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発達障害を職場に伝えることについて ~ ADHDの部下の話

発達障害を持っている場合、会社に伝えるべきか悩んでいる方も多いかと思います。

私は外資系企業で働くワーママですが、過去にADHDを持つ部下がいた経験があります。彼女は会社にそのことを開示しましたが、いくつかの理由から退職せざるを得なくなってしまいました。

私自身、彼女の退職を考えると、どうすれば上手くいったのかと考えさせられます。もし同じような状況におられる方がいらっしゃれば、一つの事例して参考にしていただければと思います。

発達障害を持つ方が、上司や同僚にそのことを伝えるべきかどうか迷っている場合、特にチームワークが求められるオフィスワークで出世を目指すうえでのポイントについて考えてみましょう。

発達障害は会社に伝えるべき?

これから働く会社の上司や同僚に、自分が発達障害を持っていることをあらかじめ伝えておくべきでしょうか?

伝える義務はなく、本人の自由です。
しかし、その決断は、今後その組織でどのように見られるかに大きく影響するので、伝える前によく検討した方が良いでしょう。

自分のADHD診断をオープンにしていた部下

私の経験談です。あるとき私のところに新卒の部下が配属されました。第一印象は、性格が明るく素直。学歴も高く真面目そうでした。そして、早く出世したいという野心にあふれていました。

しかし、働き始めて1か月目から、微妙な遅刻や頼んでおいたタスクが進んでないなどの問題が出てきました。

「まあ、新卒だし、こちらが指摘する前に謝ってくるし、そのうち成長するかな」と様子を見ていました。でも、内心は「なんでこんなに真面目そうなのに遅刻を繰り返すんだろう」と、扱い方に戸惑っていました。

そんなある日、彼女は自分がADHDと診断されていることを私に伝えてくれました。さらに、「秘密にしているわけではなく、むしろみんなに知ってほしいので、ほかのメンバーや上の人に伝えてもらってもOKです」とのこと。実際に彼女は同僚や先輩にもカジュアルに伝えはじめました。

これまでの彼女の行動に納得がいった一方で、会社の人たちに発達障害であることを笑顔で伝えている彼女をみて、なんとなく気がかりでした。

発達障害を伝えるデメリット

私の考えでは、これから働く会社でポジションを上げていきたいのであれば、発達障害があることを伝えることは不利に働きます。そこには3つのデメリットがあると思います。

1. 責任のある仕事を任せてもらいづらくなる

発達障害を伝えることで、ネガティブなバイアスがかかる可能性が否めません。ADHDであれば、物忘れが多い、ミスが多いなど。

上司の立場としては、こうした懸念がある人に、重要な仕事を任せるのはためらわれます。大事な仕事は確実に期日通りに仕上げてくれる人に振りたいからです。

発達障害を伝えることで、責任のある仕事を振られづらくなり、その会社での自分の可能性を狭めてしまうことにつながるのではないでしょうか。

2. 強みよりも弱点の印象がついて損をする

例えばADHDの特性には、高い集中力を発揮する、ほかの人にない発想がある、などの強みもあります。

多様性が大事とあちこちで言われるようになった昨今、発達障害の人の持つ強みが組織に多様性をもたらしてプラスに働くということは、理論的にはあり得そうです。

しかし、現場の感覚では、強みよりも前に弱みが先に目立ってしまいます。私のかつての部下の例では、働き始めた初期から締め切りを忘れる、会議の準備を忘れる、また、人間関係のトラブルなどが起こりました。

こんなときに発達障害というラベリングを自分でしてしまっていると、その弱みが余計に印象づけられてしまいます。発達障害というワードによって、強みでなく弱みの印象をつけてしまう可能性があることに気を付けた方がいいでしょう。

3. 指導を受ける機会を逃す可能性

発達障害があることを上司に伝えると、上司は優しくなると思います。

なぜかというと、上司がその人の能力にキャップをはめて見てしまうからです。「わざとじゃないから仕方ないな、キツく言わないでおこう」「叱ったところで、本人の限界があるから仕方ない」など。キツいフィードバックを控えるかもしれません。

でも、発達障害は社会に適応するのが難しいケースから、工夫すれば適応できるケースまでさまざまです。

もし、工夫によって適応できる可能性があると自分で思う場合は、いったんは発達障害というワードを用いず、周りから率直なフィードバックをもらった方がいいのではないでしょうか。

発達障害を伝えるメリット

私は、すべての発達障害を持つ人にとって、職場にそれを伝えない方がいいと言いたいわけではありません。先に挙げた3つの点は、本人が組織で出世したい、そのためのステップを踏んでいきたいという場合の観点です。

反対に、発達障害を職場の人に伝えるメリットもあります。

まずは、自分の苦手分野と得意分野を知ってもらえれば、より自分に合ったタスクを振ってもらえるでしょう。上司や人事が、配属部署を見直してくれるかもしれません。

得意・苦手に合わせてタスクを交換

ミスが減り、得意分野で成果を出せれば、自信をもって働けます。そして、発達障害の特性を周りの人が理解することによって、仮にミスをしても不真面目だとか失礼だという誤解されて怒られることは減るでしょう。

ほかにも、周りの人たちが心理的にサポートしてくれたり、トレーニングを組んでくれたりするかも知れません。

ストレスを減らして継続的に働くという観点からは、発達障害があることを伝えるメリットも多そうです。

発達障害があることをうまく伝えるには?

私の意見としては、その組織で出世していきたい場合は、発達障害を持っていることを全面的にオープンにするのはやめた方がいいと思います。

でも、上司や同僚に誤解をされたり怒られたりするのが心配だという人もいるでしょう。そんなとき、バイアスを最小限にしながら伝えるにはどうしたらいいでしょうか? 私の考えてみた方法は以下のとおりです。

● 発達障害の診断名は使わず、何が苦手かを伝える
● 苦手分野を改善する手助けがほしいという意思表示をする

発達障害/ADHD/ASDなどのワードを使わず何が苦手かを伝えることで、ネガティブなバイアスを回避しながら、上司や同僚に苦手分野を知ってもらえます。

手助けが欲しいという意思表示をするという点については、私の経験からです。先の部下に対して、私はあまり踏み込んだ指導をしませんでした。本人もミスや遅刻は深く自覚しており、自分で努力して改善します!という姿勢だったためです。

でも、そんなふうに泳がせていた結果、弱点は改善できず、その人は会社を去ることになりました。もしも、もっと私が積極的にトレーニングしていたら結果は違ったのかな、と後悔しました。

「苦手なので教えてください」と言った方が、上司は介入しやすくなり、苦手分野の解決策を探す手伝いができると思います。

以上、発達障害を会社に伝えるべきか迷っている方向けに、私の経験のシェアリングでした。

あくまで、私の体験したひとつのケースですが、似たような状況にある方は参考にしてみてください。

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