
【今さら聞けない】インボイスの超基本の話
なんの税金の話なのか?
こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。
まずインボイス制度を簡単に説明していきます。
インボイスは消費税に関わる話です。
ただ、いわゆる税率が8%から10%に上がるといった増税とは違います。
「いやいや、インボイスが増税って騒がれているし、普段買い物するときに消費税払っているから、一般消費者も影響あるんじゃないの?」
という疑問が浮かぶ方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうわけではありません。
その辺りを簡単に解説していきます。
インボイス制度をはじめ、税制の最新情報や私の個人的な意見はXでも投稿していますので、こちらもみていただければと思います。
インボイス制度への反対は
— 島田征樹|税理士 (@mshimada_tax) September 26, 2023
・増税への反対
・経理負担増加への反対
の2種類あります。
ただ、個人的には、増税でお金を喰う制度である以上に、経理負担の増加で時間を喰う制度だと考えています。
結果的に後者による経済的損失のほうが大きいかと。
誰が影響を受けるのか?
インボイス制度の影響を受けるのは事業者です。
なので、一般消費者がコンビニで食料や日用品を買ったり、レジャー施設やイベントに遊びに行ったりする分には影響のない話です。
それがどういうことかというと。
消費税のルール上、消費税の負担と納税は別の人が担当になっているのです。
負担はわれわれ消費者、納税は事業者です。
たとえば、普段コンビニで買い物をしたときに、われわれ消費者は消費税を支払い負担しています。
レシートに消費税が記載されているのがその証拠です。
でも、消費税を国(税務署)には納めてないですよね。
コンビニに払ったっきりになっています。
所得税の確定申告をした方ならわかるかと思いますが、確定申告では国(税務署)に税金を納めると思います。
では、消費税は代わりに誰が納めているかというと、それが事業者なのです。
これが負担はわれわれ消費者、納税は事業者、の意味するところです。
そして、重要なのはインボイス制度は、われわれ消費者の負担を増やすのではなく、事業者の納税額と手続を増やす制度なんですね。
事業者への影響とは?
いまお伝えしたおり、消費税は消費者→事業者→国(税務署)という流れで納税されていきます。
図にするとこんな感じです。

これが原則なのですが、いままでは例外的に、一定規模以下の小規模な事業者は国(税務署)に対して消費税を納税しなくていいよ、という規定が設けられていました。

これが一部で益税と言われているものですが、ルール違反をしていたわけではなく、法律的にも小規模な事業者は消費者からもらった消費税100を自分の懐に入れることが許されていました。
ところがインボイス制度では、事業者がインボイス登録をすると小規模であっても原則どおり消費税を納税しなければいけなくなります。
インボイス登録をすることで、いままで2つ目の図だった小規模な事業者が、1つ目の図の取扱いになるということです。
また、両方の図を比較していただいてわかるとおり、どちらも消費者の負担は変わっていませんよね。
負担が変わるのは、いままで消費税100を国に納めるのを免除されていた事業者だけです。
繰り返しになりますが、これが先ほどお伝えした、インボイス制度は、われわれ消費者の負担を増やすのではなく、事業者の納税額と手続を増やす制度だということの正体です。
インボイス登録しなきゃいけないの?
インボイス登録は任意です。
それでもインボイスの登録を要求されるのは、登録しないと自社だけではなく、他の事業者にも影響があるからです。
これもどういうことか説明していきます。
簡単に言ってしまえば、自社がインボイス登録していないと、インボイス登録している他の事業者の納税負担が増えることになります。
上の図の小規模な事業者と消費者との間に、通常規模(2年前の売上が1,000万円超など)の事業者が入る例を想定してみましょう。
説明の便宜上、真ん中の通常規模の事業者を事業者A、いままで消費税の納税が免除されていた小規模な事業者を事業者Bとします。
事業者Aが事業者Bから商品を仕入れ、消費者に対して商品を売る商売を想定しています。

インボイス登録する場合
上の図でケースで、事業者Bがインボイスに登録するとこうなります。

つまり、消費者が払った消費税100を事業者Aと事業者Bが50ずつ折半して国(税務署)に納めることになります。
このとき事業者Aは、消費者から(1,000+100=1,100)を受け取り、事業者Bに(500+50=550)と納税50を支払うので、500のお金が手元に残ることになります。
インボイス登録しない場合
いっぽうで、もし、事業者Bがインボイス登録をしない場合は次のようになります。

この場合は、事業者Aは自らが支払った消費税50を受取消費税から差し引くことができません。
結果として、消費者が払った消費税100は、事業者Aが全額納税することになるということです。
このとき事業者Aは、消費者から(1,000+100=1,100)を受け取り、事業者Bに(500+50=550)と納税100を支払うので、450のお金が手元に残ることになります。
細かい経過措置はありますが、インボイス制度の基本的なコンセプトはこんな感じになっています。
結局何が問題なのか?
このように、事業者Aは事業者Bがインボイス登録しているかどうかで手元に残るお金が変わることになります。
で、もっと悩ましいのはインボイス登録するかどうかは任意だとどういうことです。
登録してもしなくてもいいけど、登録しなかったら取引先に迷惑がかかるかもしれませんよ、という制度になっています。
加えて、各事業者の経理処理負担が増えることになるルールがたくさん増設されるのですが、これはまたの機会に説明させていただきます。
今回はとりあえず、インボイス制度のコンセプトと影響の概要を知っていただければ嬉しく思います。
この記事の内容を踏まえたうえで、インボイス制度のより細かいルールや損しない方法を受け取りたい方は、こちらのLINEにご登録いただければと思います。
