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還暦すぎて、犬を飼う。 #9【甲斐犬サンボの散歩道②ケモノたち】

去年の夏も暑かったが、2024年の夏も暑かった。

暑いか豪雨か。どっちも嫌だと、甲斐犬サンボ (4歳女子) は言っている。たぶん。飼い主だって嫌だ。汗だくかずぶ濡れか。しかも雨上がりには蚊がしつこくまとわりつく。長ズボンに靴下、トレッキングシューズ。さすがに長袖は暑いので、半袖で虫除けスプレーを腕と首にかけ、首は長めの手拭いを巻く。しかし、触るとごろごろするくらい蚊に刺されている。ブヨもいる。とくに夏の終わりに刺されると、強力にかゆかったりする。幸い、蜂には刺されていない。

M台は自然豊かな住宅地。そこここに放置された雑木林、緑地、なんだかよくわからないケモノ道が存在する。この間まで住んでいた家には15センチほどのヒキガエル(ツチガエル?)が物置の下に冬眠していて、初夏になると姿を現し、サンボを困惑させた。ヒキガエルだった場合、毒性のある汁を出すらしい。慌てて虫取り網で捕獲、家から50メートルくらいの緑地へ運んだ。

ところが…….帰巣本能、いや、縄張り意識があったのだ、奴には。3日もするとまた現れた。今度は100メートルくら離れたところに置いてきた。しかし、また、戻ってきた。ふりむけば、カエル。しつこい。とって言っても、先住はカエルなのに。でも、もしも、サンボが咥えて事件になってしまっては、サンボもカエルも気の毒だろう。さらに200メートルくらい離れたところへ置いてきた。そろそろ秋の気配も迫ってきていた。

ある日、そこではない場所でひからびかけたカエルを発見する。奴ではないことを祈った。

●夏の散歩でサンボのポイントが高いのは、蝉 

ちょっと弱って飛び立つ寸前の蝉を「パクッ」と咥えるのが、狩猟本能を刺激されるらしく、サンボの夏の楽しみだ。よく木の茂った公園に立ち寄る。下をふんふん言いながらう●こ場所でも探しているのかと思いきや、蝉が弱って落っこちていないか探しているのだ。お亡くなりになった蝉には用はなく、あくまでも生きている蝉を探している。危険を察知した蝉が最後の力を振り絞って飛び立とうとするところをパクっ。ブブブブとサンボの口から音がする。

取られないように何事もなかったように歩く。見えてるよ、口元に、蝉が

ある日、公園の手すりに3センチくらいの白い物体が貼りついていた。何かなと思って突いたら、羽化したばかり蝉。モニョって動いた途端、サンボが「パク」と食べてしまった。申し訳ないことをした。7年かけてやっとでできたのに。羽ばくことも、鳴くこともしないまま、サンボの胃の中にはいってしまうなんて。この世はなんて無情なのだ、とサンボは1ミリも思っちゃいないだろう。目の前のものが動く、危険な匂いはしない、反射的に咥える。ただそれだけ。

●お腹を壊して半日絶食 

一日に3匹も食べたときは、さすがにお腹を壊した。かためのタンパク質だから、消化するのが大変だったのだろう。帰り道の緑地を歩いていると、キュルキュル音がした。まるで、カセットテープを巻き戻す時のような懐かしい音。どこから聞こえてくるのかと思ったら、サンボのお腹だった。心なしか足もよろついている。家までの30メートルをようやく歩くと、そのまま自分のベッドに横なり、半日飲まず食わずだった。検索してみると、どうやら胃腸関係らしい。脱水にならないように、なんとか水をなめさせて様子見。

●動物病院に行く羽目になる 

夕方、動物病院につれていく頃には、ヨーグルトを食べられるくらいになっていたが、キュルキュルは初めてだったので、強行する。

「蝉、消化できなかったんですかね」

と、とりあえず水分補給の点滴をして、ガスター10をもらって帰ってきた。
だからといって、その後、セミを食べないかというと、そうではなかった。「お腹が痛い←セミを食べたから」とは認識されていなかったのだろう。すぐに苦いとかということでなければ、結びついた記憶にはならないらしい。

●必ず毎年遭遇する蛇たち 

色はマムシだが、小さいのでマムシに擬態している青大将だと思われる。大雨の後、溺れたのかお亡くなりになっていた。

毎年、2〜3匹にはお目にかかる。サンボはトカゲも大好物。食べたりはしないが、いたぶる。トカゲは素早いからまだいいのだが、ヤモリだったりすると手に吸盤がついていて動きもすこぶるノロい。お願いだから、見つからんでくれ、と願う。

夜になると現れるヤモリさん

最初に発見する手立ては、たぶん匂い。トカゲの場合はよく塀の間や石の隙間をくんくんしている。

トカゲさん、いませんか?  水捌けの穴に鼻を突っ込むサンボ。
収穫なし

蛇も同じく爬虫類的匂いがするのだと思われる。サンボの背丈では見えない柵の向こうをさかんに覗こうとしていて、目線を辿っていくと、蛇がいた。ちょっと大きかった。

夕方もここにいた。死んでる?  次の日はいなかった。何か消化中だった?

一度なんかは、大きな蛇の脱皮後にさかんに吠えたこともある。いや、抜け殻ですけど。家の庭でもさかんに臭いを嗅いでいると思ったら小さな脱皮の切れ端があった。とかげ?  いや、いるのか?  蛇。

親指くらいの太さはある。トカゲだとしたら結構大きい。やはり蛇?  


今年は生きていた蛇は2匹、亡くなった蛇も4匹に遭遇。1メートルくらいのものもいれば、30センチくらいのものもいた。道を渡り損ねて交通事故に遭った蛇もいた。蛇をどこどこで見かけた情報は犬散歩仲間で共有される。

やや?  あれはなんだ?  これは一部。もう一塊あった
けっこう大きな脱皮痕。ってことは、この草むらにいたってことか?

湿地や湧水が流れていて、カエルがいれば蛇もいる。捕食の関係にあるから。

●ラスカルに遭遇する

一年前、M台を下った両側に畑のある散歩道で、サンボが急にリードを目一杯引っ張って、吠え出した。すると、体調50センチくらいのケモノが斜面を駆け上り、上からこちらの様子を伺っていた。リードがついているから、絶対に追いかけてこないと踏んだのだろう。

猫か?  草で隠れているが、顔に縦線が入っているような…
引きの図。こんな感じで作物が植えられている

今年もまた、同じ道を散歩していると、道路の脇の灌木の下を慌ただしく嗅いだかと思うと、サンボが急に吠え出した。なに? ネコ? 鳩?  すると、吠えられたケモノは灌木を登り、上から顔を出したのだ。

ラ・ラ・ラスカル? 

黄色の丸の中に…よく見ると…ラスカルが!!!

今度もここまでは追ってこないと踏んで、上から見下ろしている。耳をピンとそばだて向きをクルクル変えて。これは目のあたりの配色からアライグマに間違いない。ここらでは、ハクビシンも、タヌキも目撃情報があるので、いつか遭遇することになる。可愛いんだけれど、外来種で気性も荒く、キケンな病原体を持っているため、とくに糞尿をフンフンさせないようにしなければいけない。

サンボにしてみれば、興奮度も高くポイントも高いが、飼い主としては、キケンはともかく、肩がぬけるかと思われる引っ張り具合だった。

とにかく、よっこらしょと引き離した。翌日、再び、現場に行きたがった。もう、ラスカルはいなかった。たぶん、畑の道具をしまったりする小屋があったりするので、そんなところにいるのかもしれない。そして、去年、謎のケモノを見たところとほぼ30メートルくらいしか離れていなかったので、あれはラスカルだったのかもしれない。

●カラスは天敵か?

カラスはサンボにとっては敵になりかねない。下手に追いかけでもしたら、攻撃される。奴らは頭がいい。そして、公園の木に巣を作ったりしているから、気が立っていることもある。もっとも危険だと思われるのは、奴らの食べ残しが落ちていること。生ゴミの日の夕方の散歩道は、とくに危険だ。ゴミを漁って緑地で戦利品を分けているのを時々見かける。そして…..。
彼らが食べられなかったものをサンボが拾うことがあるのだ。鮭の皮、パンらしきもの、エビのお頭……。一番困るのは、鶏の骨。昨今では、鶏の骨は縦に裂けるので犬に与えてはいけないものの筆頭だ。なのに、落ちてる。カラスが食べられなかった鶏の骨が。大きなものは取り上げられるが、5センチ以内だと、下手に取り上げようとする飲み込む危険がある。仕方なく噛み砕くのを待つ。そんな日は要注意だ。とにかく、フンフン匂いを嗅ぎ出したら要注意。まったく気が抜けない。

●いもむしはそこここにいる

冬を蛹で越すために、9月はたくさんいもむしを見つけた。サンボも興味津々。突いたり齧ったりしたら、どろっとしたものが出でくるかも知れぬ。それは避けたい。白っぽいのや黒っぽいのやら。毛虫もいる。

セスジスズメという蛾の幼虫
グーグル検索でうまくいかなかず不明

●スズメバチの巣があるよ

サンボは真っ黒だから、蜂に狙われやすいと言われている。
4年間、蜂に刺されずに済んだ。かつて、和歌山にいた時は、ニホンミツバチと庭で暮らしていて、ニホンミツバチが午後3時のトイレタイムで出でくると、追っかけていた。

ところが、ラスカルの道を進んでいくと空き家がある。そこの前は何度も通っている。通りかがりの自転車に乗ったおじいさんが、空き家の前で停まってこちらを見ている。何か?  

「毎年、ここで巣作ってんだよ、スズメバチ」

空き家の庭に放置された木に立派なスズメバチの巣があるではないか。しかも黒々とした2〜3匹が出入りしている。

一度なんかは、スズメバチがサンボを偵察に出できていた

そこはドッグランにも近いので、すぐに情報共有しておいた。頭上要注意!!

●先住民のカメズたち

サンボの先輩はカメズ。ミシシッピアカミミガメとクサガメのコンビ。彼らはかれこれもう20年近く同居している。最初はサンボも興味をもっていたが、「いつもそこにいる」ので今まで事件が起こることもなく、過ごしている。カメも爬虫類なので、トカゲや蛇と同類だ。

先住のカメズたちの甲羅干し
和歌山で過ごした日々。兄弟たちと。サンボはどれ?

そんなわけで、住宅地も雑木林が近いと、ケモノたちは共生している。いや、人間も犬もみなそうだ。雨上がりの秋の入り口。まだ草刈りがされていない緑地をサンボが分入って行く。引っ張りが強くなる。

何かいるのか?
何か食べられそうなものが落ちているのか?
どちらも避けたい。

また来年。よく寝るんだよ

ふくよかなヒキガエルだった。
もうすぐ、冬眠だね。

●追記
10月下旬、なんと隣の家との境目にあるフェンスにラスカルが現れた。夜の11時ごろ、激しく吠えるサンボ。それは、人に吠えるのとは違った追い立てるような吠え方で、何事かと思ったら…….

いた。シマシマの尻尾が。

大きな尻をモコモコさせながら、フェンスを渡って隣の隣の家の庭木に登った。サンボはフェンスを飛び越えんばかりに飛び上がって吠えた。姿が見えなくなった後も、通った後を入念に嗅いで、その夜は野営した。次の日も野営。ハッカの臭いを嫌うというので、フェンスの高い位置にハッカ水を塗りつけてみた。

このフェンスです。下を通った方が速いはずだが、頑なにフェンスを渡った
このところの夜勤のため昼間に寝るサンボ

散歩道でも同じ匂いのするところがあるのか、ノーズワークに忙しい秋だった。