自分で1,000円稼ぐと分かること
今日の記事は、組織に雇用されて働く会社員・公務員の皆さんと一緒に考えたい《自分で稼ぐ》というテーマです。
1.はじめに
ここでいう《自分で稼ぐ》とは、営業として数億円を売り上げたとか、公務員なら企画書と申請書で500万円の国の補助金の採択を勝ち取ったとか、滞納していた債権50万円を徴収したとか、そういうことではありません。
これらはすべて組織の看板で組織のシステムを使ってお金を得たのであって、《自分で稼ぐ》とは異なります。
《自分で稼ぐ》とは、そういった組織のシステムを使うことなく(使うならあくまで自分でつくったシステム)、自分の頭と身体で何かしらの価値を提供した対価としてお金を得るという意味です。
組織のシステムを使って稼ぐだけで終わる人生もあり得ますが、今までは結果的にそれで済んだひとが多かっただけで、私と同世代からより若い世代は、組織のシステムを使わずに《自分で稼ぐ》ことがキャリアデザインの要素としてより重要になると考えています。
2.稼いだことありますか?
こう定義したとき、皆さんは自分で稼いだ経験はありますか?
自分が誰かに何かしらの価値を提供して、その対価として自分口座にお金が振り込まれる、もしくは封筒に入った現金を受け取る経験。
会社員や公務員として働いていると、なかなかこういう経験はしませんよね。仕事ではな場面で価値を提供して対価としてお金をもらう経験です。
これは、そういう経験をしているひとが偉くて、経験がないひとが劣るとかダメということではありません。繰り返しになりますが、そういう経験もなく、そもそも《自分で稼ぐ》なんてことと無縁の人生というのはあります。
ただ、《自分で稼ぐ》経験によって、組織に雇われたサラリーマンが知らないことを知ることになり、それがキャリアデザインにおいて重要な要素になる場合があるので、この記事でお伝えしようとしています。
3.組織に雇われたサラリーマンが知らないこと
では、具体的に組織に雇われたサラリーマンがなかなか知り得ないことで、《自分で稼ぐ》ことで知ることができるとは何でしょうか。私は、3つあると考えています。
①稼ぐ大変さ(組織という装置のすごさ)
1つ目は、稼ぐ大変さと組織のシステムのすごさです。
もちろん営業で自社の商材を5億円売るのはすごいことかもしれません。でも、その商材を開発するひと、お客さんに届けるひと、請求書を発行して入金を処理するひと、間接的な部分までもっと挙げれば営業さんの労務管理をするひと、受発注など各種システムを管理するひとなどなど。これら社内(または協力会社含め)の総力、つまりは組織のシステムによって5億円の売上は実現しています。
会社勤めをしていれば、こういったことをまったく意識したことがないひとはいないでしょう。
でも、これら組織のシステムをまったく使わずに《自分で稼ぐ》ことを考えたことがあるひとは、それほど多くないのではないでしょうか。
このことを考えると改めて組織のシステムというのが偉大かが分かります。同時に、そのシステムを使わずに《自分で稼ぐ》ことがとても大変なことだと想像できます。
②自分にどこまでできて、さらに何が必要か
とはいえ、《自分で稼ぐ》ときには5億円を売る必要はありません。
例えば、1,000円を売ることを考えてみましょう。
皆さんは、自分の頭と身体で何かしらの価値を提供した対価として1,000円を得ようとしたとき、何を提供できますか?
(完全に対象外とは言いませんが、フリマアプリなどでの売買は、自分の頭と身体で価値を提供というより、物の価値に対価を払うので、本来の趣旨から外れている気がします)
私の場合、(人事当局に必要な手続きをしたうえで)原稿の執筆や研修の講師でいただく割合が多いですが、有料のイベントやワークショップを開催して得られることもあります。イベントやワークショップは会場代など経費を賄うために有料にすることがあるのですが、それでも基本は少し赤字になります。赤字にはなるのですが、参加者が20名×1,000円で20,000円を売り上げる経験はできます。
こういう経験をすると、原稿や講師などは頼まれない限り仕事にも収入にもつながらないこと、準備は大変でもイベントなどは自分のタイミングで仕かけられる収入源になるけど集客のリスクもあること、そして、いずれも今の勤め先の残業代よりも時間当たりの単価がはるかに安いことなどの相場観が身につきます。同時に自分に足りないものを知る機会にもなります。
③世帯として稼ぐ力をデザインする大切さ
組織に雇われたサラリーマンがなかなか知り得なくて《自分で稼ぐ》ことで知ることができること。最後の3つ目は、個人ではなく世帯の話です。
組織に勤めているときの残業代ほどの時間当たりの単価が稼げないとしたら、組織にしがみついているしかないのか。
そこで大切になってくるのが、自分が如何に稼ぐかだけではなく、パートナーと力を合わせて《世帯で稼ぐ》ことに意識を向けることです。
これは「《自分で稼ぐ》となると組織に勤めているほど稼げないはずだから、パートナーに頼りましょう」ということではありません。
自分とパートナーの双方の稼ぎ方にどんなリスクがあるのか、もしくは双方のキャリアのどんな選択肢が許容されるのか、そういったことを考えるいいキッカケになります。
4.分からなくてもいいこと?
まったく関係なく定年まで勤め、定年後も関係なく過ごし、一生関係ないままで終わるひとも実は多いのかもしれません。
今44歳の私には夢のような非現実的な老後ですが、65歳まで定年延長で同じ会社・役所に勤め、その後は年金と預貯金で過ごすことができれば、確かに組織のシステムを使って稼ぐだけで終わる人生もあり得ます。
だから私も、《自分で稼ぐ》ことを考えるのを、すべての会社員と公務員に強く求める気持ちはありません。それよりももう少し穏やかに、おススメするくらいの気持ちです。
ただ、繰り返しになりますが、私と同世代からより若い世代は、組織のシステムを使わずに《自分で稼ぐ》ことがキャリアデザインの要素としてより重要になります。
私自身は45歳までに《辞められる人材》になることを直近の目標にしています。《辞められる人材》とは、いつでも組織を辞めて自分で食べていくことができるけど、今は自分の選択としてこの組織に勤めている人材。
「辞めさせないでください」という不安から解放されることで、仕事に対して高いエンゲージメントを保ちつつ、組織に対して対等な立場で向き合いたい。そんなキャリア自律のためには《辞められる人材》になる必要があるのですが、《辞められる人材》になるためには《自分で稼ぐ》経験が有効だと私は考えています。
5.稼ぐチカラは生きるチカラ
民間企業の中には、副業の規制を緩和したり撤廃したり、中には推奨するところも出てきました。最近では、起業支援などの場面において、本業を辞める前に副業で実際に稼げるのかどうか試すことを推奨しているケースもあるようです。
一方、公務員については、いまだ金銭による対価を得て何らかの活動をすることには制約が大きい状況が続いており、《自分で稼ぐ》ことを経験するには工夫が必要です。
例えば、公務員として業務外で収入を得ることができないのであれば、必要経費をギリギリ賄えないくらいの収入を設定して赤字(報酬ゼロ)としたり、チームを組んでチームとしての収入として取り扱うことにしたりといったやり方が可能かもしれません(最終的にはご自身が所属する組織の人事当局の見解に従ってください)。
私はよく、2枚目の名刺を持つ際にボランティアであっても人脈やスキルなど無形の資産を築くような《無形報酬》を得て、報酬をデザインすることをおススメしています。
それと比べると、本日の記事は少し矛盾するように見えるところもあるかもしれません。
でも、これらは矛盾しているわけではなくて、ボランティアで取り組む場面で《無形報酬》のデザインが重要なことは間違いないですし、同時に、《自ら稼ぐ》ことで得られる感覚や経験も生きるチカラとして重要だということ。
すぐに10万円、20万円稼ぐ必要はありませんので、ぜひ自分なりのやり方で、自分らしいやり方で、まずは1,000円を稼ぐところから始めてみてはいかがでしょうか。もちろん、必要であればキャリアコンサルタントとして、寄り添い、支援させていただきます。
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そのあたりのことは、こちらの記事でもお伝えしています。
よろしければお手に取っていただけたら嬉しいです。
また拙著に関連する記事はこちらのマガジンにまとめて掲載していますので、併せてご覧ください。
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