Mユニット(時女一族)vsミハル&ネオマギウス

 紛争が続くベルギスタンにて、Mユニットと時女一族が初めて経験した初の巫(魔法少女)同士の戦いは砂漠の厳しい環境により、痛み分けに終わった。

 立つことすらままならない砂地、身体を痛める砂塵は日本の山岳地で戦ってきた時女一族にとって勝手が違い過ぎたため最悪のコンディションでの戦いだった。謎の組織〈シンボル〉に雇われたネオマギウスの面々もまた都市部での戦いを主とするため同じだった。双方が結局魔力と弾薬を消耗したため撤退。

 しかし、一部始終を現場に居合わせたCNNの記者ロナルド・フェイガンにより撮影されており、うっすらとしたシルエットではあったものの、巫たちの姿が全世界に知られることとなった。

 有志連合軍司令部のある〈カハ〉国際空港に戻り、帰還直後に中隊長の速川2等陸佐の配慮により最優先でシャワーを浴びることを認められた時女一族の面々。

 ちはる達が身体にこびりついた砂塵を洗い流して喜んでいる間も、シャワーを浴びる間も静香の心中は穏やかではなかった。「自分がやり合ったあのスズラン模様の甲冑を着た〈巫〉、私と同じ時女一心流の使い手だった。いったい何者なの?」それと同じ疑問を、装備の整備にあたっていたMユニットの隊員たちも抱いていた。

 翌日、有志連合軍司令部から昨日の戦闘で取り逃がした部隊が集落跡地に逃げ込んだと伝えられ、これを追撃するように命令される。

 命令を受領した直後、中隊情報幕僚の徳大寺1等陸尉は疑問に思った。

「本来この局面では自分たちを送り込むよりも空爆を要請したほうが良いのではないか?」この時、一同はどうしても自分たちを戦わせたいという意図が何処かで働いているのでは?という可能性に行き当たった。

 目的地の村に到着。全員が巫たちも含めて装備に防塵措置がほどこされたほか、付け焼刃ではあったが砂漠の地形に合わせた動きや足さばきを特訓で身に着けて再戦。村に入った直後に待ち伏せを受けるが、日ごろの訓練の成果もあり持ち直す。

 一方的な奇襲戦法で米軍の機械化歩兵1個中隊をつぶせるネオマギウスも自分たちの正体を最初から知っている上に、協同戦闘の経験もある時女一族とMユニットには苦戦し逆に抑え込まれる。やがて、静香・ちはる・すなお の三人と安宅1尉の小隊がミハルを包囲することに成功した。

『良し!他の敵はフォーカス4、5,6(旭、涼子、ちか)及びB(ブラヴォー)小隊が抑えている。フォーカス1(静香)は2(すなお)3(ちはる)およびA(アルファ)小隊と連携してその〈巫〉を捕獲しろ!』

「捕獲......?」

思わず、静香は呟いた。戦いの中ですっかり我を忘れていたのだろうか?

『命令にあったでしょ!ブリーフィングを聴いてなかったの!?』

緊迫した状況故か、いつもは気のいいお姉さん肌の安宅1等陸尉の声も荒い。 

 一方、そのすぐ近くではCNNのフェイガン記者がカメラマン、現地のガイド兼運転手と共に潜んでいた。カメラで魔法少女同士の戦いを中継しようというのだ。

 フェイガンは確信した。半世紀の間に実戦に出なかった日本の軍隊、それも秘密のベールに包まれた特殊部隊が戦闘に参加するだけでもセンセーショナルだ、それにアニメに出てくるような戦う少女たちを連れている。これは前代未聞のスクープだと。

 機材を立ち上げてスタジオに中継しようとした直後、頭上を大きな影がよぎった。

 見上げてみる。航空機のようだが、ずんぐりとした機種に細い胴体、機の後部につけられた単発のプロペラにV字の尾翼は下向き。主翼は直線翼。間違いなく米軍が保有する無人偵察機RQ-1プレデターだった。

 それに最も早く気付いたのは村落から数百メートル離れたMユニットの移動本部である指揮装甲車に居た、車長の陶見(すえみ)2等陸尉だった。

 対自爆ドローン用に搭載していた低空用レーダーが接近する機影をとらえて、それをテレスコープで拡大。IFFでNATO軍を示していた。

「嘘だろ!?NATOのRQ-1プレデターだ!?」

それを聴いた速川2佐もコンソールを覗き込んだ

「どうしてこのタイミングで!?」

隠れて様子をうかがっていたフェイガンは毒づいた

「糞!邪魔しやがって」

「いいのか?撮ってて?」

カメラマンが構えたまま尋ねる。

「構わない!この事実を世界に伝えるんだ!!」

直後にすぐ後ろで乾いた銃声がした。

そして銃口が、自分の後頭部に突き付けられたのを悟る。

横目で隣を見ると、カメラマンが倒れていた。

「戦乙女(ヴァルキリー)の戦闘は世界に伝えらえれるべきです」

「お、お前は.....」

声の主は自分をここに連れてきたガイド兼運転手だ。謀られた!自分たちを連れてきたのは、戦場で始末するためか!

男は続けた

「しかし、それは貴方によってではない」

「ううっ...ああっ!」

フェイガンが眼を見開いた直後、2発目の銃声が響いた。

スタジオでは、有志連合軍から提供された無人機のライブ映像が報道されていた。

『これは、有志連合軍の無人機から送られたライブの映像です。この少女たちは自衛隊の特殊部隊とともに現地に入ったとのことですが詳細は不明です。ベルギスタンの戦いは戦争の歴史、そして私たちの常識に新たな1面を書き加えることになるのでしょうか?』

 B(ブラヴォー)小隊と涼子たちにより身動きが取れなくなったネオマギウスの面々も無人偵察機に気付いたようだ。

「ねぇ、あれって!?」

〈シンボル〉から支給されたSIG MCX Rattlerを片手にはぐ無が指さした。

隣にいた時雨が答える。

「無人偵察機だ!カメラでこっちを撮影してる」

「じゃあっ!?」

「うん!知ったんだ!!世界が私たち(魔法少女)のことを!」

 二人は純粋に喜んでいた、自分たちネオマギウスの第一目標。〈魔法少女至上主義〉ーその一段階として世界にその存在を知らしめること。それが達成された、と。

 一方で、



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