HALO_PMSレポート もう一つの訓練/初陣

微笑ましき(?)訓練風景

「このクズども!とろとろ走るんじゃない‼」
周囲を山に抱かれたカミハマ郊外のUNSC/自衛隊合同特殊作戦基地〈暗号名「ホテルフェムト・ホープ」〉の特殊訓練キャンプにて、スパルタンB₋006 ソーの罵声が響いた。

「全く!何たるザマだ!お前たちは最低の蛆虫だ!ダニだ!この宇宙で最も劣った生き物だ‼」
ミョルニルアーマーと手にはM5アサルトライフルのライセンスモデル 蓬羽20式7.62mm自動小銃、右の太腿にはM6 12.7mm拳銃という完全武装の彼の周りをブーツにカーゴパンツ、上半身はランニングという出で立ちの、どう見ても10代前半の少女たちが泥まみれになって丸太を担いで走っていた。
 ソーの罵倒は続く。
「いいか!?クソ虫どもっ!俺の楽しみは貴様らが苦しむ顔を見ることだ‼ジジイの**みたいにヒイヒイ言いよって!みっともないと思わんのか!?」

そんな中、一人の少女が倒れた。水波レナだ。
丸太を投げだして、真正面から地面に倒れ込む。
「もう駄目……」

そんな彼女にソーは近づき手を差し伸べはせず、小銃を背負って両足を肩幅に広げ腕を組んで、フルフェイスヘルメットに包まれた頭を下に向けた。
「また貴様か……」
堂々と相手を見下すポーズをとると、地面に倒れ伏し、肩で息をする彼女に言い放った。
「所詮貴様の根性などその程度のものだ。もう走れんか?ならば、宿舎に一足先に返ってお前が大好きな史乃沙優希とやらのことでも思い出してくつろぐがいい」
そういわれると肩を震わせ始めた。もともと彼女は短気でわがまま、そのくせ負けず嫌いなのだ。それに、この状況で自分だけ宿舎に戻ってのんびりしていられるような神経はしていない。
また、彼女が好きなアイドルのことを引き合いに出されると猛烈に悔しさがこみあげてくる。
「くっ!うううううっ」
「もっとも、お前のような腰抜けが好きなアイドルのことだ。男に媚を売ることしか考えていない、アバズレなんだろうな……」
彼の一言に、レナはキレた。
「さゆさゆ の悪口を言うなぁっ!」
立ち上がってそのまま殴りかかろうとする。
見た目は華奢で体の一部だけ発育のいい少女でも、魔法で身体能力は強化されているので、がむしゃらにはなった拳でも脅威だ。
 腕を大きく振りかぶると会心の一撃を彼のヘルメットのバイザーに向けて叩き込む。しかし、動作が大振りだったうえに、動体視力を強化されているスパルタンにはあっさり見切られてしまった。
 体をひねってかわし、突き出された手首をつかむと、ぐっと引いて足を払い、もう一度地面に転がす。
「あうっ」
情けない声を出して倒れ伏すレナ。
もう一度腕を組んで足を肩幅に開き見下すポーズをとると、
「何度でも言ってやる。史乃沙優希はアバズレだ!違うというなら根性を見せろ‼丸太を抱えて10往復だっ」
「うううっ」
目に涙をため込みながらも、レナは立ち上がった。
「畜生!畜生!畜生!」
女の子にあるまじき汚い言葉を吐きながら、自分が落とした丸太を担ぐと、悔しさを根性に昇華させて駆け出し始めた。


次の過程は、背面での匍匐前進。
小銃を胸に抱き、両足と肩甲骨の交互運動で躍進する。これを水たまりの上で、起き上がれないように有刺鉄線が張られた場所でやるのだ。
シャツとズボンを泥水で汚しな、その冷たさが応える中で、少女たちは呻いていた。
一方で、ソーの罵倒は止まらない。
「いいかっ、今の貴様らは人間以下だ!名もなき**だ!俺の訓練に生き残れたその時、貴様らは初めて兵器となる‼それまで貴様らは**同然の存在だ‼!」

さらに次の過程、障害走。

険しい地形と、そこらかしこに設けられた障害物を越えてとにかく走る。
谷をふさぐように築かれた木製の柵。まるでジャングルジムのようなそれを疲労困憊の状態でよじ登り乗り越えていく。
「俺は貴様らを憎み軽蔑している。俺の仕事は貴様らの中から***を見つけ出し切り捨てることだ。勝利の足を引っ張る***なメス豚には容赦せんからよく覚えておけ!」

銃剣格闘。

彼女らは固有の武装を持つが、ソーと彼とともに彼女たちを鍛える陸上自衛隊の陸曹たちは様々な武器の扱いに習熟することを求めた。現代戦では原始的と言われる銃剣もその一つだ。UNSC海兵隊ではもう無いが、N4陸上自衛隊ではまだ使われており訓練が行われている。M5のライセンス生産銃である20式の、オリジナルに無い機能が着剣だ。
 銃口下に銃剣を取り付けられるようになっている。
 弾倉が外され弾の入っていない89式を持った少女たちが「ヤァっ‼」と声を挙げて、ターゲットであるダミー人形を突きさしている。
「笑うことも泣くことをも許さん!貴様らは人間ではない‼殺戮のためのマシーンだっ」
この訓練は実質、武器の使い方というより、気迫を養うことが目的だったりする。
 中には家が古武道をやっている関係から完璧な動作でこれができる者もいたが、体がまだ幼く銃に引っ張られるようになっている者もいた。
「敵を殺さなければ存在する価値もない。隠れて***しているのがお似合いの***なクズに過ぎん!」

武器点検及び手入れ。

全員が支給された小銃をマットの上で磨く。
その間も罵倒同然のソーの教育指導は止まらない。
「貴様らの恋人はそのライフルだけだ!貧相な***の***なんぞ、お前たちには必要ない。そのライフルを自分のボーイフレンドと思って精いっぱい綺麗にしてやれ‼」

下品極まりない言葉の数々だったが、疲労とある種のストックホルム症候群というべきか、徐々に少女たちはその言葉に慣れ始めていた。

うつろな目に不気味な笑顔をたたえて、小銃を油の染み込んだウェスで磨いている。
中には本当に名前を呼んで、愛をささやいている者もいた。

「えへへ、恭介ぇ……綺麗にしてあげるぅ…….」

「伊勢崎くぅん…..黒くて、硬くて、す・て・き♡!」

もう一つの初陣

 そうして運命の日がやってきた。

 コヴナントたちから見ればD-day、N4の人類にとっては審判の日''Doomsday"。

 陸上自衛隊ーーこの植民星の自治政府が保有することを認められた特殊すぎる名を持つコロニー防衛地上軍の駐屯地は騒がしかった。

第1軌道降下団第2中隊は、第6エアパッドに集合。第1戦術飛行隊と合流せよ。

第22即応機動連隊は直ちに出動、宝崎方面に向かい、第32普通科連隊と合流、防御線を構築せよ!

 通信やアナウンスを通して、駐屯部隊に矢継ぎに指示が飛ぶ。

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