確定申告をボイコットしたらどうなる?~無申告のリスクについて~
はじめに
こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。
政治家の裏金問題が問題視されているなかやってきた確定申告シーズン。
「国民は正直に納税しているのに政治家は脱税してる」なんていう辛辣な意見も聞かれます。
ただ、これは至極当然の感情だとは思います。
じゃあ、そうやって政治家に対抗するために確定申告をボイコットしたらどうなるのか。
この記事ではそのリスクを解説していきます。
ボイコットしても納税義務は消えない
大変残念?ではありますが、確定申告をボイコットしたところで納税義務がなくなるわけではありません。
「そんなのは分かってる!自分が納税したくないわけじゃなくて国会議員に襟を正してもらいたいから言っている!」
という方がほとんどかと思いますが、一応日本の租税制度の根本について触れさせていただきます。
納税は国民の義務
憲法第30条、憲法第84条では、納税義務と租税ルールをこのように定めています。
つまり、日本の国民は納税義務があって、それは法律によって決められますよ、ということです。
逆に、法律で明確になっていないのに、国が勝手に国民に税金を課すことはできない、ということになります。
納税義務はあるけど、ちゃんと国会を通った法律に則って課税されていると理解していただければと。
(最近は国税庁の取扱いQ&Aが多用されていて怪しい部分はありますが。。。)
ボイコットしたらどうなる?
先ほど紹介したように、憲法で納税義務を負うことは決まっているので、違反した場合はペナルティを受けることになります。
このペナルティは、国民に適切な申告を促すための役割も担います。
じゃあ、確定申告期限までに申告しなかったら、どういうペナルティが待っているのか。
次からその辺りを詳しく話していきます。
制裁金の支払い
申告義務がある個人や法人が申告書を期限まで提出しなかった場合、無申告加算税と呼ばれる制裁金の対象になります。
無申告加算税は本税の15%~30%の割合でかかってきます。
株の配当や不動産投資の利回りよりはるかに高い率のお金が出ていくということです。
そう考えると凄く勿体ない、と思う方もいらっしゃるのではないかと思います。
ただし、税務調査の前に自主的に申告した場合は5%までに軽減されたり、期限から1ヶ月以内に自主的に申告した場合など一定の要件を満たすときは免除されたりします。
とはいえ、免れている税金が多額であったり、悪質性が強いと認められる無申告は、税務調査では終わらずに起訴される可能性があります。
いわゆる脱税犯として、裁判所で裁判を受けるということです。
有罪になった場合は罰金や懲役といった罰を受けることになります。
税法のルール違反で受けるペナルティについては、こちらで詳しく解説しています。
延滞税の支払い
期限までに納税しないと、納付が遅れてしまっていることによる延滞税も支払う必要が出てきます。
延滞税は、本来の法定納期限を起点に計算するため、無申告の期限が長くなればなるほど金額が大きくなっていきます。
延滞税の割合はだいたい2.5%~9%弱といったところです。
利息的な性格があるので、通常の借入の利率と似たり寄ったりな割合ですが、それでもこの低金利時代に9%は高いですよね。
詳しい割合についてはこちらも参考にしていただければと思います。
延滞税の試算もできます。
優遇措置の不適用
期限内に申告しなければ、本来受けられたであろう優遇措置の適用を受けられなくなることがあります。
たとえば事業所得や不動産所得のある個人事業主の所得税の確定申告では、事前に申請書を提出していれば青色申告者になり、青色申告特別控除を受けることができます。
青色申告特別控除とは、実際に経費としてお金を払っていなくても、税額の計算上経費と同じように売上から引くことができる控除です。
その金額はe-Taxを使えば65万円控除できますが、期限後に申告した場合はこの65万円が10万円に縮小されることに。
なので、たとえば税率が所得税と住民税合わせて20%だと仮定すると、55万円(65万円ー10万円)×20%=11万円の税金を余分で払う必要が出てきます。
せっかく青色申告の承認を受けているのに非常に勿体ないですよね。
あとは、法人の場合は無申告や期限後申告を繰り返していると青色申告の承認自体取消されてしまう可能性もあります。
そうすると、税額控除や特別償却といった、税金を減免できる優遇措置が使えなくなるリスクが潜んでいます。
おわりに
国民感情としては確定申告をボイコットしたいところですが、法治国家の日本ではボイコットした側が痛手を負うような仕組みになっています。
でも逆に、本当にボイコットして納税義務が免除されてしまったら、疑惑を持たれている国会議員が「裏金分は納税やーめた」で納税ボイコットすることも認めてしまうことになります。
結局真っ当に申告する人間が報われないと法治国家でなくなりますし、そういう国であってほしいと思っています。