ぽたぽた焼に罪はない。おいしい。
おばあちゃんの知恵袋。という単語が存在する我が国では昔から、年寄りの知恵はありがたいものだと言われている。
年寄りは家の宝。亀の甲より年の劫。昔話もあるね。
袋の内容としては、米のとぎ汁で顔を洗うと良いとか、箒掃除の前に茶殻を撒くのが良いとか、昔ながらの主婦の知恵かと思うんですけど。今では袋の中身ってぽたぽた焼きですかね。まあ置いといて。
今回のワードは年寄りではなく生活の知恵の方。
生活の知恵はありがたいものなので、かき集めれば出版できたり、カリスマ主婦インフルエンサーになれたり? します。
特に今求められているのは「おトク」、かな?
生活苦に喘ぐ庶民のためにトイレを流すのは一日数回まとめてから、とか、ペットボトルに水いれて黒い布まいて外に置けばお湯になる、とかもう一円二円のオトクのための知恵がまことしやかに流されているわけですよ。なんか涙でちゃう。
本屋に行ったら「かしこいセドリのやり方」みたいなのが平積みで置いてるわけですよ。
そりゃーSNSで「テンバイヤーは〇ね!!」とか轟々言われても減らないわけだわ、生活の知恵だと思われてるもん。どういうことだ。
こないだも流れてきていた「生活の知恵」を目にした。
「病院なら早朝とか時間外に行くといいわよ、すぐ見てもらえるから」
これは、この「生活の知恵」を見た人がもやもやしたという文脈で流れてきていた。
子連れで働くお母さんたちが子供を病院に連れて行くのが難しいのはわかるが、それはやめた方がいいというものだった。
そう。まずは当直医に無理をかけるためだが、これはお客様にとってはどうでもいいことなんだろう(やさぐれゾンビ発言)。
あとは当直医は専門医とは限らないので、診察は「とりあえず」的なものになること、できない検査があることなど。
あと普通に時間外の点数が付くので高くなる。まあ、時間を金に換えての行為だからそこは織り込み済みだと思う。織り込み済みですよね??
そんな、デメリットもしっかりあるのだ。生活の知恵とは言い難い。
ルール違反グレーゾーンで無茶きかせたってことですね。時間外は緊急患者のためにあるんですよ……
さて、病院といえばこないだ行ったら押し問答を見まして。
「〇〇先生いらっしゃいますか」
と言ってるスーツの奥様。昼休みに抜けてきたお仕事されている方に見える。
「予約を取ってきてください」
という受付の言葉からして薬品会社のセールスではなく、患者だ。
「そんな時間はないんです! ずっと働いていて、だってここ日曜休みじゃないですか! いつ予約が取れるんですか!」
めっちゃ食い下がる。「ぜひ、ぜひ、五分だけでもいいですから先生とお話が!」
挨拶だけでいいですからー!!
叫ぶ姿は何かの舞台のようだ。鬼気迫る。結局、しばらくして先生がやってきた。
ああ先生、その節はとふかふがと頭を下げ、そこから怒涛のママさんトーク。
「先生! もう聞きたいことがいっぱいあるんです!」
初手の発言から不穏である。漏れ聞こえる話によると、先生の患者さんであるらしい、ママさんの旦那さんについてのお悩み相談が始まった。ああだこうだと涙ながらに訴える。
立ち話が終わったのは20分後だった。
受付が隠し切れないキレみを見せながら「次は予約を取ってきてくださいね絶対」といった。
以降の診察時間は順調に押した。
自分の望む結果のために、他を歪めようとする姿勢がクレーマーとなるのですよ。「無理を通せば道理が引っ込む」は生活の知恵ではないですからね。
ああ、ここまで連載してようやく「クレーマーとは」って本質までいったわ。長かった。
受付の方、お疲れ様でした。
ちなみにシマシマは、次はMRIですと告げられました。