ちなみに一杯300円だった
クレーマー認識されてる人、いる。
少なくとも複数回クレームいれたから、ということになるな。
買い物の不思議に、「何であの人、あそこまで腹いっぱい文句言ってたのにまた来るんだろう」というのがある。
どうしてだかは……シマシマにもわからない。
来なくてもいいんですけどね……
ブッとんだお客様エピソードが皆様好きらしいので、今日もそれにしようと思う。
シマシマは若いうちにいろんなバイトを経験した。
フレッシュジュースを売り歩く訪問販売もやったことがある。
早朝作った繊維たっぷりのフレッシュジュースを、運動不足のオフィスの皆様にお届けする仕事だ。
ジュース数種類をポットに入れて、注文が入ればコップに注いで売る。数百円。これをクーラーに入れて、台車を引いて、ゴロゴロ押しながらオフィス街を駆け抜けるのだ。元気だったなあ。
その事業は立ち上げたばかりだった。オープニングスタッフとして入ったのだ。なので試飲もおすすめしていた。
あるオフィスに入ってみた。20人ばかりいる、そこそこの事務所だ。すみませーん、と声を掛けて人を呼ぶ。おっちゃんが一人でてきた。
事情を聞いて、なるほど、とおっちゃんは頷いた。
「そんなら、もらおうか」
ありがとうございまーす。割高なこともあり、売れる確率は高くないから嬉しい。どれにしますか。
クーラーの中身を見せると、「何杯ある?」と聞いてきた。
「うちは21人いるんだ」
えっ、マジですか……ありますよ、21杯分。いります?
おっちゃんはニコニコして言った。
「うん、ええよええよ。置いていかんね、重いやろ?」
そしておっちゃんはオフィスに向かって皆を呼び集めた。「新しくできたジュース屋さんらしい。みんな、一杯ずつな」
おっちゃん太っ腹やん。ええ人や。オフィスの人たちもそりゃあ喜んで「すみませーん」「ありがとうございまーす」と次々に持っていった。
クーラーも空になり、最後の一杯をおっちゃんが貰うと、「ありがとねーお疲れさーん」と、扉を閉めようとした。
おいおいおいおい。いやいやいやいや。
「すみませんお代なんですけどー。21杯分でー」
と言いかけたら、おっちゃんキレた。瞬間的に。
「何だと! 金をとるつもりか!」
お前は何を言っているんだ。当たり前じゃ。さあ、払えの払わんの、なんならそんな金持ってない! のと、言い合いが始まった。オフィスの連中、我関せずである。思えばアレもちょっと、アレだったなー。
飲んだからには金払えや! と言ったら、おっちゃんこう抜かした。
「それは試飲じゃろうが!」
アホ言うなー!
普通サイズで注いだし、試飲ははじめに小さいの見せただろーが! 試飲で今日の商品カラにするヤツおるかい!
押し問答で払ってもらえなかったので、こちらは上司を召喚した。するとおっちゃんはますますいきり立ち、
「そんなに言うなら、保健所に電話してやる!!」
そして本当に電話をかけ始めた。もしもしポリスメン?
すると、応対した保健所の職員、開口一番こう言ったらしいのだ。
「またアンタか!!」
いやあ、いいオチだった。
クレーマー認定されている人、いる。
そういう人は、保健所とか、第三者から見ても突っ込まざるをえないのに、またクレームを入れる。
鏡を見たことがない、悲しき生態なのである。