20210501 GW本
あいかわらず新居の回線状況が悪い。固定回線をひいたけど、連絡によると5月末の開通になるそうなので、もうあきらめてステイホーム・オフラインライフを満喫します。
学生時代(1か月前まで)にむやみに買い集めていた積み本たちを消化しています。そのうち数冊をメモします。
通勤時間でも消化できてるので本棚がすっきりしてきました(心理的に)。
・泉鏡花『高野聖』
浪人時代に買ってたやつですね。鏡花たむ萌え~つって買ってたこの短編集だけど、表題作のこの一流の語り口と情景表現、ひきずりこまれて読み切ってしまいました。
まず敦賀行きの汽車で掛川あたりから乗り合わせた坊さんとわたし、という設定がいいもんな。車窓眺めたり弁当のまずさを愚痴ったりしてるうちに列車は北上し、宿に到着して夜の消灯後、ぽつりぽつりと怪異の話が始まる。坊さんの長い語りにひきずりこまれながら、一息ジョークを挟むたびに、危ない、敦賀の宿の情景に立ち帰る。そしてまた話に戻る、信州の山道の怪異談に戻る……
この往来の中で、わたしが本を手に取ってるこのワンルームの風景とか完全に忘れてしまうんだな。
こことか修学旅行の夜じゃんもう・・・(雑)
・川床優『漱石とデザイン』
古本。武蔵野美大での学生向けの講義録とのこと。平易さと論立ての誠実さを両立している。
建築の職能に憧れつつも、最終的には文学の道を選び取ることになった漱石の足跡を一覧して、文学をこころざすひとにも建築・デザインをこころざすひとにも職業の価値を再認識させてくれる、良い講義になっている。もちろん文学も建築もやらないわたしにとってもね。
制約条件のなかでできるだけいいものをつくろうとする営みがデザインである、という言い切りはすがすがしい。わたしも今後職業を訊かれたら○○デザイナーですと名乗っていこうかな。
・パオロ・ジョルダーノ『コロナの時代の僕ら』
覚えているでしょうか。ちょうど一年前くらいに早川書房のnoteで無料公開されていた文章で、その書籍版を買っていました。
あとがきは残ってるのね。
2020年度も何度かめくった本だけど、久しぶりにまた手に取った。
静かに問題を切り分けて、静かに分析していくこの本の態度に習いたかったけど、まあ全然だめでした。2020年。
自分なりに理屈づけて立てたはずの、もし自分に罹らなくても知人に家族に罹らなくても知ってる店がばたばた潰れていってしまっても自分だけは感染対策をするんだ、という決意は、結局もうぐずぐずに鈍ってしまって。で、この理論づけの根っこの、より貧しい地域・より貧しい人々の罹患や重症化について自分は到底責任を取れないからこの都市でできるかぎりの対策を取り続けるんだ、という意思も、現在インドでぼこぼこ人命が失われてるニュースをみてもクリックすらしなくなっちゃったありさまで遠くかすんでて、もうフィードバックが壊れてて……どうすればいいだろう。
さて、2021年になっても、ぜんぜん構わず状況は続くらしい。どうすればいいですか?自分の行動制限をおこなうことも、思考の一貫性を保つことさえも、到底できることではないと知ってしまった。なんもわからん。ただもう空気に乗って、外に出ることにしてみたり、ひきこもってみることにしたり、空気を読んでうごいてる。