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アメリカン・コミックの歴史 第3回「仕立屋の息子たち(その2)」

いつの時代も、学校生活をアメリカで送る限り、内気で口下手、女の子が苦手で運動も勉強もパッとしないメガネの少年の毎日は、決して華やかなものでありません。殊に、彼が貧しいユダヤ人移民の息子となれば尚更。

ジェリー・シーゲルの少年時代は、そうした例の典型でした。現代のスクールカーストで言うならばナード (Nerd)。恋愛やスポーツに青春を謳歌する同級生をしり目に、ジェリーが夢中になったのは映画と、一冊10¢のパルプ誌。

パルプ誌とは、その名の通り粗悪紙(パルプ)に印刷された、暴力とセックスが売りの、いわゆるB級小説の雑誌で、読み切りのSFや探偵物、西部劇等の他、「ザ・シャドウ」「ドック・サヴェジ」といったヒーローの、挿絵入りの冒険譚シリーズが、安価な娯楽を求める若者や労働者の間で人気を集めていました。

どこへ行くにも、ジェリーは常にこのパルプ誌を持ち歩いていました。そこに描かれるヒーローや悪漢に、自身を重ね合あわせ、彼らのように自由で、大胆不敵に振る舞う姿を想像します。もっとも、そうしたキャラクターは、現実のジェリー・シーゲルとは正に対極にある存在でしたが。

女の子たちには歯牙にもかけられないのに、不良たちには格好の餌食にされる。そんなジェリーの学校生活も、しかし、二つの点で、まったく意味がなかったわけではありませんでした。

一つ目は、映画やパルプ小説を材料に、空想にふける時間、つまりは想像力を逞しくする時間が充分にあったという点。そして、さらに重要なのが、この学校生活が、一人の親友をジェリーに与えたという点において。

その親友とは、9年生(日本の学制で言えば中学3年生)の時、ジェリーのクラスに転入してきたジョー・シャスター。シャスターの父ユリウスも、東欧からのユダヤ人移民で、もともとはカナダのトロントで仕立屋を営んでいたものの、経営に行き詰まり、仕事を求めてシーゲル家の住むクリーブランドへ越してきたのでした。

ジェリーとジョーは、その出自だけでなく、共に、メガネをかけた内気な少年で、スポーツよりは家で本を読んでいるほうがはるかに良い。冴えない学校生活を約束された二人は出会ってすぐに意気投合します。

高校時代のジェリー・シーゲルはパルプ誌の影響から書き始めた自作の小説を、構内新聞や自主制作の同人誌で発表していました。一方の、ジョー・シャスタ―は、小さな頃から絵を描くことが大好き。画用紙を買うことすら厳しい生活の中でも、包装紙や捨てられた壁紙の裏など、とにかく絵を描くスペースがあれば何処にでも描く。

ジョーがジェリーに図書館で声をかけて知り合った、まさにその日の午後から、シャスター家のアパートで、2人は共同で作品の執筆にとりかかります。

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