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《変容の対象》2023年10月6-7小節目

濱地潤一さんへ《変容の対象》2023年10月6-7小節目を送る。

(以下fbより)
9月のこと【その1】

2023年9月は新潟から岐阜県大垣市に単身赴任するという個人的に大きな環境の変化があった。バタバタと簡単な引っ越しを終え、着任を終えた最初の週末に映像作家の池田泰教さんと音響作家のウエヤマトモコさんからお声がけ頂いた。丁度ウエヤマさんが名古屋の港まちで展示をしているということで、それを観に行こうというということになった。

「音(ね)に浮かぶ - まち歩きMAPと港まちの音の展示」

https://www.iamas.ac.jp/activity/ne-ni-ukabu/)は港まちポットラックビル2Fを会場に、ウエヤマさんを中心に昨年度制作された音の記録にまつわるMAP『音(ね)に浮かぶ』や、新たなワークショップを通じて集められた音(フィールド・レコーディング)による展示だった。会場に展示されているのは港まちでの録音風景写真や、大きく引き伸ばされたMAP場に貼られた付箋(ワークショップ参加者が録音体験で見つけた事柄と思われるコメント)。そして実際に記録された音の展示という構成になっている。中でも記録音の扱いについては、壁に設置されたipadから鑑賞者が自由に選びながらゆったり聴く方法と、ワイヤレスヘッドフォンに流れる自動再生音を聴きながら展示空間を鑑賞するという2つの方法が用意されていた。個人的には、ワイヤレスヘッドフォンに流れる音を聴きながら、付箋のメモなどを読んでいる時が、最も重層的で集中した鑑賞体験になった。

ゆっくりと時間を使って鑑賞できたので、昼食後に実際に港まちを歩かないかという流れに。ウエヤマさんも僕もお互いに丁度録音機も持っていた(!)ので、では録音もしましょうということになったのだけれど、これがまた面白い体験だった。先ほどの展示で港まちの実際の音を聴いていた僕にとっては、そこから自分はどれだけのことを知ったのだろうということを何だか問われているような感覚になり、人の記憶の成り立ちに触れるようでとても不思議だったのである。写真で見た光景は記憶の中に残っているが、実際に訪れると思っていたスケールと違っていたりする。(ここの鳥居はもっと大きいと思っていた。)不思議な高音が録音されてた場所へ行ってみたいと訪れたけれど、今日はなぜか鳴ってないのね。とか。もっと単純に、実際に訪れる前にその場所の音を聴いているということの不思議さだったり。そもそも環境音だって厳密には全てが一回性なんだけど、記憶として残る場所自体の音というのは確かにあるし、そこにはどんな認知の仕組みが働いているんだろう、とか。頭の中を洗濯するような体験になりました。

この日のフィールドレコーディングでウエヤマさんは「環境音の境目(あちら側の音とこちら側の音の間)」について語った。面白いですねと言ったらその視点はワークショップの参加者が盛んに言っていたものなのだという。そしてこんな会話の途中でも、外から面白い音が訪れるとすぐに黙って録音機の音に集中するウエヤマさんの姿が素晴らしかった。

この日、僕自身が見つけた音は港の端で何重にも反響するアナウンスの声だったり、入江の形状が影響するのか波の音がポコポコと可愛い音を立てていたものなどだった。ポコポコした音は新潟では聴いたことがなかったので、できるだけ近寄って長く録音したものの、あとで聴いてみたら少し離れた時の音の方がささやかで好みだった。

※お二人は多忙の中、“新しい環境で大変だろうから”と励ます意味も込めて誘ってくれたのだと思う。発見が多く、とても有意義な時間で確かに励まされました。深く感謝しています。

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