還暦すぎて、犬を飼う。#5 【犬が好き人なのか、それとも、私の犬が好きな人なのか? 】
犬が好きな人は主に二つに分類される。「犬が好きな人」と「私の犬が好きな人」の二つにだ。
甲斐犬サンボ(4歳女子)の暮らすM台の散歩道で出会う人のほとんどは前者だ。「サンちゃんはいい子だねえ」と必ずなでてくれる バンダナ柴犬・サテツのお父さん。デカい茶ラブ(ラドール)が引っ張るのを顧みず「サンちゃん」と手を伸ばしてなでようとする大麦とビーツのお父さん。しゃがみ込んでサンちゃんと同じ高さで声をかけてくれたり、時にはおやつをくれたりするお母さんやお姉さん。だから、サンボもワンコというより、飼い主にすり寄っていくケースが多い。合理的なヤツめ。
では、後者の人はというと、ドッグランで会っても、「私の犬と私」の関係性が濃厚で、二人の世界が築かれている。飼い主とのボール遊びに没頭していて、他の犬とは目を合わさない。たぶん、訓練の一環なのだろう。サンボがちょっかいを出そうものなら、こう言われる。
「うちのMちゃんは、犬とは遊ばないの」
おい、そんな犬にしたのはおまえさんだろ? と言いたくなるのをグッと堪えるサンボの飼い主。
一度、散歩に立ち寄る大きな緑地で、ボール遊びをしているテリア系の犬と飼い主がいたので、「(近くに行っても)大丈夫ですか」と聞いてみたら、「そんなハアハアして来られたら」と断られたことがある。そりゃ、サンボは犬が大好きで挨拶したいから、「ハアハア」しているが、それが何か? 「うちの犬は黒い犬が苦手」(けっこう言われる)とか、言い方があるだろうよ。あきらかに、「私の犬」の事情ではなく、「お宅の犬」の振る舞いにNGを出している。ムカッ。なんとか見返してやりたいことよ、とサンボ(はどうかわからないが)の飼い主は思う。
さて、犬の競技に、アジリティというものがある。犬と飼い主がペアを組んで、ハードルやトンネル、シーソーなど障害物を制限時間内クリアしてゴールするという1978年にイギリスで生まれたドッグスポーツ。アジリティを楽しむには、まず、前段階としてしつけができていないといけない。一緒に歩く、止まる、待つ、来い、他の犬に気を取られない。サンボにもできることはあるが、どれも主体性を伴っている。つまり、「犬が行きたいから」、ではなく、飼い主の「指示」どおりにできるかどうかが問われるのだ。
常々思っていたのだが、犬の指示はプログラミングに似ているような気がする。つまり、行動をひとつひとつ分解して指示することが必要らしい。しつけの主なコマンドは以下の8つ。サンボが今のところできるのが太字の5つ。
●「まて」stay ※ごはんを「まて」はできるが、散歩中に他の犬を追いかけたり、郵便屋さんに吠えたりするところまでは使えていない。ドッグランで練習していたら、近くにいた犬も反応して固まっていた。
●「来い」come ※ごほうびがないとなかなか動かない。とくに、散歩の帰り道では、自ら「まて」を課していて、「来い」+「おやつ」のセットを期待する節があり、一向に帰れない現象が起こる。根比べに負けが続いている。ドッグランでこの練習をしようとすると、おやつ狙いの賢い犬が、一目散に走ってくる。
●「よし」 ok, go
●「 ダメ」no ※低い声で言うと「効き目」がある。これはマスターさせたいが、つい「名前」+「ダメ」になりがち。「名前」も「ダメ」な意味になってしまう。サンボは「いけない」がコマンド。M台で「いけない」を連発しているのは、私ぐらいかもしれない。😭
●「おすわり」sit
●「お手」hand 「おかわり」change
●「ふせ」down ※「おすわり」からスライドさせて覚えることができた
●「ハウス」house ※冬は家犬になっていて、居場所のクッションはあるが、ケージがないので、使えていない。でも、安心感も持たせるためにも必要かも。
というわけで、最低限、サンちゃんに覚えてもらうことがまだまだある。というか、サンちゃんが混乱しないように、「指示」を明確に、感情に左右されず、統一性を持って出す必要がある。プログラミングだったら、動かないからね。
なぜ、しつけが必要かと言うと、いつも行くドッグランの隣にアジリティのスクールがあるから。訓練の終わったワンコたちが、帰りがけにドッグランに立ち寄る。すると、新しいもの好きのサンボは、待ってましたとばかり臭いを嗅ぎに行く。それも、グイグイと。しかも、自分より若干小ぶりなワンコを狙う。かなり付け回した挙句、女子のくせにマウントしだす。さらに、ワンコプロレスを仕掛ける。そのあたりで、相手のワンコが吠えてくれるとサンボも諦めるのだが、逃げ惑うと追っかけてしまう。案の定、飼い主にも犬にも敬遠され、「ノウ! 」と言われたりしながら、「意味わかんねー」としつこい。あまりにしつこいと、リードにつないで、興奮がおさまるのを待つしかない。って、リードをつけて引っ張ると、余計に固執してしまう。目に余ると、退場することになる。まあ、言うことをきかない、しつけができていないと言えばそれまでだ。ここで、「まて」と「だめ」がピタッとできたりすると、かっこいいのに。まだまだ、発展途上の我々である。でも、「しつけ」って上から目線だよな。これ、「ルール」だね。飼い主と犬との間で結ばれる「ルール」。
でも、「まて」「来い」「いけない」ができないと、命取りにもなるから、ここはサンボにとっても、生きて行く上で重要なコマンドなのだ。
まずは遠慮がちにドッグランに入り、最初の挨拶は、お尻の匂いを嗅ぎっこ。相手の情報を得るための重要な儀式。できれば性別、年齢、体重、名前をきいてみる。パピーだったら、遊びたがるだろうし、同じくらいの体重であれば、ワンプロを仕掛けても、吹っ飛んだりしない。体が小さくても脚が速い、もしくは立ち向かって吠える犬であれば、安心度は高まる。
大きな犬でも、うまーく、慣れさせてくれて、ちょっとでも追っかけこができたときのサンボの顔は笑ってる。目と目の間が広くなって「遊んでもらたー」って。好みもはっきりしていて、白ラブと黒ラブは大好き。
けっこう飼い主たちが気を配っていることをサンちゃんは知らない。ボールやディスクをみんなが均等に取りに行けるように投げる位置を調整していることを。呑気なもんだね。
で、私は、他の犬と出会った時、しゃがんで撫でてあげることができない。なぜなら、サンちゃんがヤキモチを焼く。もしくは、おやつをあげると勘違いして、威嚇するからだ。なんて、心が狭いんだ!!! ゆえに私は「犬が好きな人」に見えないと思われる。
サンボは犬が好き。よその家の犬でも撫でてくれる人が好き。おやつをくれる人が好き。そんなもんだよね。