前書き
道ではなく術へ
柔道、剣道、華道、茶道など様々な稽古には「道」が付きます。
「道」を究める、という言葉にも何かを学んで、修練を積み、会得する過程、道程を経てある程度の「域」に達するという意味合いがあるでしょう。
柔道は以前は一部を除いて柔術とされていた経緯があり、
嘉納治五郎は講道館の柔道を始める際、「術の小乗を脱して道の大道に」という趣旨で「講道館柔道」と名乗ったそうです。
このような「術」から「道」への移り変わりをみて甲野善紀が、自身の主宰する会を「武道稽古研究会」とせずに、「武術稽古研究会」とした理由を語っています。
日本製の高い評価
「品質に対する最も高い評価を得ている製品は、誰に聞いても日本製だと言う。」
これはAppleの元CEOスティーブジョブズがインタビューの中で語った話です。
実際には「日本人にはマーケティングの上手さに重点を置かない特徴があるが、それなのに」というセリフの後に続けて語られるいるのですが、スティーブジョブズのインタビューということもあってこの言葉を知っている人は多いでしょう。
この話を聞いたことがなくても日本の製品に対する評価の高さは多くの人が認識されているのではないでしょうか。
同インタビューの中でジョブズはその理由を「彼ら(顧客)は彼ら自身の受けたサービスや製品の品質による経験から」日本製を評価するのだと語っていますので、ここから日本人の特徴として、仕事、品質に対するこだわりが強い「職人気質」を想起することもできるかと思います。
私たちはこだわりの強い気質を持っているのです。
術の精妙な世界
ベテランの職人が持つ技のレベルは本当に目を見張るものがあります。
一例として、ミクロン単位の誤差も許されない、という話は印象的です。
術の精妙な世界は、術の精緻な世界といってもいいでしょう。それはまさに微に入り細を穿つ、術(すべ)であり、精緻なコントロールを要求される世界でもあります。
このような域に達するには、一朝一夕にというわけにはいきませんし、性急であってもつまづきます。急がず、慌てず、迷い、試しながら疑問を持ち、時間をかけて思考を重ねていく姿勢が肝心です。
幸い、有益な手がかり、ヒントを残してくれている先人たちがいます。有効な情報を使って私たちはどこまで精妙、精緻な「術」を追求することができるでしょうか。