検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? (岩波ブックレット )
歴史的史実からみて、ナチスは評価できる点はあるか?
ナチスの良いこともしたのか?
という流布言説は、国内外で定期的に議論の的になり続けている。経済回復させた、高速アウトバーンを建設した、失業率を低下させた、社会福祉政策を行った。――業績とされがちな事象をとりあげ、ナチズム研究の蓄積を基盤に事実性や文脈を徹底検証。歴史修正主義が影響力を持つなか、多角的な視点で概観し史実を検証考察することの重要性を訴える。本著はナチスが良いこともしたと主張している人への学術的な反論で論証である。現実的史実を論考分析するには、客観的事実、論理的思考と解釈、意見の工程が要諦との論拠。客観的史実を踏まえた上で、氾濫する情報に対して、事実から意見を簡単に主張する人が多すぎる気がする。自戒も込めてとても参考になった、ナチスの良いことと見える政策について、専門家やナチス研究者視座で検証する。おそらくは、良いこともしたと主張する人たちは、本書に対しても確実に否定的な見解を述べるだろう。大事なことは、正しそうな意見に対して、背景を考察したうえで発言判断すること。
はじめに
第一章 ナチズムとは?
第二章 ヒトラーはいかにして権力を握ったのか?
第三章 ドイツ人は熱狂的にナチ体制を支持していたのか?
第四章 経済回復はナチスのおかげ?
第五章 ナチスは労働者の味方だったのか?
第六章 手厚い家族支援?
第七章 先進的な環境保護政策?
第八章 健康帝国ナチス?