【ウソホント?】インボイスがないと経費にならない問題
こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。
とうとうインボイス制度が始まりましたが、やはり経理の現場は混乱しているようで。
Xを眺めていて気になった投稿をタイトルにしたのですが、取引先から「インボイスがないと経費にならないのでインボイス登録してください」と言われている事象があるようです。
今回は、その辺りの解説をしていきます。
結論、違います
まずは結論から。
インボイスがないと経費にならないというのは間違いです。
つまり、インボイスがなくても経費にすることができます。
なぜこのような間違いが巷に広がっているかというと、消費税と所得税(法人税)の話を混合してしまっていることが原因だと思われます。
インボイスは消費税、経費は所得税(法人税)の話です。
もう少し詳しく解説していきましょう。
インボイスと経費の関係
通常、経費の集計をするときには、請求書や領収書を元資料にして経理をしますよね。
で、インボイスの正式名称は「適格請求書」です。
つまり、インボイスの立ち位置としては請求書のなかでも、一定の要件を満たした書類だということになります。
図にするとこんな感じです。
図をみていただいて分かるとおり、インボイス=適格請求書は消費税法の要件を満たした請求書を指しています。
では、次からは通常の請求書と、インボイス=適格請求書が税務にどういう影響を与えるかということをお話します。
経費に請求書は必須ではない
まず、経費とは何ぞやということですが。
税務において経費を気にする必要があるのは、それが所得税や法人税の税額を左右するからです。
超簡単にこれら税額の算定方法を表すと次のようになります。
①:収入−経費=利益
②:利益×税率=所得税(法人税)
つまり、経費が多ければ税金を抑えることができるので経費集計は重要になります。
ただ、経費にするためには請求書や領収書が絶対に必要というわけではありません。
これらがなくても、事業に必要な支出であれば基本的に経費にすることはできます。
基本的に、といったのは、例え請求書や領収書がある経費であっても、税法の独自の基準で経費と認められていないものがあるからです。
今回はその説明は省略するのですが、請求書がなくても経費にすることはできるので、より厳格なインボイス=適格請求書がなければ経費にならない、というのは誤りだということは分かっていただければと思います。
ただし、所得税法や法人税法で、事業者が入手した請求書は保存しておく義務はあるので、捨てて良いわけではないことにご注意ください。
インボイスがないと増えるのは消費税
ではなぜインボイスがないと困る、という取引先からの連絡があるのか、というと。
それは、インボイスを発行しないと取引先が払う消費税が増えることになるからです。
消費税の納税額の計算式は次のとおりです。
受け取った消費税−支払った消費税=納税額
なので、支払った消費税が多ければ多いほど納税額は小さくなります。
で、2023年10月以降は、この支払った消費税を差し引くのを認めてもらうためには、インボイスを入手して保存しておく必要があります。
つまり、消費税の計算上不利になるからインボイスが欲しいということであって、インボイスの有無で経費になるか、ならないかという話ではないということです。
ただし、このインボイスがないと消費税の計算上不利という話は、上で紹介した算式が適用される原則課税を選択している場合であり、2割特例や簡易課税制度を選択する場合は気にする必要はありません。
取引先が2割特例や簡易課税制度を選択している事業者であれば、インボイスすら関係ないのです。
この2割特例、簡易課税制度の計算方法についてはこちらの記事を参考にしていただければと思います。
インボイスに邪魔されないために
このように、インボイス制度が複雑になりすぎたおかげで、インボイスと関係のない経費性で混乱が起きています。
問題は、こういった混乱が事業者間の取引を阻害しているということです。
同じようによく聞くのは、インボイスを登録しなかったら、取引先から取引の停止や値引きの通知を受けたりすることです。
これらに関しては強引な場合、税法ではない他の法律で問題になる可能性があります。
この辺りに関しては、こちらの記事をご一読ください。
取引先も皆さんと同じで、いろんな手段を使って情報をかき集めています。
が、そのなかには間違っている情報や、間違っていなくても受け手側が勘違いして理解している情報があってもおかしくありません。
取引先からの要求や自分の理解が合っているかどうか確かめたい場合は、下記のLINEからお問い合わせいただければと思います。
実際に、「インボイス登録していないという理由で値下げ交渉されましたが、どう回答すればいいですか?」というご相談をいただき、対応方法を回答させていただいています。