑いですね」とか「道中は混んでましたか?」とか)をしてみる。
回答は返ってくるものの、目が合わない。
その内紅茶やケーキなどがきたので食器類の受け渡しをする。
一瞬目が合いそうになっても勢いよく逸らされてしまって、一切目が合わない。
私があまりにもハズレでがっかりされているのだろうか…それとも緊張しているのだろうか……どっちかなんだろうなと思いながら話を続けていた。
(婚活を始めたての私だったら間違いなく「私がブス過ぎて気持ちが悪がられているのだ」と決めつけてなるべく早々に去っていただろう。成長である。)

目線は合わなかったものの、話を続けている内に「この人は賢くて嘘が付けない人なんだろうな」と思えてきた。
例えばお相手の専門分野の話になった時は、門外漢の私にも分かるように専門用語などを使わず、例え話をしながら話してくれるとか。
私が解釈を間違えたときにはちゃんと訂正してくれる(決して適当に話を合わせて適当に受け流したりはしない)とか。
どの話も簡潔で矛盾がなくすんなりと頭に入ってきやすいとか。
とても好印象だった。
私は私で、相槌や声を出して笑うなど、
しっかりプラスのリアクションをすることを意識していた。
だがしかし、それでも一切目線が合うことはなかった。
小一時間は話したけれど、ついに目線は合わないまま帰ることになってしまった。

帰り際、私は「よかったらこれからもよろしくお願いします」と握手を求めてみた。
もし目線が合わない理由が「私のことを気に入らない」なのであれば、握手は拒否されるか握手をしても素早く手を放すかだろうと思っていた。
また、パーソナルスペースを自然に縮める手段としても握手は有効だろうと考えていた。
結果、「よろしくお願いします」と頭を下げながら、アイドルの握手会かの如く両手でしっかり手を握ってくれた。
その手は冷えっ冷えなのに汗ばんでおり、かつカタカタと震えていた。
これは可哀相に……相当緊張していたな……と思った。
そして手を離した彼は、「次はドライブでもしましょう」と次のデートに誘ってくれたのだった。

この人を早く保護しなくては…!という気持ちになる

昼下がりから2時間ほどドライブをした。
ドライブの良い所は横並びで座るので対面で座るほど緊張しなくて済むことと、景色がどんどん変わっていくのでそれだけで話題ができることだ。
ただ、それに頼って当たり障りのない話ばかりしていると関係性が深まらずフラれてしまうと思ったので、「嫌な気持ちにさせてしまうかも……」と思いながらも少し踏み込んで、恋愛や結婚関係の話題を振ってみることにした。

  • 今までどんな恋愛をしてきたのか

  • 彼女ができたら何をしたいのか

  • どんな結婚生活を送りたいのか

相手の気持ちや価値観を理解できるような方向にどんどん深堀りするように質問を重ねていった。
そうすると答えられる範囲で答えてくれたり、答えたくないところは答えたくないと言ってくれたりした。

私はこの時に「踏み込んだ質問をするのは別に良くて、答えることを強要さえしなければいいし、不快な気持ちにさせたときは軽く謝ればいいんだな」と気が付いた。
そんなことは当たり前なのだけれど、頭で分かることと実際に体験するのは違うもので。
私はこれまで家族にも友達にも「話したければ話すだろう」というスタンスで自分から踏み込んだ内容の質問をすることを避けてきていたので、あまりそういう体験を実際にできていなかったのだ。
婚活や恋愛や結婚というものを特別視しすぎていた節もある。
結局は普通の人間関係とあまり変わらないのに、少しでも失敗したらすぐゲームオーバーになるみたいな、物凄く特別なものとして捉えてしまっていた。
だから、必要以上に踏み込んだ話をすることを恐れていたのだ。

ドライブのおわりに夕食を一緒に食べに行った。
この頃にはもう目が合うようになっていた。
私達はまだLINEを交換していなかったので、夕食を食べながらLINE交換をお願いするとしぶられた。
えっ…まさか既婚者だったりするのかな…と一瞬不安になった。
既婚者は浮気がバレるのを防ぐためにLINEの交換をしぶることがあると聞いたことがあった。
数秒気まずい空気が流れたあと、「悪用されたらどうしようと思って…」と気まずそうに言われたので問答無用で交換した。
それと同時にこんな純粋な子をいつまでもマッチングアプリに放牧していてはいけないと思った。
早急に保護しなければ。
次のデートの日時と場所を決めてその日は解散した。

帰宅後

このとき私はまだマッチングアプリで複数人とのメッセージのやりとりがあった。
その全員に「気になる人ができたのでやりとりをやめたい」旨を伝えて、やりとりをやめた。
私はまだ交際できるとは限らないけれど、もう彼と交際する気でいた。
フラレたらもう結婚は潔く諦めようと思っていた。
退会前にメッセージを継続してくれた方々へのお礼を伝えたかったのと、私とのやりとりの時間を他の人とやりとりする時間に当ててもらえたほうが良いと思っていた。

保護成功、もとい、交際開始

次のデートの日がやってきた。
私は婚活がああだのこうだの細かいことを意識せず、デートを楽しむだけ楽しんだ。
そして帰り際に付き合ってほしいとこれ以上なくドストレートに告白した。
答えはYes だった。
私は情緒もなくすぐに「マッチングアプリを退会しよう」といった。
答えはYes 以外受け付けない……つもりだったが、男性は課金方法によってはすぐに退会できなかったのでLINE の方にアナウンスしておいた。
とはいえ、マッチングアプリを開いてなさ過ぎてアプリを探すのに時間をかけていた彼のことだ。
まあそんな心配はないだろう。
(とかいいつつ3か月後にちゃんと退会するところを見届けた。)

おまけで、長く付き合って結婚しなかった例があるというのも学んでいたので一応釘を刺しておいた。
「ちなみにプロポーズってしたい派ですか?されたい派?」
「したい派ですかね」
「ま、あんまりゆっくりしてると私からしちゃうんで。早めにしてくださいね。」
「えぇ……」

これで私の婚活は終わり。

今回得た婚活の知識

  • 相手の感情は自分で想像しても分からないので、勝手にネガティブに相手の感情を想像しないこと

  • 恥をかいたり嫌われたりするのは男でも女でも怖い
    だからそれを全部引き受けてあげるつもりで行動するとよい

  • 関係性を深めるには踏み込んでいくことが必要

  • 踏み込んだ話は関係性が浅いうちにやった方が絶対に怖くない
    答えることを強要さえしなければいい

  • 不快な気持ちにさせたときは謝ればいい

  • 恋愛も結婚も普通の人間関係と殆ど一緒


帰るまでが遠足、結婚までが婚活?ならこの後も婚活?

この後は彼と交際を続け、全身全霊でプロポーズするようにプレッシャーをかけ続けた。
ことあるごとに「今プロポーズしていいよ」と言ったり、
最終的には「何月何日の何時何分にプロポーズするんですかねぇ!???」とか言っていた。
そして1年程でプロポーズしてもらった。
彼は私の想像以上にしっかり準備をしてくれていた。
場所だったり、婚約指輪だったり、花束だったり。
ロマンチックな演出が好きな人なんだなあ…まあ、したいようにさせてあげよう……と思いながらありがたく受け取った。

そしてプロポーズしてもらったあと、私は本当に彼と結婚していいのかと初めて迷い始めた。
彼の言動に何かひっかかるところがあったわけではない。
皆が結婚をそれぞれお祝いしてくれる中、
結婚した未来と結婚しなかった未来、どちらが幸せなんだろう……とか、
そんな漠然とした疑問と将来への不安が突然襲ってきた。
数週間は不安定な状態で生活していたのだが、それも時間が解決してくれた。
「どんなことがあっても、幸せを感じられるかどうかは私の解釈次第だ。
これからもなんとしても私のことは私が絶対に幸せにしてみせる。
ついでに夫も。」
と突然覚悟が固まったのだった。

あとは特筆すべきこともなく結婚までは淡々と進んだ。
両親への挨拶を済ませ、両家の顔合わせをセッティングし、市役所に婚姻届けを提出した。
婚姻届を提出した後、「結婚って結婚式場じゃなくて市役所でするんだなあ……」と呟くと「また情緒のないこと言ってる……」と夫になったひとが横で一人ごちるのだった。

これで、私の婚活は本当に終わり。
たくさんスキをくださってありがとうございました。

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