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竹テントづくりを通して考えた、生態系のこと

こんにちは。しまなみ映画祭実行委員会です。

今回から3回に分けて、竹テントづくりのワークショップの様子と、それを通して考えたことを紹介しようと思います。

10年以上も使える「竹テント」

Photo by @__fromapril

竹テントのつくり方を教えてくれたのは、NPO法人トージバの神澤さん。開催会場のひとつである「大三島」の運営を担ってくれている「しまなみ地球の楽校」のメンバーが、過去に神澤さんの竹テントを使ってマーケットイベントを開催していたこともあり、千葉県成田市から大三島までお越しいただきました。

神澤さんが設計した竹テントは、運動会などで使われるような野外テントと似たようなかたちをしています。折り畳まれた状態から組み立てるのは、少しコツは要りますが、覚えてしまえば簡単。パーツが壊れた場合は、同じような竹を見つければ、すぐに直すことができます。

実際に持ってきていただいた竹テントは、少なくとも10年は使っているそうです。

数千円でテントは買えるかもしれないけれど、ここまで長く使えるテントは決して多くはありません。修理のしやすさを考えると、非常に優れたテントであることが分かります。

今回のワークショップの目的は、2日間かけて、この竹テントをつくるための知識と技術を身につけること。1日目は、まずは材料になる竹の選び方を教わりました。

竹選びの視点を学ぶ

Photo by @__fromapril

竹テントの材料に適しているのは「真竹(まだけ)」。根本から先端にかけての太さの違いがあまりなく、比較的まっすぐなのが理由です。

ワークショップでは、先に神澤さんが「真竹」の竹藪を見つけてくださっていたので、そこに移動しました。切り出したいのは、若すぎず老いすぎていない、樹齢3年程度の竹。どこを見て竹を選ぶべきなのかを神澤さんに教わります。

「節の部分が白くなっているのは若い竹です。その反対に、黒くなっているのは老いている竹。竹同士の色を比べて、少し艶がかかっているのは若いとも判断できます。最初は分からないかもしれませんが、だんだんと目が慣れてきますし、何回も判断していれば、なんとなく分かるようになると思います」

この作業の途中では、「真竹」と、「孟宗竹(もうそうだけ)」などの他の品種の見分け方も習いました。

日常生活で竹を意識することは多くありませんが、これからは竹藪を見る目が変わり、色々な発見がありそうです。

竹藪が増えている理由

Photo by @__fromapril

しまなみエリアの島々には、竹藪がたくさんあります。

かつては、島に暮らしている人たちは山に入って、キノコや山菜を採ったり、木や竹を切り出したりしていました。山の一部を切り開いて、柑橘の木々を植え、それを大切に育て、果実を販売することでも生計を立てていました。最大限に自然の恩恵を預かりながらも、搾取しすぎないように、ときには自然の手助けをして、ちょうどいいバランスをとっていたのです。

しかし、非常に安い値段で食材や木材が流通するようになり、こうした生活は変わり始めました。何かをつくるよりも消費する方が圧倒的にラクになったので、人は山に入らなくなり、ある意味で人は生態系から外れました。

人がいなくなった生態系では、生命力の強い植物や動物が台頭していて、それが竹害や獣害というかたちで人の生活にあらわれています。

遠回りな説明になりましたが、このような理由で島に竹藪がたくさんあります。

自然と暮らす楽しさ

Photo by @__fromapril

竹テントをつくることは、竹藪の管理をするためのひとつの方法になり得ます。

竹を切り出すときに、風通しを良くしたり、日当たりを良くしたりすることを考えていたら、下草が生えるようになります。下草が生えたら、たくさん昆虫が集まってきて、それを捕食する動物が増え、生態系はどんどん豊かになっていきます。

切り出した竹で不要なものがあった場合は、それを粉砕し堆肥化すれば、畑の肥やしになります。土壌が豊かになれば、元気いっぱいに育った野菜や果物を食べられるようになり、お金では得ることのできない幸せを感じられるようになります。

生態系から外れるのではなく、生態系の一部として身を委ねれば、私たちは今以上に人間らしく生きられるようになります。

竹を選ぶだけでここまで多くの発見がありました。次は、竹の加工について紹介しようと思います。

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Photography | Hayate Tanaka
Text | Shotaro Kojima

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