
【ウマ娘】徹底解説:マルゼンスキーの固有スキル名「紅焔ギア/LP1211-M」
ウマ娘の固有スキルには独特な名称(スキル名)が付与されており、読み方や意味がよく判らないものも多い。本稿ではその中でも代表的と思われるマルゼンスキーの「紅焔ギア/LP1211-M」を解説する。
紅焔ギアの読み方について
TwitterやYouTubeで「このスキルの正式な読み方はプロミネンスギアだ」という言説をたびたび見かけるが、これは正しくない。ゲームアプリ上に限らず、公式からはスキル名の読み方について示されたものは一切無い。なので、サービス開始当初から「マルゼンスキーの固有スキルはなんて読むんだ?」という疑問がユーザー間では度々話題になっていた。
紅焔(紅炎)の元々の意味は太陽が噴き出す巨大な炎だ(超雑説明)。Wikipediaには紅炎(こうえん、solar prominence)とあり、「英語のままプロミネンスと呼ばれることも多い」と書かれている。ここから「こうえんぎあ」なのか「ぷろみねんすぎあ」なのか? という疑問が生まれ、人によって読み方が派生した。
2022年5月には、公式サポートに「何と読むのが正しいのか」を問い合わせた方が居たのだが、サポートからの回答は以下の通りだった。
スキルの読み方などアプリ内に記載のない情報は個別でのご案内を行っておりません
読み方くらい教えてくれよ! と言いたくなるが、教えてもらえないものは仕方がない。正式呼称が非公開で不明な以上、「こうえんぎあ」と読むのも「ぷろみねんすぎあ」と読むのもユーザーの自由、どちらが正しいということはない、ということになる。
では、なぜ「プロミネンスギアが正式な読み方だ」と誤解している人が多いのか? それは、多くのウマ娘ユーザーが利用しているファンサイト「U-tools」に「紅焔ギア」のフリガナとして「プロミネンスギア」と記載されているためだと思われる。
U-toolsの該当ページ

U-toolsさんを悪く言うつもりは全くないし、それは筋違いでもある。U-toolsさんは「これが正式な読み方です」と謳っているわけでもなく、個人が善意で無償提供してくれているツール上で便宜的にフリガナをつけているだけなのだから。ただ、利用者が多いだけに、正式な読み方だと誤解してしまう人もまた多いのだと思う。
プロミネンスギアの元ネタとされる俗説
一方で、「プロミネンスギア」には元ネタがあると主張する人もいる。その元ネタとは靴だ。アメリカのLA Gear社が発売したレディース向けのトーニングシューズ(*)に、PROMINENCEというシリーズがあり、メーカー名と合わせて「LA Gear PROMINENCE」という商品名になる。これが「プロミネンスギア」の元ネタだという。
通販サイトの「LA Gear PROMINENCE」商品ページ
*トーニングシューズとは、靴底を不安定な形にすることで、履いて歩くだけで普通の靴より筋肉を使い、シェイプアップ効果があるとされるウォーキングシューズ。リーボックなど有名メーカーも出していたが、米国では効果が無いとして2012年に訴訟があり、メーカーの1社、スケッシャーズ社は効果の虚偽を認めて代金の払い戻しを行っている。
さて、LA Gear社に話を戻すと、この会社の創業は1979年。自社のシューズ企画を始めたのは1985年からだ。PROMINENCEシリーズの発売開始がいつなのかは不明だが、米国でトーニングシューズが流行したのは2009〜2012年頃らしいので、その辺りだと思われる。
(Amazon.co.jp での取り扱い開始日 : 2011/1/13 となっている→該当ページ)
一方、マルゼンスキーの現役時代は1976〜1977年。LA Gear社の創業でさえ引退後の話であり、時代背景が全く異なっている。そもそも「ダイエット用の靴」と、あのカッコいい固有演出カットインは結びつかない。元ネタとみなすのは甚だ疑問、というのが個人的な見解だ。
ギア
固有演出カットインの中で、真っ赤な車とギアをシフトアップするシーンが描かれる。マルゼンスキーの走りが「トップギアに入った」ことを示しており、これこそが「紅焔ギア」と言えるだろう。

シフトをよく見ると、現代のMT車でみられるシフトとはパターンが異なることが判る。MT車で右下のギアは通常「R」つまりバックギアだ。カットインシーンを一見して「なんでバックギアに入れちゃうの⁉︎」と驚いた人がいるかもしれない。実際は、モデルとなった車がランボルギーニカウンタック(型番はLP400S/LP500Sなど諸説)であるため、右下はバックギアではない。カウンタックのシフトはレース用車両でよく用いられるヒューランドパターンの5速ミッションが採用されており、右下は5速だ。カットイン演出でもこれを踏襲し、2速から5速へのシフトアップを描いている。
LP1211-M
最後は固有スキル名後半のLP1211-Mについて。
「LP」はカウンタックの型番頭文字でもある。カウンタックを製造していた当時のランボルギーニ社では、エンジンレイアウトと設置位置で型番の頭文字を決めていた。カウンタックはV12エンジンを縦置きレイアウトで運転席の後ろに設置している。「縦置き」を意味するイタリア語Longitudinaleの「L」、「後方」を意味するイタリア語Posterioreの「P」を取って「LP」というわけだ。
しかし、マルゼンスキーではまた別な意味が(ダブルミーニングとして)込められていると思われる。広く知られている説では、マルゼンスキーが朝日杯3歳ステークス(1600m戦)で記録した1400mの通過ラップ(Lap Time)1分21秒1から来ているのではないか、というもの。これは当時の芝1400m日本記録を凌駕する速さだが、本人はミドルペースと思っているので「-M」がついている、と。
確かにマルゼンスキーの固有が発動する位置を考えると、道中のラップタイムというのもありえる。「M」がミドルペースというのも、競馬新聞の馬柱でペースを示す略号として用いられているのでありかもしれない。
関連動画・リンク
マルゼンスキー朝日杯3歳ステークス1976映像