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ここはインドではなかったゆえに

 他のことでバタバタしてたらうっかり記事書き忘れるところだったよ、あぶねーあぶねー。

 はい。今日も元気にクレーム対策のお時間です。
 ずーずーしい人、いますよね。
 もちろん、客にもいます。もうお前何しに来たんだっていうのいます。集りか。
 もの買いにきたのに集りとは何事か。しかし、案外いるのである。少しでも出費を減らしたい。わかる。お得という言葉に弱い。わかる。
 しかしすごいみみっちい感じになってもそうしたいというのはプライドとの兼ね合いになる。そして昨今、錘であるプライドが軽い軽い。全く。政治家は何をしてるんだ。

 値切るっていうのは難しくないですか。
 今は無慈悲にレジを通すだけなので、値切り行為がそもそもできない。
 個人店の顔見知りならいいんだけれども、大型店舗ばかりある昨今では、お値引きシール貼っているのでないかぎりは値段そのままである。
 ちなみに。
 江戸の時代は、行商人が品物を売り歩いていた。一対一の買い物がほとんどで、あれこれおすすめ見せられたり値段聞いたり、じゃ、もう一声かけてくれたら買っちゃおうかねぇ。なんて交渉も普通にあった。
 つまり江戸では、口の上手い人は安く物を買えたのだ! いいなあ。
 そこで大店が頭を捻って生み出した制度が「掛け値ナシ」。
 掛け合いの値段ナシ、この商品はこの値段で動かしませんよ、ただしお安くしとくので買ってください。という、コミュ障のフォローもして顧客として抱え込む手法だ。というか、交渉下手な売り子がいると負けちゃうからね。それを防ぐためでもあったと思われる。
 昔も押しの強い客はいたんだろうなあ。ご苦労様です。

 まあ、ほとんどの人は値切りから入ることはあんまりないし、江戸と違って交渉術は鍛えられていないと思う。インドだったら半額以下から思い切っていくんだけどね……
 シマシマはいろんなお仕事してきたので、個人商店もやったことがある。あれはお花屋さんだった。
 ある日、店の前に車がつけられた。カッコいいスポーツカーから降りてきた人物は、スタイリッシュなスーツを着た若いおにいちゃんだった。何というかこう、ベンチャー企業の社長か、あるいは思い切ってクラブの経営者とか、そんな感じだった。
 ホームセンターなどで売っているのを見たことがあるだろうか、ビニールカップに入った花があり、花壇に植え替えて使ったりする。それをまとめて欲しいという仰せだ。やっぱり自分の店で使うんだろうな、とシマシマは思った。
「いくつある?」
「今あるだけだと50ですね」
「いくら?」
「70円です」
「うん、じゃ50円ね」
 うん?
 うん? とは一瞬思ったが、個数と間違えたのかなと思い、レジで訂正すればいいやと考えた。
「70円ですので3500円です」
「えっ? 50円じゃないの?」
「70円ですよ、50個で3500円になります」
「50円にならないの?」
 おにいちゃん、値切るつもりだったらしい。70円と理解した上で50円「ね!」と押し切ることによって値切られると思っていたようだ。
「じゃいらない。そんなんじゃ潰れるよ、この店」
 言い捨ててカッコいいスポーツカーに素早く飛び乗り、去っていった。
 交渉すら差しはさまないスタイル。さすがにどうなんだ。インド人だってそこから「okok、だったら65ネ」「60」「63」とかやるのに。つーか20円て交渉の余地少ないな。
 50×50=2500……値切って千円。
 千円のために、ノってそうな経営者風から、立ち上げたばかりの会社を持つ「これから金持ち」に見えてきたが、個人の感想です。仕方あるまい。

 値切りはプライドとの兼ね合いだ。
 個人とのやりとりなら値切りは出来る。そしてそれは雰囲気に左右される。値切りたい人は、俺、金もってるぜ! 感は出さない方がいいのかもしれない。
 もう一つ、自信満々系キャラは、自分の意に沿わない時によく言う。「潰れるよ!」と。
 きっとおにいちゃんは、立ち上げたばかりの事業を潰さないために千円も惜しみたい時期だったのだ。そう肯定的にとらえておこう。元気でやってるかなぁ。
 ちなみに、かなり昔の話だがその花屋は二代目に引き継がれて今もまだ存続している。

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