還暦すぎて、犬を飼う。【甲斐犬サンボは肉球はなぜカチカチか? 】
家犬の犬たちの肉球はつるつるすべすべふわふわしている。それに比べて甲斐犬サンボの肉球はざらざらごつごつカチカチだ。なにしろ、毎日朝夕、アスファルトやじゃり道や土の上を歩くから。
時には盛大に穴掘りもするため、爪の間に泥が詰まっていることも、草の根っこが挟まっていることもある。もちろん、鼻の頭にも泥がついていたりする。さらに、爪を切ったりすることもない。アスファルトのヤスリで削れているからだ。
「サンちゃん、今日も穴掘ってきたの?」(エルちゃんのお母さん)
「ええ、そうです。それが何か? 今日もがっつり掘りましたぜ、奥さん」(サンボ)
てな会話をしているような態度で、それはちょっと自慢げなのだ。
サンボが常連のドッグランは、アジリティのスクールが隣にあり、そこには外車で都内や近隣の県からレッスンにやってくる犬たちもいる。きれいにカットされた耳をたなびかせ、彼らは帰りにとドッグランに立ち寄ったりする。そして、30分くらい楽しそうに遊んで、帰ってゆく。
で、不思議に思ったことがある。ドッグランのゲートから出て、駐車場へ向い、そこから、なかなか車が出で行かない。どこか一回りして帰るんだろうか?
サンボたち常連は、ドッグランの終わりの時間ギリギリまで遊んで、ゲートを出て車に乗り込むと、あっという間にいなくなる。犬たちも慣れているので、車に乗るのにぐずったりしない。ときどき、サンボはおやつを所望したりするけれど。
ある日、いつものようにドッグラン終了の1時間前に到着するサンボは見た!
なぜ、なかなか車が発車しないのか?
散歩に行っていたわけでもなく、車に乗るのを嫌がったりするわけでもになく。
足をきれいにしていたのだ。
一本ずつ丁寧に拭いているようだった。すでに車は家犬にとって玄関なのかもしれない。
サマーランド近くのドッグランに行った時は、園内に足洗い場があり、お湯が出るシャワーもあった。足洗いグッズなんてのもある。
そういえば、初めてドッグランに行った時も、いっしょに遊んでくれた高貴な佇まいのサルキーがバケツで足を洗われていたっけ。
サンボの場合、そのまま車の後部座席に乗り込む。一応、シートベルトにつけたリードを装着し、何かあった時に飛び出さないようにする。シートにはサンボ用のマットが強いてある。
家に帰るとサンボは外の5メートルリードにつなげられる。駐車場と雑草の生い茂る庭、そしてサンルームからサンボの寝る和室へ行ったり来たりできる仕様だ。和室には、井草マットを敷き、サンルームはクッションシートを張り込んである。でも、ここの出入りはフリー。足を拭いたりしない。唯一、リビングにやってくる時は、4本の足をタオルで拭くことがお約束になっている。汚いからね。とはいえ、サンボの寝室で寝る私は、いつもサンボに寝床を奪われている。これは汚くないのか?
「いいこだねー」「おりこうだねー」と言われながら、いやいや足を拭かれるサンボ。冷たいと「うーー」と唸って抵抗するが、あったかいタオルだとまんざらでもなさそうだ。ついでに背中とお尻と耳裏も拭く。耳裏は喫茶店の親父のように、首を傾けて「あ゛ー」って感じで拭かれている。リビングへ行くための儀式だと認識しているのかもしれない。でも、そこでだけだ。
だから、サンボの肉球は硬くガサガサしているんだな。
ちなみに肉球の役割は、①足の衝撃を和らげるクッション、②温度調節、③ブレーキ、4温度感知だそうだ。ひび割れ、ケガ、アレルギーなどトラブルもあるため、ケアをしてあげる必要もあるらしい。
そうだったのか!? サンボの肉球もときにはケアしてあげなければ、ガチガチがさがさのままになってしまうんだな。そういえば、冬の間、家犬度が高かった時は、肉球もやわらかでスベスベしていたっけ。
「都会に染まっていくわたしを許して」(サンちゃん)
そういえば、私の足裏もかかともガサガサカチカチのような気がする。サンボ散歩のせいで、坂道で踏ん張るため、所々足裏が固くなっている。犬は飼い主に似るのか? 私も同じくケアが必要なのであった。
めざせ! きれいですべすべで弾力のある足裏! まあ、車に乗る時は、そのまんまだろうな。バスや電車は足を拭いては乗らないからね。
梅雨に入る前の束の間の晴れの日。サンボを久しぶりにシャンプーした。
しかし、ラブラドール3匹をつれてドッグランに来られるAさんにきいてみた。
「車に乗る時、足ふいてる?」
「12本も拭けないよ。家に帰ってもちゃっと拭くだけ」
よかった。ちゃっと派もいるんだな。
追記:
その後、同じ地区で20メートルと離れていない家に引っ越す。ここではフェンスで囲って、サンボはガーデンドッグランへベランダから裸足で飛び出し、土足で戻ってくる。それが何を意味するか? 今は考えたくない。