シキノハイテック(6614)
シキノハイテック(6614)がIPO(新規上場)承認発表されましたので、新規上場会社情報のメモします(Pは同社のⅠの部参照)。
<目次>
・基本情報:何となく会社の概要記載
・外部環境:対象会社の市況・競争環境感
・内部環境:会社の事業等で分かったつもりになった記載
・財務諸表考察:ここがメインですが、財務諸表を読んでの感想など
・所感:全体の感想
<基本情報>
・半導体に関連する事業分野について設計・生産・販売・サービス活動を展開し、電子システム事業(主に車載向け半導体製造に関する検査関連機器及び装置)、マイクロエレクトロニクス事業(半導体のLSI設計及びIPコアの開発)、製品開発事業(画像技術を活用した産業用組込カメラ、画像処理カメラの開発・製造及びシステムの開発)を展開(P4)。
・1975年1月創業、富山県が本店。当初はメッキ関連の業態でその後の1986年にエレクトロニクス事業を始めたようです。昔、半導体が日本でも栄えていた時期に参入して大手企業の協力企業的な位置づけだったのではと思います。日本がデジタル家電や携帯で惨敗した時に一緒に傾いて、昨今、IoTや自動運転などの世の中の電装化に伴って成長したのかという印象です。
<外部環境>
・半導体は、最近ニュースでも言及されるように、世の中の電装化が進んでいる中でその消費量が増えているという大雑把なイメージがありますので外部環境としては伸びてく分野と言えば、伸びる分野と思います。
・特定顧客の依存がそれなりに見られ、デンソー(トヨタのTier1)とソニーLSIデザインで約3分の1程度を占めているようです(P15)。デンソーは車関係で、ソニーはデジタル家電系と思います。そのため、市場というよりもこれらの顧客の伸びも依存する部分はあると思います。
<内部環境>
セグメント別に少し記載してみます(数値は20/3期の記載, P12-13)。
・電子システム事業
車載向けの半導体を作る工程の検査機器を作っている様で、生産が増えれば伸びるといったところでしょうか。しかし、自動車自体、生産台数はそのうち頭打ちになるので、当面は電装化の流れで伸びると思いますが、長い目では新しい分野に出ないとしんどいのではと思います。また大口顧客が(たぶん)デンソーなのでトヨタの車がどれだけ売れるかに大きく左右すると思われます。売上高は1,776,724千円(前期比7.3%減)、セグメント利益は45,996千円(同200.9%増)とのこと。
・マイクロエレクトロニクス事業:
主な用途は、デジタル情報家電(携帯電話、DVD、デジタルカメラ、液晶テレビなど)及び車載機器関連(カーナビゲーションなど)となっており、どれも微妙な分野なような気もします。携帯電話もAppleであれば別ですが、おそらくソニーと思いますし、車もカーナビではなく更に進化した自動運転関連やコックピット系であれば伸びる感じはするのですが敢えてカーナビとの記載なので、おそらくですが、強い伸び感は無いような気もします。売上高は1,842,809千円(前期比0.2%増)、セグメント利益は246,457千円(同3.9%減)とのこと。
・製品開発事業:
画像技術を活用した産業用組込カメラ、画像処理カメラの開発・製造及びシステムの開発、システム開発事業は、主に画像処理システムを開発とのことで、画像関連の技術に強みがあるようです。この分野も競争は激しいですが、ソニーはそれなりに世界でもCMOSセンサーが強いので、そこにかかわっているのであれば相応の伸びを享受するような気もします。一方で、研究開発が先行するタイプと思いますのでどこまで頑張れるかがポイントのような気もします。売上高は912,106千円(前期比1.1%減)、セグメント損失は56,754千円(同47.1%減)で、研究開発(新製品開発費60,657千円を計上と記載)がそれなりにかかるよという点を少し醸し出している気もします。
<財務諸表考察>
監査済みではないですが、16/3期は赤字、17/3期は大幅赤字かつ債務超過転落だったのですが、この個所の要因が特にわからないです。17/3期で5億円程度の赤字でその翌期で5億円の利益に転じており、ここが少し謎です(P1)。17/3期は少し中国の景気が悪かった(か?)程度ですかね。。半導体自体がボラティリティが高いということで括ってしまってもいいのですが少し気になりました。
BS:
運転資本がかなり重い印象です。ざっくりですが、営業債権+在庫-営業債務で10億円くらいあるような気がします。営業債権も大きいですが、在庫の原材料が多額な気がします。あまり数値で他社比較などで検証したわけではないですが、結構重い気がしました。取引先が大手が多いので二次・三次的な位置づけの悲しい性・供給体制をしっかり確保しないといけないのかもしれませんが。自社工場を有している関係で有形固定資産も重いのでしんどい印象です。売掛金が在庫以上にあるのでファクタリングをすればいいとも思ったのですが、そこまではってことですかね。
負債の側では借入は7.5億円程度と大きいですが、有形固定資産と見合っているので設備資金と言えなくもないですし、運転資本が重いのでそれ見合いとも言えますので色はないですが、問題という印象はないです。退職給付引当金が7.3億円と負債全体の25%くらい占めているように見えますが、そのようなものが一般でしょうか。昔ながらの企業なので重いのか、少し不明です。ランレートでこの水準であればかなり充実の退職金制度のような気がします。
PL:
Gross marginが20%強と結構厳しい水準です。自前工場で製造コストも負担してかつ研究開発も自社で行うとなると利益率が劇的に向上するかというと結構しんどい印象です。といっても減価償却費が80百万円に対して労務費が200百万円程度なので工場が自動化しているわけでもなさそうです。というのも修繕費が90百万程度のようなので、古い設備(20-30年など)をだましだまし使っているのではないかなどと想像します。
販管費の研究開発費も、減価償却も少し多いくらいの水準のようなのでいろいろ物入りな状態のように見えます。
<所感>
半導体や自動車は少し知識があるので書きやすかったです。
ただ、この会社が劇的に伸びるかというと上記色々書いた要因で難しいのではという印象です。特定顧客で失注すると売上が大幅に落ちるリスクもあったり利益率も良いとは言い難い、色々固定費重いなどがあり、伸びる産業ではありますがマイナス要因は多い気がします。JQスタンダードなので会社自体劇的な成長を期待しているわけではないと思いますが、今後は、工場を拡大して運営というよりも、研究開発がより多くかかる画像関連・技術で頑張るという印象でしょうか。研究開発のかかり具合や商談の獲得状況の進捗がキーになってくると思います。
株価がどうこうといった話はあまり関心が無いので、他のサイトで見て貰えたらと思います。以上。
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