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単身赴任先『三文オペラ』

第3章 空間論として紐解くドレスコーズの芸術性


単身赴任先『三文オペラ』

 

 志磨は『平凡』で「演劇」の季節をむかえると、はじめて部屋の外に出た。自分のバンド以外の集団行動にはじめて参加し、「音楽監督」という肩書きで臨時に所属したのが、『三文オペラ』というカンパニーである。
 バンドに比べるとかなりの大所帯のカンパニーで作り上げた音楽劇『三文オペラ』で、志磨は音楽監督として自らの役割を果たし、自分の作品と呼べるほど、この「空間」で濃密な時間を過ごした。

 「演劇」とは、上演期間中だけ存在する「仮設空間」である。

 “meme” TOUR 終幕後、平凡さんがどこかへ消え去って行ったように、『三文オペラ』の登場人物たちもまた、千秋楽の終了とともにいなくなってしまった。

この「仮設空間」はもう跡形もなく消滅し、記憶のなかにしか存在しなくなる。

これは志磨とぼくらがはじめて経験した演劇「空間」の消滅であり、音楽劇『三文オペラ』の終幕後、ぼくらの手元に遺ったのは、『ドレスコーズの≪三文オペラ≫』という作品だけだった。


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