さすがにちょっとひどすぎる
お母さんへはいろんな気持ちがある。
まずは産んでくれたことへの感謝。
いつも心配してくれること、友達みたいに楽しくランチをご一緒してくれること、、、
涙が出るほど笑ったり、逆に悲しくて悔しくて一緒に怒ってくれたり。
感謝の占める部分がかなり大きい。
でも、それだけじゃない。
学生時代に好きな人を実家に連れて行って
「結婚を考えてる人だよ」って紹介したとき、
「こんな痩せてみっともない、器が小さそうな男」とけなしたこと。
彼と自分の親の板挟みになってツラくて、結局別れてしまった私に「あら?結婚するのかと思ってたのに別れたのね。そんな程度のことで別れるくらいなら、結婚してたって離婚してたわよ。」と言ったよね。
私は、みっともないくらい忘れられない。
一生忘れない。
小さい真っ黒に塗りつぶした箱に懸命に押し込めてる。
けど、この気持ちは消えることがない。
普段はどこかへ姿を消しているように見えるこの気持ちは、なにかあるたびにちょこまかと私の胸によぎる。
男女問題について話すとき、母とは衝突ばかりしているように思う。
先週、母と話していてさすがにひどいんじゃないかと思うことがあり、また悲しい気持ちになった。
少しガヤガヤした、いかにも街の洋食屋さん、みたいなお店でランチしていたときのこと。
数年前に亡くなった父方の祖父の話になった。
祖父は愛妻家で、肺がんで自分が痩せ細って亡くなる間際にも祖母のことをずっと気にかけていた。
祖父の病状がいよいよ末期になり入院している間、祖母は病院まで歩くのがつらいと一度しかお見舞いに来られなかったが、来たときには祖父がそれはそれは喜んで、談話室でずっとふたり手を握って、見つめ合って話し込んでいた姿が今も私の目に焼き付いて、印象に残っている。
自分が死んだあとに残される祖母があまりにも心配で、
「私が死んだらおばあさんのことは頼んだぞ。」と息子である私の父に何度も念押しして亡くなったくらいだ。
そんな祖父が、若い頃に実は浮気していた過去があるというのだ。
私は本当に驚いて、「あのおじいちゃんが!?信じられない…」と呆然としていた。
そこで
母からまさかの言葉が飛んできた。
「あなたのお父さんもコソコソして怪しい時期があったし。そういう血かもねぇ。
私の家はそんな血は一切ないのよ?私のお父さんもそうだった。この人、と決めたら一途だから。
他の人とも刺激を求めて恋に落ちる、なんてありえない。考えもつかないわよ。
お兄ちゃんも今のお嫁さんへの態度を見てると、相当一途よね。
でも、あなたは少し違うかもね。
お父さん側の、そっちのよく分からない血が強い気がする。」
なんて。
そんなことを言われるなんて、驚きのあまり固まってしまった。
頭を後ろから思い切りガンと殴られたような気持ちがした。
「さすがにそんな言い方ひどいんじゃない?
私とお兄ちゃんがどっちの血が強いだとか、分ける必要ある?すごく嫌な感じ。」と伝えると、ハッとして母は口ごもった。
その後なんとなく他愛ない会話をしてそれとなくやり過ごして、母と別れて自宅に帰ってから、しばらく私はひとり心のなかで怒っていたけど、
思い返すほどにそれはどんどん悲しみに変わっていった。
同じ女性として、母から私は「よく分からない」「理解できない」「気持ち悪い」存在だと思われているのだという事実がつきつけられたように思う。
母も母なりに、これまでいろんな思いがあったりするのかもしれないが、こんなふうにいたずらに傷つけるようなことを言われるのは納得いかない。
閉じ込めている黒い箱の中のどろどろした気持ちが飛び出してしまいそう。
必死におさえて。
おさえて…。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
母娘とはいえ、
いや、母娘だからこそ。
受け入れられない、解り合えない部分があるのかもしれない。
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