朽ち写し-5(Oyazine 04号から)
満開の花は美しい。それは短い生の頂点であり、その一瞬を越えると花は一気に死に向かう。その儚さが人を惹きつける理由でもある。しかし、死に向かう過程で見せる花の姿もまた美しい。満開の花が正の美とするならば、朽ちていく花の姿には負の美がある。多くの椿は満開を過ぎると花びらを散らさず萼(がく)だけ枝に残して花ごと落下する。落ちた椿は春の雨に打たれながら地面で咲き続け、やがて朽ちて土に還る。その姿は人の目には残酷に写るけれど、それゆえに椿は他の花とは異なる儚さを感じさせる。