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還暦すぎて、犬を飼う。 #2 【543キロ8時間。甲斐犬サンボの移送大作戦】

家が決まった。次はサンボの移動と引っ越しだ。
夏の暑い時期に和歌山から東京H市まで、543キロもの距離を移動することになる。こりゃ大変だ。しかし、善は急げだ。移動の方法も限られていた。なにしろ、コロナ禍である。

A.娘が自分の車で移動する
B. 動物の移動サービスに依頼する
C.知り合いに行ってもらって娘もサンボも一緒に移動する

A案は、山道はへいちゃらな娘だが、高速道路を軽自動車で、しかもサンボと一緒走るのは、自信がなかった。誰か一緒に乗ってサンボを見る必要がある。車に乗ると、犬友の侘助に会えたり母ちゃん父ちゃんすることがわかっているから、サンボは車に慣れていた。慣れすぎていて、窓を自分で開けてしまうこともあった。

動物の移送サービスは、同乗できる場合と単独と二つの方法があった。知らない人とサンボが8時間揺られてくるの無理だ。安定剤か何かが投与されるのかもしれない。飛行機を使うと、時短にはなるが、空港まで送り迎えに行くということになり、料金も手間もかかる。.......ということは、高速の運転が慣れていて、大型の車を持っている人に行ってもらって、娘もサンボも一緒に乗ってくるのが、最善の策ではなかろうか。そして、どの案もかかる費用は、だいたい10万。

兄・ひろし。ダイビングショップを静岡でやっている兄は、車の運転も高速も、お客さんを運ぶのも慣れている。車も大きい。サンボのカーゴが乗る。早速、夏の予定をすり合わせた。

もちろん、こんな冒険は逃すわけにはいかないので、私も電車で前乗りすることに。引っ越し前日には、「フレッシュツナの街」でマグロ三昧。温泉にも入った。

8月19日。大移動の日。この日は雨で、線状降水帯と呼ばれる雨雲が日本列島を北上していた。兄・ひろしと娘とサンボが泊まっている友ともだちの家まで向かう。ナビの通り走っていると、何か黒いものが箱乗りをしている車が見えた。

あの箱乗りしている物体はなに?

宇宙人か?  いや、あれは……サンボだ。そういえば、サンボは「ウイーン」と窓を自分で開けていた。あぶねー。

ひろしのワゴン車にカートを設置して格納。不安で顔が細くなってる?

娘が地元の友人との別れに忙しい中、う○ことお◯っこをさせるために和歌山ラスト散歩に連れ出す。いろんな非常事態を察してか、サンボはお行儀良く業務をこなし、いざ出発!!!  

ノーリード、ノー首輪はもうできないよ

雨はますます激しくなり、途中のスーパーで小腹を満たすものを買って、車に乗り込むと、後部座席に設置されたカートで、サンボは大人しく寝ている。これは何かただならぬことが起きているんだな、そう察知しているかのようだった。

H市までは約8時間。第一目標は紀伊半島縦断。とにかく名古屋あたりまで駒を進めることにする。それにしても、線状降水帯は半端なく、ひろしでさえもビビっている。前の車すら見えないのだ。

新宮~熊野までは海岸線、尾鷲まで内陸を通り、鈴鹿~四日市までも山間の高速を進む。名古屋を抜けて、岡崎SA、浜松SAにはドッグランがあるらしい。ここまでノンストップで進んだ。すでに4時間は過ぎている。私たちはお腹が空き、サンボはおしっこタイムが必要だ。ところが、間違えて、もうどこだったか忘れたが、ドッグランのないSAで休憩。雨も上がり、夏の日差しがクリーンなSAに照りつける。とにかく、ゴミ一つ落ちていない。そして、清掃用具を持ったおばさまたちが、待ち構えている。ここはディズニーランドか?

とりあえず、サンボをダブルリードにして外に連れ出す。FBでよく見かける「迷子犬」の拡散告知は、SAとか観光地の駐車場で大きな音や人にびっくりして逃げ出す、がとても多いから。サンボは待ってましたとばかりに飛び出し、まずはお○っこ。そして、う○こ○ポイントを探し始めた。いやあ、我慢してたんだね。なにしろ、外トイレ派はこういう時に困る。公園の植え込みを見つけるとあわてて排泄作業を始めた。清掃員の方が遠くから見ている。あ、ちゃんとゴミ袋に入れますから。心配しないでください。そして、水をゴクゴク飲んで、辺りをクンクンている。

オイラ、どこに連れて行かれるんだ?

サンボ散歩を娘と交代で行いつつ、我々もお昼を各自摂る。今のSAはすごいね。イオンのフードコート並みだね。

ちなみに、人間用のトイレも宇宙的できれいだった。

さて、残るは富士山を眺めつつの後半戦だ。午前中の大雨がウソのように夕焼けが広がっていく。静岡を過ぎれば、中央高速を通って盆暮にH市にやってくるひろしにとっては馴染みの道になる。サンボも再び眠り姫だ。あと30分くらいでゴールの地点で、なんと、車線変更が遅すぎると切符を切られるひろし。なんてこったい。

都会にそまっていくオイラを許して

午後6時ごろ。ついにサンボハウスに到着。やはり、娘が一緒だったのがよかったのかもしれない。車にも慣れていたので、酔うこともなかった。犬小屋代わりのカートもよかったのかもしれない。なにしろ自分の匂いが染みているから。そして、知り合いというより、家族だったので、気兼ねすることもなく。私たちが緊張すると、同調してしまいそうだからね。なぜか、ひろしにも唸ることなく、冷静だった。騒ぐこともなく車中を過ごせた。これはもう120点だと思う。

庭につなぐと、クン活を始めるサンボ。ここが三番目のうちになる。先住動物のカメズにも挨拶をする。

微妙な距離感

暑さが残る夏の夜。遅い時間まで庭にいた。

暗くなっても庭でくつろぐ
夜は玄関でぐったり
朝、様子を伺う。散歩はどうなるんだ?

無事、8時間の移送を経て、サンボの引越しが完了。ここから新しい街での生活が始まる。2021年8月18日。いよいよ、最初のこの町での朝散歩が待っている。