家守綺譚
梨木香歩「家守綺譚」
今から約百年前、文明開化が進む中、古の自然が共存する時代、しがない物書きの私・綿貫征四郎が、湖でボートに乗り、亡くなった友・高堂の空き家に住まうこととなります。
そして、時折現れる高堂、迷い犬・ゴロー、征四郎に懸想する庭のサルスベリ、犬好きのおかみさん、和尚、和尚に化けたタヌキ、河童など、現実と幻想が錯綜し、四季折々の日々を過ごす征四郎。
文明開化が進んでも、各々思いを抱く幻想・自然が、征四郎を時にはいっぱい食わしたりするも、彼の心を癒していきます。
今はコロナの蔓延で心が痛みます。
そんな自然が破壊されている現代、遥か昔の自然との交流に、私自身も心癒された作品でした。
_皆に安堵と優しさの波が拡がってゆく(中略)空を見上げる。すると空は月長石でできた巨大なレンズのよう、まるでこれは水の面、此処は水底の国のようではないか_