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ベートーヴェンのアトリエ

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コンビニでバイトをしている大学生佐々原律はバイト先にいつも買い物に来るサラリーマンにほのかな思いを寄せていた。気むずかしそうな見た目から、律はその人にベートーヴェンさんとあだ名を…
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#恋愛小説部門

ベートーヴェンのアトリエ (一)

ベートーヴェンのアトリエ (一)

あらすじ コンビニでバイトをしている大学生佐々原律は、バイト先にいつも買い物に来るサラリーマンにほのかな思いを寄せていた。気むずかしそうな見た目から、律はその人にベートーヴェンさんとあだ名をつけていた。ところがここ数ヶ月、姿をみかけない。バイトを辞めようかと思っていた矢先に、久しぶりにベートーヴェンさんが買い物に来た。しばらく見ない間に雰囲気が随分変わっている。その日のバイト帰りに表で声をかけられ

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ベートーヴェンのアトリエ (二)

ベートーヴェンのアトリエ (二)

 いつもより早起きした。寒いけれど、苦にならない。せめて、スカートにしようとロングの巻きスカートを選んだ。化粧は、不評だったから色つきのリップだけにする。今日は、髪型をサイドアップにした。
 六時に下で待ち合わせている。人見さんは車を出しておくと言っていた。
 家族の車以外に乗ったことはなかった。考えたら、緊張してきた。少し早いけれど家にいても落ち着かない。ブーツを履いて外に出た。
 マンションの

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ベートーヴェンのアトリエ (三)

ベートーヴェンのアトリエ (三)

 スペイン語の特別講義を受けるために大学へ来ていた。テーブルの上に伏せて置いてあるスマートフォンが短く震える。確認すると人見さんからメールが届いていた。今は小さめの講義室なので教授も近い。だけど、気になってメール画面を開く。
『三日分の報酬を振り込んでおきました。ご確認下さい。』
 大きなため息をついてしまった。続けてメールが届く。今日の予定を訪ねられた。今日も会えると思うと、一転、心がおどる。午

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ベートーヴェンのアトリエ (四)

ベートーヴェンのアトリエ (四)

 免許の学科試験を受けた日の夜、フレンチレストランを予約してくれていた。
 合格したからよかったものの、落ちていたら残念会になってしまうところだった。
 少し大人っぽい服を着るように言われ、髪もアップにした。買ってもらった化粧品を使った。かかとの高い靴も、ほとんど履いたことがなかったから、歩くのにも苦労する。
 入ったときから場違いな気がした。お店の人に、椅子を引いてもらってから座るのも初めてで、

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ベートーヴェンのアトリエ (五)

ベートーヴェンのアトリエ (五)

 毎日、一回は車の練習をさせられた。上達しないので人見さんは少し困っている。
 それ以外の時間、人見さんはほとんどアトリエにこもっていた。夕食だけは一緒にと、その時間になると帰ってくる。食べるとまた出かけて、遅くまで描いているようだ。わたしの暮らしていた部屋に、泊まり込むこともあった。
 それほど淋しくはなかった。人見さんが絵を描いている。その様子は、みていなくても鮮明に思い浮かんだ。
 歌を一つ

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ベートーヴェンのアトリエ (エピローグ)

ベートーヴェンのアトリエ (エピローグ)

 SNSに配信を告知した。
 画面にはギターの絵が表示されている。
『久しぶりすぎて、見落としかけた』と、早速コメントがはいる。
 誰も来ないかもしれないと思っていた。
『どうして無言?』
 弦をて弾いてこたえる。
『エレキなんだ』
『直接つないでる?』
 違ったけれど、かまわなかった。
 コメントが増えていく。懐かしい名前が並ぶ。
 一度、開放弦で強めに鳴らした。ノイズがひろがる。
『カッコいー

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