台湾・台北 Computex & InnoVEX2019。「ちょっと手を伸ばしたら触れる未来」の見本市
今年も5月28日から台湾・台北で開催された、アジア最大のIT見本市「Computex2019 & InnoVEX2019」。いわゆる未来技術のデモンストレーションをする場ではなく「今年の年末に市場へ投入する製品の、具体的な商談をする場」と事前に聞いてはいましたが、実際に会場入りしてみるとその視点はもちろん、米中貿易戦争をめぐって自分たちのポジションを今後どうするか、そのためにめざすべきプロダクトの方向性を探る台湾企業の姿も、また見えたように感じました。
事前に発表された今回のショーの「ベストチョイスアワード」では、ZenBookの新型や高性能基板など、手堅くパワーアップした新製品が幅広く選ばれましたが、展示会場には個性的な製品群があふれていました。
高性能コンピューティング競争、日本は10年遅れ?
会場で目に付いたのが、最新鋭の高性能ゲーミングマシンの数々です。MSIのゲーミングラッピトップや、高精細の専用ディスプレイなど、世界的なe-Sportsの盛り上がりを受けて、各社のゲーミングデバイス新製品が続々登場。「Republic of Gamers」「Made for Gamers & Creaters」といった標語も掲げられていました。会場で「日本は、一周どころか10年遅れだ」と言われてしまうほど、このジャンルでは差がついてしまっているようです。会場では、e-Sportsのチャリティ大会も開催され、展示会を盛り上げていました。
「水冷PC」を中心にした究極のゲーミングセットの提案。確かに空冷より水冷が機能として優れていますが、ここまでのスペックが必要?とびっくりです。
AIや5Gなど、最新技術の紹介も
ストレージ&システムソリューション、コンポーネントなどBtoBがメインの国際展示会ではありますが、今年は「AIoT、5G」など新世代技術も開催テーマとして掲げられ、カンファレンスでは世界的企業のTOPから、これら最先端のテーマについて講演がありました。場内には自動運転やAR/VR装置のデモなど最新技術の展示も多く見られ、来場した高校生たちが熱心に説明に聞き入っていました。この中から、次世代の台湾技術界を担う人材が育ってくるのでしょう。
ロボテックスでは、まだ日本にも勝機が?
ロボテックスのジャンルでも、台湾や香港の企業からの出展が見られました。ベストチョイスアワードを獲ったASUSの「Zenbo Junior」は、コミュニケーションサービスロボとしてホテルサービスへの展開を提案し、そのほかにも、ロボットと教育の組み合わせといった展示もありました。先日の#日経COMEMOイベントで、現在「LOVOT(ラボット)」を開発中の林要さんから「ロボットの目の形を変える必要はあるのか」という話を聞いたばかりでしたが、コミュニティロボットのジャンルではアトムやドラえもんなどを通して人とロボットの距離が近い日本に、人と心を通わせるロボット作りとは?において、まだまだ世界と勝負できる力がありそうです。ロボットの他にも、自動化レジやスマート農業の展示など、今までのITハード中心から、ソフトウェア分野への展開を探る台湾企業の動きも興味深く見てきました。
InnoVEX2019では、イノベーションコンテストが
今年も開催されたInnoVEX2019の、スタートアップ企業が自分たちの技術力を競うピッチコンテストでは、決勝にのこった10社のうち半分が、バイオ・ヘルス系のスタートアップでした。優勝したMedFluid社は、AMR(抗菌薬耐性菌)に素早く対抗する精密医療技術をプレゼンし、ここにもハードウェアからIT技術を駆使したソフトウェアへという産業構造の変化が現れているように思いました。
国をあげてスタートアップを応援する、海外勢
世界各国のバイヤーが集まるこのComputex2019 & InnoVEX2019には、フランスやオランダ、フィリピンや韓国など、世界各国が自国のスタートアップ企業を集めたブースを構え、カンファレンスも開いて自国企業の売り込みを図っていました。今回視察して残念だったのは、日本からも魅力ある技術を携えて多くの企業がブースを出していたのですが、広い会場に分散していて気づかず、帰国後そんな展示もあったんだ、見たかったというケースがあったことです。
自国のスタートアップ企業の成長性をアピールする、フランス政府関係者。
いま日本の産業・学術界では、有望な技術・研究を政府が選んでそこへ集中的に資金を投資する動きがあり、それに対して広く基礎研究を重視すべきという反論もおきています。華やかに見える分野はあくまで現在の基準であり、将来のさらなる発展を保障するものではありません。今後日本の将来を担う技術や人材を応援するためにも、このComputexのような世界的に注目される展示会の場で、日本も集中的なブースを設置して積極的にアピールし、スタートアップ企業の海外展開への後押しと、それら新興企業への投資の呼びかけを行っていくべきではないでしょうか。