成長したいのなら、与えられた仕事は、好き嫌いせず全部美味しくいただいてみたら?
最近、安達裕哉さんのこちらの記事がSNSのタイムライン上を流れてきたので《泥臭い仕事》について考えていました。
こちらの記事で書き手の安達さんが書いておられるのを、私は以下のように受け止めました。あくまで私の受け止めです。
ここでいう《泥臭い仕事》とは「キツい/生産性が低い/光が当たらない」仕事で飛び込み営業やテレアポが代表例として挙げられています。
この記事を読んだ、私の最初の感想は
「私は市役所で《泥臭い仕事》を経験してきたのだろうか?」
この問いに対する、私の直感的な答えは「No.」でした。「泥臭い」という語感が、何となくピンときませんでした。
でも、よく思い出すと《泥臭い仕事》と呼んでもいいかもしれない仕事がいくつもありました。
国への特区の申請では締め切り直前に26時まで上司とマンツーマンで申請書を書いたり、定額給付金の仕事では朝から晩まで鳴りやまない電話で罵声を浴び続けたり、首長や幹部と現場の考え方が合わないプロジェクトの推進も時間や体力とは異なる意味でキツい仕事でした。
電気自動車のプロジェクトでは企画書をもって様々な企業に営業に行っても全く相手にされなかったり、内閣府では大臣の記者会見の想定問答で大臣秘書官からOKをもらうのに夜中までかかったり、公有地活用では調査業務の受託者の報告書がイケてなくて土日返上で赤ペンを入れまくったり、生産性が低い仕事も売るほどありました。
光が当たらない仕事は……もう、ほぼ全ての仕事がそうでした!
ただ、これら《泥臭い仕事》をその時々で「やりたくないな~」とは思っていなかったことに救われました。
「やりたくないと思っていたけど、今思うとやっていてよかった」ではなくて、当時からネガティブな気持ちよりも「まぁ、こんなもんかな」と受け入れていた感じ。
「お給料はもらっているし、このくらいは全然やりますよ!」
これが私の偽らざる気持ちかもしれません。
この仕事観は、恐らく大学院での経験に影響を受けています。
当時の様子はこちらの記事が詳しいので読んでいただけたら嬉しいです。
私は高分子合成の研究室に所属していたのですが、化合物を分離・精製する工程が何時間もかかる割に得られる化合物は少ないし、私自身の手技が未熟なせいで分離・精製も十分にできないし、最悪だなと思いながら取り組んでいました。
他にも必要な化合物の合成のために何十時間も反応を待たなければいけない工程があったり、そもそも目的の化合物が合成できたのか分析しなければならなかったり、次の合成のステップに必要な純度の化合物が得られなかったり。
劣等生だった私は、時間ばかりかかる割に結果が全く得られず、悲惨な状況でした。
そして、その時間に対して私は学生として学費を支払っていました。
学生として学ぶためにいるわけで、学費を支払うことは当然のことなのですが、それが市役所での私の仕事観に影響を及ぼしていました。
「大学院ではあんなに報われない作業にお金を払って取り組んでいたのに、市役所ではこれらの作業がお金をもらいながらやらせてもらえるの!?」
《泥臭い仕事》も、そのひとの置かれた環境だったりそのひとの価値観によって、意味や価値の感じ方が異なるのでしょう。
大学院の研究室の日々と比べたら、市役所の仕事は天国でした。
加えて、与えられた《泥臭い仕事》をやり切ることで次の《泥臭い仕事》を手に入れ、チカラを伸ばすチャンスを得て、成長することでより困難な《泥臭い仕事》を手に入れて……私はそうやって地力を耕してきました。
生産性が高い《泥臭くない仕事》では手に入らない地力。
それはピンチをブルドーザーのようにねじ伏せるチカラであり、どのくらいのピンチなら自分の地力でねじ伏せられるかを見立てられるチカラでもあります。
この成長機会は、若くて単価が低い時代の特権。
市役所に勤めていると「不幸にして」実力が上がらなくても給料の単価が上がってしまいます。高い単価のひとに《泥臭い仕事》をプレゼントできるほど組織に余裕はありません。年を重ねて職位が上がっていくと《泥臭い仕事》で地力を耕すチャンスがもらえなくなります。
正直、今の若い人が《泥臭い仕事》を本当に嫌がるのかどうか、私は20代の職員と仕事をする機会がないので分かりませんし、仮に嫌がるとしても、その成長機会が他のひとの元に転がり込むだけなので、私にとってはあくまで他人の課題。
ただ、キャリアコンサルタントとして訊ねられれば「成長したいのなら、与えられた仕事は、好き嫌いせず全部美味しくいただいてみたら?」と答えるかもしれません。
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