パラグライダーの法的定義と小型無人機等飛行禁止法の対象となった経緯
平成28年5月23日施行の「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(小型無人機等飛行禁止法)」では、日本の国内法ではじめてパラグライダーが定義されに飛行禁止空域について法での規定がされました。
本頁では、改定された現行の小型無人機等飛行禁止法でのパラグライダーの定義と飛行禁止空域に関する記述を法令条文からコピペし、パラグライダーが同法の対象となった経緯の履歴として、同法立法に係る衆議院内閣委員会の会議議事録から関連部分の質疑と答弁を抜粋して魚拓いたします。
0.小型無人機等飛行禁止法の概略
法令条文に目を通したくない場合は、警視庁作成のこちらの資料を参照。
![](https://assets.st-note.com/img/1730350176-B5hO8mV9cesKxI4lU0F6DrTf.png?width=1200)
【ソース】
1.小型無人機等飛行禁止法でのパラグライダーの定義
重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(令和4年6月17日 施行条文より)
(定義)第二条
4 この法律において「特定航空用機器」とは、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第一項に規定する航空機以外の航空の用に供することができる機器であって、当該機器を用いて人が飛行することができるもの(高度又は進路を容易に変更することができるものとして国家公安委員会規則で定めるものに限る。)をいう。
5この法律において「小型無人機等の飛行」とは、次に掲げる行為をいう。
一 小型無人機を飛行させること。
二. 特定航空用機器を用いて人が飛行すること。
(対象施設周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止)第十条
何人も、対象施設周辺地域の上空において、小型無人機等の飛行を行ってはならない。
重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律施行規則(平成二十八年国家公安委員会規則第九号)
(特定航空用機器)第二条
法第二条第四項の国家公安委員会規則で定める機器は、次に掲げるとおりとする。
一 操縦装置を有する気球
二 ハンググライダー(原動機を有するものを含む。)
三 パラグライダー(原動機を有するものを含む。)
四 回転翼の回転により生ずる力により地表又は水面から浮揚した状態で移動することができ、かつ、操縦装置を有する機器であって、当該機器を用いて人が飛行することができるもの(航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第一項に規定する航空機に該当するものを除く。)
五 下方へ噴出する気体の圧力の反作用により地表又は水面から浮揚した状態で移動することができ、かつ、操縦装置を有する機器であって、当該機器を用いて人が飛行することができるもの
【ソース】
【補足】
(1)「対象施設」については、コピペするとほぼ条例全文となり長いので割愛。警視庁作成の「小型無人機等飛行禁止法関係」のページもしくは、ソース元の条例を参照のこと。
(2)以下は、小型無人機等飛行禁止法において、飛行禁止空域でパラグライダーのフライトが可能となる条件と解釈することができる。(現実性は不明なものの、ドローン同様に申請し承認を受ける)
(対象施設周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止)第十条2項ならびに3項
2 前項の規定は、次に掲げる小型無人機等の飛行(第二条第一項第三号及び第四号に掲げる対象施設及びその指定敷地等の上空において行うものにあっては、第一号に掲げるものに限る。)については、適用しない。
一 対象施設の管理者又はその同意を得た者が当該対象施設に係る対象施設周辺地域の上空において行う小型無人機等の飛行
二 土地の所有者若しくは占有者(正当な権原を有する者に限る。)又はその同意を得た者が当該土地の上空において行う小型無人機等の飛行
三 国又は地方公共団体の業務を実施するために行う小型無人機等の飛行
3前項に規定する小型無人機等の飛行を行おうとする者は、国家公安委員会規則(第二号及び第四号に定める者への通報については国土交通省令、第三号に定める者への通報については防衛省令)で定めるところにより、あらかじめ、その旨を当該小型無人機等の飛行に係る対象施設周辺地域を管轄する都道府県公安委員会及び次の各号に掲げる当該対象施設周辺地域の区分に応じ当該各号に定める者に通報しなければならない。ただし、第二条第一項第三号に掲げる対象施設及びその指定敷地等の上空において前項第一号に掲げる小型無人機等の飛行を行う場合であって、当該通報を行うことが困難な場合において、当該対象施設の管理者が、防衛大臣が警察庁長官に協議して定めるところにより、当該小型無人機等の飛行の識別を容易にするため必要な当該通報に代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
一 第二条第一項第一号ホに掲げる対象施設に係る対象施設周辺地域皇宮警察本部長
二 海域を含む対象施設周辺地域当該対象施設周辺地域を管轄する管区海上保安本部長
三 第二条第一項第三号に掲げる対象施設(自衛隊の施設であるものに限る。次条第三項及び第十三条第二項において同じ。)に係る対象施設周辺地域当該対象施設の管理者
四 第二条第一項第四号に掲げる対象施設に係る対象施設周辺地域当該対象施設の管理者(以下「対象空港管理者」という。)
2.立法に係る内閣委員会の会議議事録でのパラグライダーに関する言及部分
○泉委員 ページをもう一回戻っていただくと、先ほどのシークレットサービス長官の下、「米議会敷地に小型ヘリ侵入、操縦の郵便局員逮捕」、これは最近です。先月の十六日、テレビでごらんになられた方もあるかもしれませんが、小型ヘリコプター、ジャイロコプターで連邦議会議事堂の芝生に着陸ということがございます。
もう一度ページを開いていただくと、先ほどのハンググライダー、パラグライダーというところが出てくるわけなんです。
実は、私の資料の、さっき説明したジャイロコプターという小型ヘリコプターは、これはぎりぎり超軽量動力機、航空機の方に当たるということであるんですけれども、ハンググライダーやパラグライダーは人間が飛ぶための補助機みたいなことでありまして、航空機ではないんですね。ですから、今回の、我々が今考えているところの対象外なんです。
実は、このパラグライダーは、単純に全く動力をつけずに飛ぶパラグライダーと、モーターパラグライダーというものがありまして、皆さんもごらんになられたことがあるかもしれない、後ろに扇風機みたいな大きなものをつけてパラグライダーをするものですね。
ハンググライダーやパラグライダーは、普通は上昇はできないわけですけれども、モーターがつけば、長時間航続することもできれば、浮揚することもできるわけであります。そういった意味では、上空を旋回することもできるようなものなんですね。
さて、実は今、議員立法の協議中なんですが、現在、原案の中では、模型航空機のみが対象になっておりまして、私は、モーターパラグライダーというものの侵入の可能性というものはやはり考えなければいけないのじゃないか。非常に小型ヘリコプターと似ている性質を持っているということなんですね。
きょう資料としてはお持ちしていないんですが、過去にもあったんです。一九九四年十月三十一日、「パラグライダー 皇居の上空を旋回 規制なく警察困惑」、こういう新聞記事もあって、二〇〇〇年代にも、モーターパラグライダーで皇居の上空を旋回した人間があるということになっているようですが、いずれも、残念ながら航空法の対象外ということで、困ったことをしてくれちゃ困るよということで帰されているというような状態であります。
しかし、ドローンのことが今回明らかになったように、上空を旋回できるわけですね。ですから、着陸したら住居侵入罪で逮捕できますなんていう話は一方であるわけですが、着陸せずに上で何かしらの行動ができる可能性があるということを考えると、さあ、これは危険でしょうか、危険じゃないでしょうかという話になってくるわけなんです。
ドローンというのも、あるいは小型ヘリ、無線操縦のラジコンヘリみたいなものも、なぜ今回規制をするのか、そしてなぜ危険なのかということを考えた場合、それは、もしかすると何か危険物を運ぶかもしれない、そして危険物を散布するかもしれない、そういう可能性があるわけでして、それと同種の機能というか役割を果たすことができる、それがこのモーターパラグライダーだとすれば、これはやはり同じように危険が生じるのではないかというふうに考えております。
事務方で結構ですけれども、通告もしておりますが、政府としては、このモーターパラグライダー、重要施設の上空を旋回されたり、それがテロに使われたりという危険はないとお考えでしょうか。
○菅国務大臣 今委員御指摘のパラグライダーやジェットパック、こうしたものについて、確かに、人が操縦するものでありますから、官邸の周辺だとか重要施設に来た場合は、ある意味で、発見することはドローンと比較をして容易かなというふうには思いますけれども、しかし、まさに先ほど御指摘いただきましたように、緊張感を持って、ありとあらゆる可能性、テロを含めて、そうしたものを排除するためには、こうしたものも何らかの対応策というのは当然考えるべきであろうというふうに私は思います。
○泉委員 官房長官、ありがとうございます。
私も冒頭お話ししましたが、ドローンは規制しました、次の日に別なものが飛んできたけれどもこれは規制対象物に入っていませんでしたでは、余りに格好悪いわけですね。ですから、やはりそういった可能性のあるものをいかに排除するかということが大事でして、どうしても、ドローンが来たとなると、ドローンだ、ドローンだとドローン対策に陥ってしまうという、そこは気をつけなければいけないと思っております。
私自身は、ハンググライダー及びパラグライダー、この中には飛行に際し原動機を用いるものを含むということでさっき言ったモーターパラグライダーというものも入れて、それを誰かが装備して、その操縦によって飛行する、またそのことによって対象施設に危険を生じさせる、そのために使用されるおそれがあるものを規制するという考え方、こういうふうにしていくことがまさに当面万全な対策ではないのかな、そんなふうに感じているわけであります。
ただ、気をつけなければいけないのは、今我々が考えている法律の中では、ドローンについては妨害または破損ができる、侵入した場合にはそういった措置ができるということになっているわけですが、これは、パラグライダーになると人が乗っていますのでなかなか撃ち落とすということにはならなくて、墜落の危険を生じさせるということについては非常に限定はしていかなければいけないということはあろうかと思います。
さはさりながら、事例として九〇年代にも二〇〇〇年代にも、ビル風がいっぱい吹くからこの周りは大丈夫だよなんていう説明も政府の中にはあるんですが、皇居なんというのは、それはまさに飛べますよね。そこから今のモーターパラグライダーであれば議事堂に至り、官邸に至るというのは十分あり得ることだというふうに私は思っておりまして、ここはぜひこういったことを加えていくということが大事であろうなというふうに思います。
さらに言えば、今回、資料の中にもつけさせていただいておりますけれども、地図がありまして、今想定をしているものは国家の重要施設ということで、国会、首相官邸、最高裁、皇居、そして赤坂御所の敷地、区域及びその周辺を飛行禁止地域としようということを今想定しているところでありまして、特に、白抜きの字で地図に書かれているところが対象地域、そして、そこから三百メートルということでありますので、全体としては少し面的な規制がかかるということがイメージされます。
ただ、これも詳しく見ていくと、この時点では副議長公邸は対象外でありますし、衆議院あるいは参議院の宿舎も、点線の中に含まれるものは対象なんですが、一部この地域内に含まれないものもある。例えば衆議院の青山宿舎なんというのもそうでしょうし、乃木坂にある衆議院の副議長公邸もそうでしょうしということで、それは今後やっていかなければいけませんし、中央省庁も半分が今この点線で囲まれているエリアでありますので、そういったことも今後考えていかなければいけない。
さらには、当然ながら、原子力施設、そして自衛隊や警察をどうするのか、そういうもろもろも含めて今後考えていかなければいけませんが、それは第二弾、あるいはそれ以降ということになっていくんでしょう。
しかしながら、繰り返しになりますが、国家の重要施設に対する危険物の飛来をやはり何とか阻止しようということの趣旨でありますので、今お話をさせていただいたモーターパラグライダーということについては、ぜひともこれを入れていけるよう頑張ってまいりたいというふうに思います。
【ソース】