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私の愛する金属バット

私はほんの1年半前まで、お笑いに全く興味がなかった。

むしろ、少し嫌いだった。

私の両親はお笑いやバラエティー番組を嫌っており、お笑い芸人がテレビでおちゃらけている映像が流れると、「見るに堪えない」といった感じでNHKにチャンネルを変えてしまう。

そんな家庭で育ったというのも少なからず影響していると思う。

そんな私がどうしてお笑いを、金属バットを知ることになったのか。

それは思いがけない出会いだった。

1年半ほど前のある日、何気なくTwitterのタイムラインをスイスイと上にスワイプしながら見ていたときのこと。

たぶん、なんとなくフォローしていた数多くのアカウントのなかの誰かが「いいね」したのだろう

見ず知らずの他人(当時の私にとっては「何?誰?」状態)のツイートが目に飛び込んできた。

金属バット小林:

4/10に無理矢理入れられたファンミーティングはブッチします。

まだしばらく芸人でいたいので。

苦情は弊社まで

金属バット友保:

ファンミーティングもバスツアーも絶対にやりたくない!決まっても絶対行かへん!てちゃんと言うてたのにぶっ刺してきたので明日のファンミーティング絶対に行くかいなクソが!

---という2つのツイート。
誰かわからないが芸能人っぽい人が、所属事務所の企画してるイベントに「絶対参加しねぇぞこの野郎!」とブチギレている。

ただならぬ雰囲気に驚くと同時に、この人たちなんでそんなに怒ってるんだろう?と、なぜかものすごく興味をもった。

調べてみると、どうも吉本興業に所属しているお笑い芸人さんらしい。

お笑い芸人さんは人気商売の一面もあると思っていたのに、この人たちはものすごい尖りようだ。イベントの企画者に本気で怒っている。

彼らのツイートを遡っていくと、少しずつ彼らの主張の意図が見えてきた。

俺たちはアイドルじゃない!見た目やプライベートを売っている訳じゃない。漫才で真っ向勝負してんだぞ、なめんな!

そういう思いがビシビシ伝わり、痺れた。

あぁ。これが本物の芸人さんか、と。

また、彼らのファンのみなさんがファンミーティングを楽しみにしてチケットを取っていて、

「そんなこととは知らず、チケット買っちゃいました!ごめんなさい!ファンミーティングには行きません!」といったコメントをしているではないか。

ものすごい盲信ぶり。チケットを買ったのに謝っている。

でもそれは、そのイベントが彼らの意に反するものであると気づかなかったことをファンとして恥じている趣旨のコメントばかりで、金属バットのことを本当に好きだからこそだった。

そういったコメントに対し、あんなに尖って凶器のようだった金属バットのお2人の返信はとても優しく温かかった。

このやりとりを見て、YouTubeで金属バットを検索して、動画を見て。

みるみるうちに私は2人の面白さに引き込まれていった。

彼らはきっと、今よりももっと売れてもてはやされても、一番大切なところは変わらず貫いてくれる。

やりたくないことは「やりたくない!無理!」とあっさり拒否して、自分たちの面白いと思うことを魅せ続けてくれる。

そういう男らしさが彼らにはある。一本筋が通っていてものすごくかっこいいのだ。

「わしら社会の底辺ですよ、へへへ」とへらへらしながら、本当は誰よりも気高く仕事している2人の面白さが、もっとたくさんの人に伝わってほしい。

仲の良い男子高校生みたいな2人が、ずっと楽しく漫才できますように。

今となっては私もすっかり 「チケットを買ってごめんなさい!」 と謝る盲信的なファンの一味だ。

これからもずっと2人のファンでいたい。

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