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短編小説集『空の飛び方』

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短編集
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#恋愛小説

 僕は、君に送る言葉を探している。なぜなら最近、君が冷たくなったから。  目覚めてすぐに、スマホの通知をみた。  まだ、夜は明けていない。暗闇の中にスマホの画面が浮かび上がる。通知がないものを開いたところで、届いているはずはなかった。  ベッドに入ったのは0時を少し回った頃だった。それから、目覚めるのは三度目。僕は毎夜、こんなことを繰り返している。  待っているのは、付き合ってひと月になる彼女からの返信だった。  本当なら、電話をかけて声を聞きたいくらいだが、僕は彼女の電話

今日一日と一週間分のこと。

 『私は、早瀬孝太の母親です。突然の手紙に驚いたことと思います。  毎年夏休みにはこちらに来られますが、今年はいつ頃になるのでしょうか。  孝太が、あなたに会いたがっています。あなたから声をかけて、いろいろお話をしてもらえませんか。  あの子があなたに会えるのは、今年が最後になるかもしれません。』                  ☆  小学生のころ成美の両親は離婚をした。  小学四年から六年までの間、成美は高知で過ごした。成美の母が実家に身を寄せたのだ。  そこで、早瀬

彼女の待ち人

 僕は、同期の女性二人に誘われて職場近くのワイン酒場に来ていた。  金曜の夜には、ふらっと行っても入れないと聞いていて、三人で予約をいれてあった。  入ってすぐ漂ってきた、焼けたチーズの香りに食欲をそそられた。肉の焦げ目の匂いもする。  外からはこぢんまりした店にみえたが、カウンターや相席用の大テーブルもあわせて意外に客席がある。評判通りの賑わいで、僕らが店に着いた時間には、すでに八割ほどが埋まっていた。店内はBGMをかき消すほどの明るい話し声が溢れていた。  木肌をふんだん