露天の月

地下道で幻想を売ってた老人が蒔いた意味が
小脳テントの暗室で現像され始めた
橙色のランプは捥ぎたての憂いを帯びて
涙の温度に似ていたよ
雨宿りしている気が狂った騎士の顔貌で
龍を倒すと意気込んでいたけど
地球を何周も出来る程の血の川を渡る船の帆の色は何がいいかな
川底の小石を裸足で踏み締めた時
目に見えてない乗組員が
他にもいることを確信した
露光量が多すぎたフィルムを掌に翳したら
逃げ続けてきた意味が浮かび上がった
ほらね、こんな風に言いたいこと沢山あるけど
郵便配達員じゃないから
上手く届けられてないかも知れなくて残念だな
偏頭痛が魅せた提灯の中に住んでた蛍
まだ光っていたら嬉しいな
もし闇に途絶えていたとしても
今の私なら一目で見つけられると思う
君が蒔いた言葉が
意味となって意識の底を浮遊し始めた
繁華街が息を吹き返す時間だ
三つ数えたらあの公園に行こう


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