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経済的に破綻した翌月に子供が生まれた夫婦の話し。(その18)技

この物語は私達夫婦が13年前から今までに経験した実話を基に、登場人物などは架空の設定で書いております。
また内容も一部脚色しておりますので全てが正しく記載されているわけではありません。

 私達夫婦はこの物語を通じてたどり着いた心境をお伝えし、皆様のお役に立てればと考え、二人で相談をしながら書いております。


金川の技
 金川の子持ち鮎は確かに美味かったです。
小ぶりの鮎は焼き具合と塩梅に素晴らしい職人技を感じます。
そしてその最高の鮎を頭から骨ごと食べるのです。
一匹食べれば、なぜ沢山の人が金川にリピートするのかが解ります。

 金川からの帰り道、来る時に見つけた数台の車が停まっている他の鮎のお店との差はなんだろうと素朴な疑問が生まれました。
そして村下さんは言った「金川を真似ればきっとうまく行く」この言葉が簡単では無い事はすぐ理解できました。
私はもう一度にここに来よう。
そして金川さん以外のお店でも食べてみようと考えました。


村下さんの技
 妻のところへ戻ると、妻も義母も秘湯温泉の切り盛りでとても忙しそうでした。
しかも妻は つわり で少し気持ちが悪そうな顔をしていました。

つわりの症状


 その顔を見て金川の事は後で話そうと思い、先に秘湯に入ろうと番台にタオルもらいに行く私の携帯が鳴りました。
電話には今日登録したばかりの村下会長の部下、鮒男の番号が表示されていたので、あっと思い電話に出ると声は村下さんの声がしました。
「もしもし、あんたしゃん?村下や」「あんたしゃん森山達也の従兄弟なんだって?」と金川と全く関係のない話を突然ふってきました。
「いやーびっくりした、一昨日やけど森山君と会合で一緒におったんや」と声を弾ませた。

 私の従兄弟達は親たちがつくった同族会社の役員をしています。
かなり大きな商いでしたの、地元の経営者や金融機関の人達には友人知人が多いのです。
私はこの同族で会社を経営するスタイルが好きではありませんので従兄弟達と同じ会社には入社はしませんでした。
また従兄弟達の苗字は私の母方のなめです。
私が名前を名乗ってもファミリーだとわかりません。
従兄弟との関係を知っている人は多くありませんので、たぶん北野社長から聞いたのだと思いました。
「ますますご縁を関じる、あんたしゃんどうや金川いってくれた?」
従兄弟効果でしょうか村下さんは私を「きみ」とは呼ばず、この電話からは「あんたしゃん」と親しみこめて呼びだしました。

 私は気持ちを伝え「もう一度、金川の近隣の別の店にも行てみたいです」と言いました。
すると村下さんは「そりゃそうだ」「ワシもそう思うからすぐ行ってきてくれ」とまるで目の前で「いいね」と親指上げて、GOODサインをだすように私の背中を押します。
これこそ一瞬で空気を和ませる村下さんの技です。

いいね

そして私はまた蟻地獄の縁を歩くアリのようになっていたのです。

つづく

 

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