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個人事業主がインボイス登録を「取消す」場合の注意点



はじめに

こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

所得税の確定申告に向けて準備真っ盛りの時期かと思いますが、今年はインボイス制度導入後初の確定申告です。

インボイス登録をした個人事業主は消費税申告書を提出しなければいけません。

まずは、インボイス制度したのに消費税申告書を準備することを忘れていないかご確認ください

そのうえで、この記事では「あれ、やっぱりインボイス登録しないほうがよかったのではないか」と考えている方に向けて、登録を取消すときの注意点を解説していきます。

取消しあたっては次の3つを検討しましょう。

  1. 自社の取引内容から登録を取消した方がいいかを確認する

  2. 登録を取消す手続きと期限を確認する

  3. 取消し後の納税義務強制期間を確認する

今回はこれらの内容を具体的にお伝えしていきます。

あと前提をもう一つ。

のちほど詳しく説明しますが、インボイス登録をしなければ本来免税事業者であった事業者向けに話を進めていきます

登録を取消した方がいい場合

インボイス制度が始まったのは2023年10月1日から。

結構増税だなんだと騒ぎになったのですが、その騒ぎに影響されてとりあえず必要そうだからインボイス登録してしまった、という方もいるではないでしょうか。

そういった方のなかには、もしかしたら登録しなくてもよかった可能性があるかも方もいるかもしれません。

つまり、無駄に消費税を確定申告して納税しまっているかも、ということです。

なお、もともと毎年の課税売上高が1,000万円超ある場合や、課税事業者になることを選択している場合は、インボイス制度がきっかけで消費税の納税義務者になったわけではありません。

これら以外の事業者(=インボイス登録をしなければ免税事業者になる事業者)を前提に話を進めているのはこの理由からです。

お客様に事業者がいない場合

明らかに一般消費者しかお客様がいない場合、インボイス登録は必要でない可能性は高いでしょう。

気をつけたいのは、この判断を小売業や飲食業といった業種で考えるのは危険だということです。

事業者が一般消費者と同じ商品を買ったり、接待で飲食店を利用することがあり得るからです。

そうではなく、お客様に事業者が含まれる可能性が限りなく低いかどうかを考える必要があります。

Yesの場合はインボイス登録を取消しても特段問題になることはないでしょう


たとえばフリーマーケットで雑貨を売っていたり、子供向けの学習塾を経営していたり。

ですので、この機会に一度自分のビジネスのお客様に事業者がいる可能性を考えてみることをおススメします。

取引先に迷惑が掛からない場合

インボイス登録していない場合、お客様の仕入税額控除に制限が掛かってくるので値引き交渉を受けることがあります。

しかし、お客様が免税事業者だったり、簡易課税制度や2割特例といった計算方法を採用していたりすると、自社のインボイス登録の有無はそのお客様の消費税の計算には影響がありません

このような場合、自社がインボイス登録を取消ししても取引先から文句を言われないことが考えられます。

取引先からインボイス登録について何も言われてなかったけど、とりあえず登録してみた、という方は一度取引先に交渉や確認をしてみるのも手です。

(とはいえ、取引先が自社の消費税の計算方法を正しく理解している必要があるので慎重な検討が必要です)。

登録を取消す方法

インボイス登録の取消しをする場合は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める手続」をする必要があります。

手続の期限は、取消しをしようとする課税期間の初日から15日前までです。

手続がこれより後になる場合は、取消しがもう一年遅くなってしまうので要注意。

15日前の数え方は下の図を参照ください。

出所:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0023007-071.pdf

取消し後の納税義務強制期間

インボイス登録取消しの最大の注意点は、インボイス登録を取消ししても、すぐに免税事業者に戻れるわけではないことです。

インボイス登録と納税義務(確定申告書の提出と納税)は別物なのです。

で、インボイス登録取り消し後に納税義務が強制される期間は「いつインボイス登録をしたか」によって異なってきます。

次の3つのケースに分けて解説していきますが、この記事公開時点(2024年2月)から最短で取消す場合を想定しています。

2023年末までにインボイス登録をした場合

インボイス制度がはじまった2023年10月1日を含む課税期間からインボイス登録申請手続(正式名称は適格請求書発行事業者の登録申請手続。以下同じ。)をして課税事業者になっているケースです。

個人事業主の場合は、2023年12月31日までに登録している場合ですね。

この場合、インボイス登録は先ほど紹介した取消し手続きを2024年12月17日までに提出すれば、2025年1月1日から登録を取消すことができます。

そして、納税義務についても同じく2025年1月1日の課税期間からはなくなり、免税事業者になることができます(2年前の課税売上高が1,000万円を超える場合等を除きます)。

つまり、インボイス登録の取消しと同時に納税義務もなくなる、ということです。

2024年1月1日にインボイス登録をした場合

2023年中にインボイス登録をせず、2024年1月1日にインボイス登録をした場合は、いわゆる納税義務の2年縛りが発生します。

この納税義務の2年縛りとは、「登録開始日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間」は納税義務は強制されますよ、というルールです。

これだけではわかりにくいですよね。

たとえば、2024年1月1日が登録開始日だとすると、2年を経過する日は2025年12月31日になるので、2024年と、2025年12月31日が属する2025年は納税義務が強制されることになります。

2024年1月2日以降にインボイス登録をした場合

この場合も納税義務の2年縛りが発生します。

ただし、2024年1月1日に登録したケースと違って、納税義務が強制される期間が1年長くなってしまいます

なぜかというと。

2024年1月2日が登録開始日になると、2年を経過する日は2026年1月1日になり、2026年1月1日が属する課税期間=2026年中は納税義務が強制されることになるからです。

この実質3年縛りを短縮するためには、2026年から課税期間を1ヶ月や3か月に短縮する選択届出を出すことで可能になります

が、確定申告をする頻度が増えるので手間にもなります。

その他の注意点

インボイス制度取消し後の納税義務強制期間については、その他にも

  • 本当は課税事業者選択届出書を出していないか(本当はインボイス登録がなくても課税事業者ではないか)

  • 調整対象固定資産などを購入していないか

の要素で変わって来る場合があります。

正直もうお腹いっぱいですが、無申告になってしまう事態を避けるためにもこの辺りは抑えておかなければいけません。

おわりに

インボイス登録の取消しにあたっては、登録自体の取消しだけではなく、その後の納税義務についても考える必要がある、というのが今回のポイントになります。

消費税は手続きひとつで大きく課税関係に影響が出るので、何をするにも慎重に検討してから進めることをおススメします。

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