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『三文オペラ』もうひとつの「サブテキスト」

第2章 再考・『PLAY TOUR』


『三文オペラ』もうひとつの「サブテキスト」

 

 では、志磨の楽曲にどのような特徴があるのか。それは『PLAY TOUR』や、志磨の楽曲をただ聴き返すだけでは、『PLAY TOUR』成功の直接の理由としてつかむことはできなかった。
 そこで、本研究でも志磨の過去の楽曲のみでストーリーを構成できるかどうか、実際にストーリーを制作する実験を行うことにした。
『PLAY TOUR』で、アルバムを解体し、違う組み合わせで演奏された、よく知っている楽曲群が、まったく違和感なく「演劇」として成立していたように、志磨の楽曲は『PLAY TOUR』のストーリーだけでなく、何通りものストーリー構成できる可能性があるはずだ。
 

 今回の実験は、『PLAY TOUR』同様に、『三文オペラ』の「サブテキスト」を、志磨の楽曲のみで制作する。KAATでの演出・谷賢一、音楽監督・志磨遼平による『三文オペラ』、そして、『PLAY TOUR』のストーリーを参考に、マックとメリーのもうひとつの「サブテキスト」として、『PLAY TOUR』とはちがう ≪PLAY LIST≫ によって別のストーリーを生み出すことができるかどうか、試す実験を行う。
本研究でのこの実験を、以下 ≪PLAY LIST≫ と呼ぶ。

 この実験 ≪PLAY LIST≫ で完成させたもうひとつの「サブテキスト」が、以下のリンクの『ベイビー・ブルー&ロンリー・ボーイ』である。

 マックとメリーを主人公に、志磨の過去の楽曲のみで構成された ≪PLAY LIST≫ によって、『PLAY TOUR』とは違うストーリーの「サブテキスト」が成立していることを、確認いただきたい。

 

 もうひとつの「サブテキスト」のストーリー制作は、思いのほか容易に組むことができた。『三文オペラ』と『PLAY TOUR』を観て持った、マックとメリーをはじめ、登場人物に対しての勝手なイメージをもとに想像すると、脳内にすでにインプットされている志磨の楽曲から、イメージに合った楽曲が、楽曲のほうから次々と「ひらめき」としてやってきて、簡単にストーリーをつむいでいくことができた。
それを ≪PLAY LIST≫ として編集して聴き返すと、自分だけの『PLAY TOUR』が脳内で再生される。
『三文オペラ』の「サブテキスト」というテーマであと何通りかの ≪PLAY LIST≫ を組むことも可能であるし、テーマを変えれば、志磨の楽曲のみで無数のストーリーを構成することができるという、楽曲の可能性に気付くことができた。

 この実験によって、すべての楽曲に共通するいくつかの特徴についてもつかむことができた。この特徴こそが、志磨の楽曲だけの組み合わせで何通りものストーリーを組むことができる理由であり、『PLAY TOUR』を大成功に導くことができた、最大の勝因である。


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