スペース・オペラというジャンルを打ち立てた、20世紀SFを代表する大長編
【7日間ブックカバーチャレンジ 5日目】
『火星のプリンセス』
アメリカ南北戦争に敗れた南軍大尉のジョン・カーターは、アリゾナの砂漠から見上げた火星へと突然体を吸い上げられ、気がつくと苔の生えた火星の大地に横たわっていた。そこは空気があり、カーターと同じ容姿の赤色人や、巨大な緑色人たちが生存をかけて争う過酷な世界だった。カーターは緑色人の手から赤色人の王女、デジャー・ソリスを救出し、火星世界の滅亡を防ぐべく、剣と冒険の旅を続けていく…。
サイエンス・フィクションブームの立役者となった、バローズ
エドガー・ライス・バローズ著の『火星のプリンセス』は、1917年にアメリカで単行本が刊行されて大ヒットし、19世紀後半からジュール・ヴェルヌらによって花開いたサイエンス・フィクションの世界観に冒険アクションを加えた、いわゆる「スペース・オペラ」シリーズを確立させました。「異世界転生ジャンル」の、はしりとなる作品と言えるかもしれません。
1970年代初め、バローズの火星SFシリーズや「宇宙のスカイラーク」シリーズが、私の周囲の中学生達で大ブームになりました。当時は少年マガジンで大伴昌司氏が、未来都市や奇想世界を描いたグラビアを誌面で展開して、絶大な人気を得ていました。
またそのころNHK少年ドラマシリーズでは「タイムトラベラー」(原作『時をかける少女』筒井康隆)、「つぶやき岩の秘密」(原作・新田次郎、主題歌は石川セリ)といった、現在にも影響を残す作品群が相次いで放送されました。こうした未来ブームや、冒険サスペンス物語への指向という流れにのって、『火星のプリンセス』も日本の若年層に読者を増やしていったのでは?と、ふり返っています。
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