還暦すぎて、犬を飼う。 #8 【甲斐犬・サンボの散歩道①ルートとコース】
サンボは甲斐犬ミックス(4歳女子)。中型犬の部類に入る。しかも、ルーツは狩猟犬。山に入り、獲物を探したり、仕留めた獲物を見つけたり。山歩きは得意だ。そのせいか、マヌケの小足だ。鹿とか羊蹄類に似ているようにも思うし、後ろ姿は四足歩行ロボットに似ている。いや、四足歩行ロボットが似ているのか?
その① ルートとコース
サンボの散歩は朝夕2回、たいてい1時間強、練り歩く。ルートはいつも決まっているわけではない。ここM台に引っ越してきた当初は、家の前の道を右に行くのか左に行くのかで、コースがだいたい決まっていた。左に行けばM台の北側の公園を巡る軽く登る2丁目コース。右へ行けば下って再び上がる1丁目コース。移り住んで4年目になるこの頃は1丁目も2丁目も回るフルコースとなってきた。所要時間は1時間半。うーむ。1日うち3時間をサンボの散歩に費やす計算になる。これには、夏時間と冬時間がある。
最初に向かう公園や緑地は、うん●ポイントとして急ぎ足で向かう。そして、この第一ポイントで用を足してしまえば、あとは楽勝だ。これに躓くと、うん●ポイントを探して彷徨うことになる。
サンちゃんが和歌山からやってきた当初、スマホのアプリでログを取っていた。どのコースを行くと、誰(犬ですが)に会うのか知りたかったからだ。とにかく、M台には飼い犬がたくさんいる。大好きな犬もいれば、苦手な犬もいる。どこを何時何分頃通ればいいのかわかるといいなあ、と思っていた。
時間帯によって、遭遇する犬が違った。つまりそれは、飼い主の都合、もしくは犬の体内時間に合わせて散歩が組まれているからだろう。比較的年齢層の高い男性や大型犬は朝早く、女性や高齢の方、小型犬は朝と昼の間、お勤めに行く人は6時頃、と言った具合。しかし、サンボの散歩がルーティンではないように、他の犬たちの時間帯もルートもいろいろだった。彼らは同じ道をいつも通るわけではない。とにかく、いろんなところで会う。えっ、こんな獣道におチビちゃんのテリアが?! と思うことしばしばだ。
サンボの場合、1時間半の内訳はだいたいこんな感じだ。
・公園→公園→緑地→公園
・緑地→けもの道→公園→緑地
・公園→階段→隣町→階段
・公園→階段→けもの道→公園
ポイントは6カ所の公園、3カ所の緑地、3カ所のけもの道。たいてい4ポイントをめぐると、ほぼタスクは達成する。このルートはいつも一定ではないが、前日、アライグマを追い込んだ、雛鳥を見つけた、というセンセーショナルな出来事があったりすると、次の日も同じところに出かけて、現場確認をすることがある。つまり、昨日あったことを覚えているのだ。
犬の短期記憶は約10秒と言われているから、やってはいけないことをした場合すぐに叱らなければてけないし、逆によくできた時はすぐにほめてご褒美をあげなければいけないと、ネットや本で言われている。これを繰り返していくと、長期記憶として定着するという。
では、「アライグマを追い込んだ」はどんな記憶かというと、どうやらエピソード記憶らしい。たった一回でも衝撃的なことに出会うと、記憶に深く刻まれる。これは「楽しい」だけに適用されるわけではなく、「怖い・嫌だ」にも適用される。なるほど。サンちゃんの病院嫌いはエピソード記憶に由来するものなんだな。
で、たいてい、昨日行った道、あるいは、朝散歩で行った道はもう一度行ってみたがる。臭いの情報を集めて、誰が通ったのか確認しているのか、気になるところは必ず再訪する。何日間か同じ道を通ると、「そういえば、あのあたりにいってなかったな」とばかりに、違うルートを確認しに行く。
サンボの場合、車で近くの公園に行ったりすることもあるが、そうなると、いつもとは違う情報がありすぎて、前のめりになる傾向がある。落ち着きがなくなり、ひっぱりMAX。頻繁にマーキングをし、急いでウ●コをする。会ったことのない犬にハアハアし、楽しんでいるのかどうかはわからない。刺激はあるが......。
その②ドッグランができた!
夕方は晴れていればここにドッグランが入る。待望のドッグラン。オープンしたのは2年前の夏。それまではアジリティのスクール(けっこう有名)がポツンと畑の中にあっただけだった。アジリティをやるわけでもなく、毎日のように見学しに出かけては、「ドッグランがあるといいですよね」と言い続けた。それが功を奏したわけでもないが、できたのだ。ドッグランが。
・緑地→獣道→緑地→ドッグラン ※帰りはお迎えの車
臭い嗅ぎもできて、ワンプロもできて、他の飼い主さんにちやほやされて、サンボにとってのフルコース。ドッグランのお休み月曜日もだいたい、ドッグランに行ってみて、やっていないのを確認して帰ることになる。
サンボにとって、ドッグランはワンプロ友だちとリードなして心ゆくまで遊べることでポイントは高い。全速力で走ることもできる。初めての犬との出会いもある。ま、飼い主にとっては公園デビューに近い。最初の頃は、コーフンしすぎてマウントしまくりのお行儀の悪いサンボだったが、群れで遊ぶコツを覚えたのか、今は特定の仲の良い怒らない犬にしかやらない。いじめっこやいじめられっこができたり、ドッグラン崩壊するようなことにはならなかった。なにせ、無差別級なので、ベルガーもいればチワワも同じグラウンドで遊んでいる。
犬達は賢い。程よい距離感をもって走ったり、一度ガウガウしたりすると、近づかないようにしたり、自然とできるのだ。
ヒートアップしたら、水をかける。たまに、ちょっと齧られたりもするが今まで大事には至っていない。
ただ、芝生が生え変わる3〜4月は、ドッグランが閉鎖になり、サンボは路頭に迷う。この期間は、M台をくまなく歩くことになる。サンボの体重は増えて、飼い主の膝の具合は悪くなる。なにせ、アップダウンが激しい土地柄だから。サンボが一緒でなければ、絶対に上らない坂道を行く。
その3 公園には敵多し
公園は他の犬たちもやってきているので、存在確認が半端ない。隅から隅まで、念入りに匂いを嗅ぎ、マーキングする。時には植え込みでうん●もする。だから、犬の先客であれば適度な距離感を保つか、知り合いの犬であれば挨拶をするが、人間の子どもがいたりすると踵を返してUターンする。そして、最初のうん●ポイントを見失う。
サンボのルート回避する原因は、
【子どもたち】急に走り出したり奇声を上げるから。びっくりするじゃないか。
【工事のトラックや音】特にカンカンしたりダダダダっていう音には弱い。
【ランニングしている人】箱根駅伝に出る人たちの合宿所が近くにある。
【自分より大きな犬のいる家】塀から「美女と野獣」の野獣のような顔(たぶんジャーマンシェパード)が飛び出したところは、二度と通らない。
【いつもと違った風景】植木屋さんの車が止まっていたり、工事中だったり。意外と保守派。
飼い主の回避したいポイントとルート
【夏のけもの道】蛇に遭遇する恐れあり。実際、2度見かけた。
【猫のいる家】匂いでわかるらしく執拗に匂いを嗅ぎに行く。姿が見えると怖いらしく、距離を縮めようとはしない。
【鳩やスズメなど鳥の多くいるところ】急に引っ張られる可能性あり。肩が抜けるかと思う。
【ガードレールのない歩道】引っ張りが強く、郵便局やクロネコヤマトの電気自動車は敵対しているため、吠えかかる。「イケナイ!!」と大声で叱ることになる。
サンボには、通り過ぎたりすれ違った人の残り香を嗅ぐというヘンな習癖もある。虚空をくんくん嗅いでみるのだ。物体自体というより、「臭い」の興味の方が優っているというか。そのために、コースを逸脱することもままある。匂いに釣られて、行く方向を一瞬見失い、そのまま、途方に暮れることもある。
最初の一年目、いろんな人に散歩コースを教えてもらった。階段をくだって、中学や小学校の方へ行くと、案外遊歩道があって、うん●ポイントがあるとか。今まで行ったことのなかったけもの道も秋になると葉が落ちて見通しがよくなり、思わぬ場所に出るとか。行ったことのない場所、行ったことのない道を先輩の犬散歩の人たちに教わった。今度はサンちゃんの教える番だ。
興味はつきない、サンボの散歩道。
私にとっては、過度のトレーニングといったところか。
正直、きついっす。