見出し画像

脱税ってなに?税法のルール違反を正しく知ろう

はじめに

こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

今回は「脱税」をキーワードにお話していきます。

誰かが税務調査を受けたり、税金を不正に減らしたり、そもそも申告をしていなかったり、そういったニュースがあると脱税という言葉がよく出てきます。

でも、実はそのなかには脱税という言葉が相応しくないケースも

それもそのはずで、税金の世界には色々な種類のペナルティがあるので、一般の方からするととても分かりにくいんですよね。

とはいえ、税務調査でペナルティを受ける可能性はどの事業者にもあります

そこでこの記事では、適切な危機意識を持つために、事業者の方なら最低限知っておいていただきたい税金ルール違反について解説していきます。

ルール違反の種類

大きく分けて3つ

どこかの企業や芸能人に税金が絡むニュースがあると、「申告漏れ」「所得隠し」「脱税」といった言葉を見聞きしますよね。

これは税金のルール違反に種類があって、それぞれ言葉を使い分けているからです。

(ただし、税法にこれらの言葉の定義があるわけではなく、あくまでルール違反の種別を付ける説明の便宜上使用しています)。

なので厳密な区分としては、税金のルールにしたがっていないことが全て「脱税」ではなく、表の右に該当する場合が「脱税」になります。

ただ、感情的には事実を装ったり、事実自体を隠す行為(仮装・隠蔽行為)をしていたらそれはもう「脱税」でしょ、と思ってしまうのも無理はないかと。

なので、所得隠しから「脱税」という言葉を使っている税理士の方もいらっしゃいます。

実際、国税庁の一般こども向けの「税の学習コーナー」でも所得隠しから「脱税」という言葉を使っているようにも見えます。

出所:https://www.nta.go.jp/taxes/kids/qa/index.htm

少しややこしいですが、一般の納税者の方には、ルール違反にも悪質度合いによって種類がある、ということを抑えておいていただければと思います。

申告漏れのペナルティ

過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税は、附帯税とも呼ばれます(下の重加算税も)。

単純なミスや手続き遅れであっても、税金の計算に誤りがあればこれらの附帯税を支払わなければならない可能性があります。

附帯税は増えた税金にプラスして支払う義務がある、一種の制裁です。

課税割合は各加算税の種類や増えた税金の大きさによって異なりますが、10%~30%の附帯税がかかります(軽減措置もあり)。

所得隠しのペナルティ

税務調査で仮装・隠蔽行為をした、と認定されてしまった場合は、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税に代えて重加算税を支払わなければいけません。

重加算税の割合は増えた税金の35%~40%ですが、過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合は、さらに10%上乗せされます。

なので、たとえば税務調査で100万円税金が増えると、重加算税で半分の50万円近く追加で払う必要が出てくるケースもあり得るということです。

脱税のペナルティ

脱税だと認められた場合、悪質度合いに応じて懲役や罰金の判決を言い渡されます。

ここで判決といったのは、脱税犯は

  • 国税局の査察部(いわゆる「マルサ」)が強制調査して

  • 検察庁に告発して

  • 裁判をして

  • 有罪となった

場合に成立するからです。

なので、皆様が思い浮かべる税務調査で間違いを指摘されたらすぐ脱税犯、ということにはならない、ということを分かっていただければと。

また、申告漏れや所得隠しで払う附帯税(加算税)は、あくまで行政罰なのですが、脱税犯に課せられる罰は刑事罰なので前科が付きます。

前科が付くと免許や資格をはく奪されることもあるので、かなり重い刑になります。

2019年にお笑い芸人のチュートリアルの徳井さんが、自身が経営するタレント会社の無申告状態を放置していた問題では、一部所得隠し(仮装・隠蔽行為)とされましたが、脱税(偽りその他不正の行為)にはなりませんでした。

徳井さんが「うっかり」していて告発するほど悪意はなかったこと、素直に修正にしたがったことにより、脱税までには至らなかったようです。

税務調査の正しい怖がり方

税務調査で誤りが見つかると、どの違反に該当するかが検討されることになります(指導だけに留まる場合もあります)。

その時に、納税者側が、その誤り(違反)の性質を理解できることが大切です。

たとえば、たまたま事務的な費用の集計ミスで経費を多く計上してしまっていたのに、それがわざと架空の経費を計上したと疑われる可能性はあります。

こういうときに、調査官の言いなりになって「仮装・隠蔽行為」だとされないように、事実をはっきりと伝えましょう。

というのも加算税もそれなりに重たい負担だからです。

さらには、重加算税の対象になると、税務署も目を付けるので調査のサイクルが短くなる可能性はあります

あとは、もし調査官が実地調査の場面で「脱税」という言葉を口に出したといしても、必ずしも上の表の一番右に位置する「脱税(偽りその他不正の行為)」を指しているわけではない、ということも知っておいていただければと。

もしかしたら所得隠し(仮装・隠蔽行為)を疑って「脱税」と言っているかもしれませんので、調査官の意図を良く確認する必要があります。

おわりに

ビジネスをしたり自分で確定申告をしたりしている方にとって気になる税金のルール違反。

恐れ過ぎず甘く見過ぎず、適切な危機感をもっておきましょう。

いずれにしろ、間違いがある申告や怪しいと思われる申告をしなければ、無駄なペナルティを支払う必要はありません。

クリーンな申告をすることが結果的にお金が貯まることにつながります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?