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好奇心の奇跡

歴史上の画期的な発見や驚くべき発明の多くには、ある共通点があります。それは好奇心です。

新しい情報や経験を求め、新たな可能性を探ろうとする衝動は、人間の基本的な性質です。今年もノーベル賞発表の時期がやってきましたが、「好奇心」に突き動かされた人々の新たなサクセスストーリーを聞くことができるでしょう。

このように、好奇心は学問の世界では大成功を収めていますが、一方で、ビジネスの世界ではあまり聞かないと感じる人もいるのではないでしょうか?好奇心は未熟で幼稚だと感じる人さえいるようです。しかし、好奇心は「聞く力」を自然に引き出し、ビジネスや日常生活でも、創造性や生産性、信頼や協調性を高める重要な感情です。また、感情知能の視点からも、好奇心は個人の成長思考を支え、集団の心理的安全性を支える要素です。

今回はこの好奇心に関してTEDの動画などを参照しながら理解を深めたいと思います。動画を見る際には日本語の字幕を活用してください。


好奇心を解き放つ

この動画では、好奇心に関する研究から明らかになった、好奇心がもたらす様々な効果を説明し、好奇心を高める三つの方法を提案しています。

質問をし、質問を歓迎する

好奇心旺盛な人は他人の話に耳を傾け、よく質問をします。「聞く力」という言葉がありますが、自分の話を好奇心を持って聞いてくれる人からは、好奇心という感情が伝染します。傾聴や質問といった言語、非言語的な行動や態度を通じて、自分の好奇心を相手に伝えることができれば、それは「聞く力」を身につけたと言ってよいと思います。

一方で、質問は未熟な人がするものだと考える人もいます。そのような人にとっては、好奇心は子供じみた仕草に見えるかもしれません。職場にそのような雰囲気があると、質問することが敬遠され、成長思考が阻害され、職場環境は心理的に非常に不安になります。

相手が何かを伝えてくれたら、まずは質問をしてみる。そうした小さな行動を積み重ねるだけで、そのような行動こそが職場の良い模範として認識され、質問を歓迎する雰囲気を作ることが可能です。

知るという結果ではなく、脳の成長

彼女の研究によると、好奇心のピークは4,5歳頃のようです。人間の脳は0歳から5歳にかけて脳の体積が大きく成長します。0歳のまっさらな脳に、目や耳、手などの五感から得られる信号を通して学習することで、脳は非常に速いスピードで成長しますが、私は、この脳の成長と好奇心が大きく関連しているのではないかと感じます。

好奇心についてよくある残念なことは、例えば猫の生態に好奇心を刺激されたと感じた時、猫の生態について知ることで好奇心を満たしたと思い込んでしまうことです。特定の知識に興味を持ち、それを知ることはとても良いことです。一方で、好奇心をそのような狭い意味でとらえてしまうよりも、脳を成長させるというより広い意味での効果に注目する方がよいでしょう。例えばダイエットで言えば、ウエストや体重を減らすという数字ばかりに目が行き、長期的に健康的な食生活を送るという広い意味での効果を見失ってしまうのと似ていると感じます。

つまり、好奇心を育むためには、経験や知識という短期的な結果に満足して心を閉ざすのではなく、脳の長期的な成長に対して心を開き、謙虚であり続けることが大切なのです。経験や知識は、謙虚さを失えば、未熟なものを遠ざける負の側面を露呈します。経験や知識のために、あなたの信頼を失う結果にならないように気を付けたいものです。

創造的な刺激とゆとり

好奇心に対して心を閉ざすことのもう一つの負の側面は、結果に直接結びつかないものを無駄なものとして排除してしまうことです。例えば、散歩をしているときやシャワーを浴びているときに良いアイデアが思いついたという様な話はよく耳にします。IQ によって支えられる理性的な思考は、EQ によって支えられる感情に大きく影響されます。ただ机に向かっているよりも、外で空気を吸ったり、景色を眺めたり、シャワーを浴びたりすることで生まれる感情の変化は、理性的な思考に変化を与え、創造性や生産性をうまく刺激してくれるのです。

例えば、大人から見ると、子供の動きは無駄なことばかりにみえるかもしれません。「早く○○しなさい」と公共の場で子供をしつける親の姿は当たり前な時代になってしまいましたが、子供の好奇心を受け入れ、子供の行動に好奇心を持つことは、大人の成長にとっても大きな影響を及ぼします。完璧よりも幸せを目指し、失敗を恐れずに、受け入れる余裕を持つことは、好奇心に心を開くきっかけを与えてくれます。

ハドソン川の奇跡

映画化もされた「ハドソン川の奇跡」は、バードストライクでエンジンが完全に停止した旅客機が、208秒という限られた時間の中でハドソン川に不時着するという決断をし、乗客乗員155人全員を救ったという奇跡の物語です。先ほどのTEDのスピーカーである教授によると、この旅客機のサリー船長を支え続けたのは、学び続けることへの意欲だったそうです。川に不時着するという訓練もしたことのないことを、あのような過酷な状況下にあって、最善であると決断し、成功させるという行動は、パイロットのマニュアル通りの経験を積むことで得られる完璧さだけでは到達できるレベルではありません。

自分の成長に対して、結果を期待する感情は、ごく自然なものです。一方、好奇心旺盛な子供たちを見ていると、その原動力が結果以外のところにあることに気づきます。このように、結果に執着せず、成長に喜びを感じる姿勢は、人生に非常に大きな影響を与えます。成長した自分からどのような結果が得られるのかは、その「時」が来ればわかるのです。サリー船長のように。


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