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『PLAY TOUR』で行われた実験

第2章 再考・『PLAY TOUR』


『PLAY TOUR』で行われた実験

 

 2018年5月~6月、音楽劇『三文オペラ』の劇伴集『ドレスコーズの≪三文オペラ≫』のリリースツアーとして、“dresscodes plays the dresscodes”(以下、『PLAY TOUR』)が開催された。
 

 『PLAY TOUR』で志磨は、自身の過去の楽曲を再び組み合わせることで、音楽劇『三文オペラ』の「サブテキスト」(台本には書かれていない設定)として新たな物語を生み出し、若き日の主人公マクヒィス、そしてジェニーを演じた。
 ロックンロールバンドのステージに演出・演技を取り入れ、自身の楽曲で音楽劇が演じられるという、この前代未聞の 『PLAY TOUR』が計画された経緯については、ファイナル公演(会場:新木場studio COAST)を収録した映像作品『どろぼう“dresscodes plays the dresscodes”』≪グランブーケ盤≫ のパンフレットに詳しく綴られているが、このツアーは『三文オペラ』で「演劇」の分野に足を踏み入れた志磨が試した、ある「実験」でもあったのだ。

ぼくが思いついたのは、この(「サブテキスト」の)理論を「音楽」に持ち込む、という実験です。ストーリーを与え、設定を変えれば、聴きなれた楽曲もまったく違った意味に響くか、どうか。
 つまり、自分が過去に発表した楽曲の歌詞を連ねて一本のストーリーをつむぎ、まったく耳新しい音楽劇として再生させよう、というだいそれた計画です。
(『どろぼう “dresscodes plays the dresscodes”』≪グランブーケ盤≫ パンフレット)

 志磨の「実験」の成功は、言うまでもなく、映像作品『どろぼう “dresscodes plays the dresscodes”』にもおさめられている。
 過去に発表したアルバムを解体し、新たなストーリーを与えて組まれた『PLAY TOUR』のセットリスト、志磨の演技によって歌われた楽曲のすべては、今まで聴きなれていたそれらとはまったく違って新しく聴こえた。そして、新たな意味を持った楽曲が連ねたストーリーと、その裏に隠されたいくつもの細かな意味もまた、何通りにも解釈が可能であり、『PLAY TOUR』で演奏された過去の楽曲を聴き返し、歌詞を読み返しては意味を考えるという日々がしばらく続いた。

 それはまるで「演劇」を観たあとのようでもあった。



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