見出し画像

コンセプトアルバム『平凡』

第1章 『平凡』以前、以後。のドレスコーズ


コンセプトアルバム『平凡』

 

 『平凡』は、ごく近い未来社会で発表されたとあるバンドの作品、という体をとったコンセプトアルバムである。『平凡』の舞台である近い未来では、資本主義が破綻し、「個性的」であることが否定されている。真の平等を目指し、「個性的」な言動や、ファッション、知的財産である本や芸術作品などの個人所有が罰せられるノーマリズムの社会で生きる、主人公・平凡さんは、無味おもしろみのない「没個性」のグレーのスーツで髪をオールバックに整え、ミーミストであることを隠しながら、この社会で生きている。そんな平凡さんの物語を、「普通」、「ノーマル」、そして「消えていく文化、消えていく場所」をテーマとして描いた作品である。

 平成で最も売れたシングルは『世界に一つだけの花』だという。

≪ NO.1にならなくてもいい もともと特別な only one ≫ というメッセージに誰もが背中を押され、自分の悩みや苦労を「個性」として解決する時代であった。

 「自分探し」がテーマの時代で、「個性」は探せば見つかり、「個性」がなくてもお金で買える時代になった。誰もが簡単に手に入れられる「個性」で自分を「個性的」だと主張する時代の大きな転換期に発表された『平凡』は、「ぼくらはこれからどうなるんだろう。」という、問題提起作でもあった。 



***************



*次のページ→


*論文の公開中のページは、もくじからご覧いただけます。




いいなと思ったら応援しよう!