Windy が気象庁の予測モデルに対応 | 日本の気象予報情報サービスに関する憂慮
フライヤーにはおなじみの気象予測サイト windy.com が、気象庁の予測モデルに対応!!
と、昨日、友人の変態(妖怪?)パイロットさんから気象情報に関する素晴らしいニュースを聞きました。
これ以外にもここ1-2週で気象予報サービスやアプリ関連のニュースが幾つかあり、アメリカ映画のセリフみたいな言い方だと「良いニュースと悪いニュースがある。どちらから聞きたい?」という状況です。
もちろん、良いニュースの windy.com(以下、Windy と表記) からいきましょう。
ちょうど、クラブの会員さん向けに、気象情報の基本的な見方をまとめたいと思っていたところです。今回の気象庁の予測モデルへの対応により、無料で見られる一般的な気象情報としては Windy の有用性が突出したように思うので、Windy の基本的な使い方をまとめました。
有料のソアリングフォーキャストも、はや気象庁の予測モデルに対応して欲しいものです…それくらい、Windy の対応は素晴らしいニュース。
1.Windy が気象庁の気象予測モデルに対応
ということで、フライヤーにはおなじみの気象予測サイト Windy が、なんと気象庁の予測モデル「MSM(メソモデル:局地モデル)」に対応したのです。
閲覧の仕方は下記のとおりです。
アプリでは Android 版・iOS 版共にまだ非表示となっているようですので、PC かスマートフォンのブラウザで閲覧くださいませ。
(1) MSM での気象予報の表示方法
PC 版(Windows 11 の Chrome と Edge で動作を確認)
【操作方法】
Windy にアクセスをして、トップページを表示したら、右下の予測モデル選択欄から「MSM」を選択。
スマートフォン版(iPhone の Chrome と Android の Firefox で動作確認)
既に Windy のアプリをスマートフォンにインストールされている方は、Android の標準ブラウザである Chrome、もしくは、iOS の標準ブラウザである Safari で Windy を開いた場合、アプリの Windy に自動的に画面が遷移します。アプリがまだ非表示のため「MSM」の閲覧ができませんので、これらのブラウザ以外で閲覧いただくか、アプリが 「MSM」表示に対応するまでお待ちください。
【操作方法】
Windy にアクセスをして、アプリを DL させるポップアップは全て無視して、右下のハンバーガーメニュー(三本線のアイコン)をタップ。メニューが表示されたら、画面を下にスクロールして天気予報モデルの欄で「MSM」を選択。
(2) 閲覧可能な予測時間、更新頻度と対象地域
今のところ、MSM については 39時間先までの予測が閲覧できるようにみえます。(有料アカウントについては確認ができておりません)
Windy のウェブサイトに記載された更新頻度に関する記述がややわかりにくくなっておりますが、無料利用の場合、お昼と夜に約 12時間くらい間隔で更新されるような気がします。有料アカウントの場合、気象庁の MSM のデータ更新頻度とおなじく、3時間更新となるようです。
(おそらく、気象庁の更新仕様通り、39時間先まで 3時間更新、78時間先まで 12時間更新ということかと思います。)
また、採用されている気象予測モデルは「MSM」のため、データの仕様上、Windy でも MSM を選択した場合、日本周辺のみを表示となっています。
(3) SCW / GPV との違い、そもそも数値予測について
気象庁の予測モデルに対応した気象の数値予測をアニメーションで閲覧できるサービスとしては、SCW と GPV がよく知られています。
※ 後日追記:済みません、壮大な勘違いをしていました。SCW と GPV は、気象庁の予測モデルを利用したサービスではなく、GFS(後述)をベースとした気象の数値予測をアニメーションで閲覧できるサービスでした。
SCW も GPV も Windy 含めて、このような気象予測は「数値予測アニメーション」と呼ばれ、気象機関が行ったスーパーコンピューターによる気象予測のシミュレーション結果を、アニメーション表示で閲覧させるものとなっています。
各国の気象機関が「予測モデル」という気象予測シミュレーションの為の力学の複雑な計算モデルをもっており、一般の天気予報は全てこのシミュレーション結果を基に予報が作成されます。
一般の天気予報が、シミュレーション結果を予報官や気象予報士が解析してわかりやすいように解説や表現をした天気予報であるのに対し、「数値予測アニメーション」は、シミュレーション結果の生データをそのままグラフィック表現し時間変化のアニメーションで見せるものです。
フライヤーの観点からみると、SCW については、気象庁の NOAA アメリカ海洋大気庁の予想モデルの「局地モデル(LFM)」を採用し 2km メッシュという最も粒度の細かい単位で数値予測を表示してくれ、頻繁に機能もアップデートされ頼もしい半面、表示される情報は地上のみに限られ、上空については推測をするか別途で情報を得るしかないという難点がありました。
また、GPV については、今回の Windy 同様に気象庁 NOAA アメリカ海洋大気庁の予想モデルの「メソモデル」を採用し 5km メッシュの粒度で表示し、上空の気象情報の表示もあります。が、上空の情報は、850hPa 温位や 500hPa高度/過度といった気象庁が定時に発表する高層天気図の形式で気象情報をアニメーション表示するもので、高層天気図の読み方を身に付けている人には極めて貴重ではあるものの、一般的なフライヤーの方にはやや難解過ぎて、現実的には地上の気象情報しか使わないことがほとんどになる難点がありました。
今回の Windy の「MSM」への対応は、気象庁の予測モデルに対応した数値予測アニメーションを見ることができるようになっただけでなく、従来からの難点を解消し、元々表現性に極めて優れる Windy でわかりやすく見ることができるという点で、大きな期待ができます。
また、元々 Windy にあった「ECMWF(欧州中期予報センターの予測モデル)」や「GFS(NOAA アメリカ海洋大気庁の予想モデル)等の予測モデル」といった海外の予測モデルと表示を切りかえることで、気象庁の予測モデルを含めてモデル毎の予報の差を確認でき、複数の気象シナリオでのコンディション予想を Windy のみで一見でできるようになったことが大きく有用なポイントです。
「ECMWF」や「GFS」等の海外気象機関の予測モデルでの日本周辺の数値予測について、「いい加減」や「当たらない」というフライヤーの方が時々いらっしいます。私も、かつてはそうなのであろうと思っていました。が、そんなことはなく、数値予測自体が、おひざ元の気象庁の予測モデルだから「当たる」という性質のものではないことをご理解ください。
数値予測は、所定時刻に各国がレーダーや衛星や船舶や航空機等から観測データの収集を行うと、それを各提携気象機関と連携します。このため、観測データ自体は、海外の気象機関の予測モデルでも同様のデータです。
その後、「データの同化」と言われる、コンピュータで数値シミュレーションができる形式にデータが整えられ、「初期値」と呼ぶ、シミュレーションをおこなう上での大元のデータが作成されます。気象の数値予測には、「ブラジルで蝶が羽ばたけば、テキサスで竜巻が起こる」と表現される初期値鋭敏性があり、初期値のちょっとした違いでシミュレーション結果は大きく異なります。数値予測が、それだけ複雑な大気の計算であるということです。精度という点では、海外気象機関の予測モデルも気象庁の予測モデルも、この初期鋭敏性に大きな影響を受けると言われ、過去の専門資料では、気象庁自身が、一定期間での精度を比較して ECMWF が最も優れていたと発表をしたこともあります。
また、XCフライトの座学講習で「複数の予測モデルのなかで、最近の精度が高い予測モデルを重視する」と教わったと耳にしたことがありますが、これも、数値予測がどのように作られているかを考えれば、やや妥当性に欠ける数値予測の使い方ではないかと思われます。
数値予測は、所定時刻に上記の観測データの集計とデータの同化を行い、「初期値」を毎回定めてシミュレーションを行います。毎回最初から予測を行うものであり、いずれも初期値鋭敏性に大きな影響をうけ、「この予測モデルが過去のこの時点で当たっていたから、この後の予測に有利」といった性質でも、「この予測モデルの計算式が最近の気象状況のシミュレーションを上手く算出する」という性質のものでもありません。
「データの同化」の作業で継続性の差がでる可能性を否定もできませんが、いずれにしても大きな影響をうけるの初期値であり「初期鋭敏性」でしょう。そして、それは毎時変わってリセット状態になります。
まず考えるべきなのは、見ている数値予測の気象予測モデルが、全球モデルなのか局地モデルなのかであり、いずれにしても、数値予測は上記性質をもつシミュレーションです。サーマルトップを 100m単位で予測できるものでも、気象予報士さんのように前線を書き込んでくれるものでも、上空の寒気や気圧の谷や尾根や収束点の分析をしてくれるものでもありません。
フライヤーにとって大切なことは、実態と一致しないことが当たりの前の数値予測を鵜呑みにすることなく、その他の気象情報を含めて気象の大局を判断して、複数のシナリオでコンディションをイメージして飛ぶこと、そして、最も重要なのは、観天望気で実体を正確に判断できることです。Windy の情報も、上手くご利用くださいませ。
なお、上に「メッシュ」という用語がでてきますが、気象情報の数値予測は、下記のようにメッシュ状に分割した各地点の予測をおこなっているものであり、この網目のことを予測の「メッシュ」と呼んでおり、その網目の粒度が 5km や 2km と言っているものと理解ください。
また、上記に記載した気象庁の各数値予測モデルの詳細につきましては、下記をご参照ください。
2. Windy の基本的な使い方
ちょうど良いタイミングなので、Windy に不慣れな方に向けて、基本的な使い方をご説明いたします。
フライヤーの方は屋外での閲覧を含めて、スマートフォンで閲覧をする方が多いであろうことを考慮し、また気象庁の予測モデル「MSM」を選択しての閲覧を重視してスマートフォンのブラウザで利用を前提にまとめますが、Windy のスマートフォンアプリでも同様操作になり、また、PC で閲覧した場合でも、レイアウトは若干異なるもの基本的には同様になります。
Windy は有料のプレミアム アカウント(2024年4月現在、$20.89/年の月額サブスクリプション、もしくは$32.99 の年間買い切り)がありますが、多くの機能は無料で、またアカウント作成をしなくても利用可能です。今回記載した内容も無料でもアカウント作成をしなくても利用可能なので、これを機に試しに使ってみてくださいませ。
なお、 Windy を見る前に必ず気圧配置図をみてください。
フライヤーは、天気予報を、いきなり数値予測やピンポイント天気予報から見ては絶対ダメです。なので、まず気圧配置図からご説明いたします。
(1) 気圧配置図の確認
高層天気図まで見る必要はありません。地上天気図でOK。
一般的なフライヤーの行動パターンに従って、下記に分けて記載します。
前日から当日の朝等にその日のコンデイションを把握した場合
前々日から前日にフライト日のコンディションを把握たい場合
O 前日から当日にフライト日のコンディションを把握したい場合
速報天気図は、民間気象会社が発表するものも含めて様々な種類があります。慣れているものでOK。ですが、出来るだけその前に「アジア太平洋解説図 ASAS」に目を通してください。気象情報は、大きい大気から小さい大気、広い地域から狭い地域を順を追ってみることが鉄則と言われます。
実況天気図(アジア地上解析図 ASAS)
更新頻度:3/9/15/21時
速報天気図(SPAS)
更新頻度:3/6/9/12/15/18/21時
地上天気図の読みのが難しいと感じられる方は、気象庁の予報官や気象予報士さんの解説に目を通してから、上記の気圧配置図をみてください。
日本のパラグライダースクールでパイロット技能証を取得するために座学講習を受けると、その内容には必ず基礎的な気象の講習が含まれます。その情報を基礎としたうえで、毎週末飛ばれる方なら、飛ぶ前日に解説を毎回読んで1年間ほど続ければ、地上気圧配置図はおおよそ読めるようになります。
そして、読める方も解説に目を通すことをお勧めいたします。
私も同様になりますが、天気図を読むことにある程度慣れていると言っても、所詮、生半可な素人です。気象の専門家の意見に目を通して、天気図から得られる情報の理解を深めることが重要で、専門家が日々テキストで書く解説は記帳な情報源です。
地上気圧配置や全国の天気解説を読むことのできる主なものは下記の通りとなります。(もちろん、YouTube 等にアップされている解説でも構いません。大切なことは、その日の実況気圧配置図と翌日等の予報気圧配置図の解説をしくれることです。)
また、気象庁の「府県天気予報」でご自身が飛ぶフライトサイトがある予報区の「天気概況」を読むことも、大いに役に立ちます。それぞれの地方気象台の予報官が突き詰めて書いた貴重な情報です。
グランボレについては、群馬県北部(沼田市)の予報にここでアクセスできますので、下記の赤い線で囲まれたところをクリックして閲覧してください。
O 前々日から前日にフライト日のコンディションを把握したい場合
予想天気図も、民間の気象会社が発表するものも含めて多種多様な選択肢がありますが、日本周辺を表示するものがほとんどです。できる限り、アジア地上予想天気図に目を通してたうえでそれらを確認してください。
スカイスポーツはもちろん、アウトドアスポーツをする方は、アジア地上解説図とアジア地上予想天気図に目を通すことに慣れると、得られる気象情報の幅が大幅に広がります。時間毎の晴れマークや雨マークや風向風速情報を予測するピンポイント天気予報に目を通すのも、これらを見てからが適切です。
FAS24 は、アジア地上予想天気図で、それぞれの更新時の 24時間後のアジア地上予想天気図です。FSAS48 は 48時間後ということになります。フライト日のどれくらい前に予報を見るかによって使い分けてください。
O 気圧配置図に目を通した後
通常、このスクールやフライトサイトなら「これ」といわれる天気予報があるかとおもいます。グラボレなら、Yahoo! 天気のピンポイント予報「沼田」です。
地上天気図に目を通して気象の推測をしたら、まずはその天気予報を見てしまい、Windy は気象予測を深堀りするための利用に限ってつかってもよいし、むしろ Windy をピンポイントで局所予測を把握するために使ってもよいかとおもいます。
気象情報の収集は 飛ぶ前に必ずやるべき重要なことなので、負担が高すぎても続きません。一方で、十分な情報をえられなければ、ソアリングをする際のサーマルの予測精度やフライトプランの精度が下がりがちになるだけでなく、リスクがある場合もあります。
ご自身のフライト強度に応じた効率的で適切な方法を編み出してルーティンを決めてください。
なにも、数値予測を見ることや Windy をみることが「絶対的な正解」なのではございませんので、この点はご理解ください。
(2) 基本設定と基本操作
Windy のサイトにアクセスすると、Windy がスマートフォンの位置情報を使う許可求められます。許可をすると、もしくは元々ブラウザに位置情報利用の許可を与える設定にしていると、このトップ画面が表示されます。
もし、画面上部に下記のような風向風速情報等が表示されている場合、しばらくやり過ごすと上記の画面に戻るので、そこから操作を始めてください。
画面で表示される速度の単位等を変更する場合、メニューを開いて「設定」をタップして設定をしてください。
(3) 大局把握のための、見たい気象情報の選択
Windy の使い方として、元もオススメなのは、こちらの大局把握としての使い方です。上で記載した通り、気象情報は大きい大気から小さい大気、広い地域から狭い地域を見ることが鉄則です。
SCV や GPV は、両方とも実質的に高い高度の気象情報を見ることができないだけでなく、地図の縮尺の最大サイズが決まっており、大きな縮尺で大局を見ることができないという難点もあります。
Windy は地図画面をピンチする(二本指でつまんだり広げたりする)ことで、縮尺サイズを自由にかえることができるため、気圧配置図のように日本列島全体を表示さることも、ピンポイントで特定の場所を表示させることもできます。まずは、気圧配置図と同程度のサイズで、気圧配置図と対比をさせながら大局を把握してください。
これまでは、Windy が気象庁の気象予測モデルに対応していなかったため、気象庁の発表する気圧配置図や、気象庁の発表を基にする日本の気象予報会社の気圧配置図を、Windy の海外の気象予測モデルでのアニメーション表示と対比させることには、あまり意味がありませんでした。(意味がないとはいい切れないのですが、違うシミュレーション結果同士の情報を突き合わせていることになり、一気通関的にコンディション予想に繋げることができず、まず数値予測自体のブレを推測しなければいけない無駄な難しさがありました)
今回の対応により、対比をさせることが可能となりました。
使い方をご紹介していきます。
ここでは操作のみ説明します。
Windy でアニメーション表示できる気象予測情報は多岐にわたりますが、それぞれの情報をえてどうコンディションを判断するのかについては、ご希望があれば、別途、ソアリング講習等で解説をしたいと思います。
メニュー画面から、見たい情報を選択すると、地図画面に表示される気象情報が変わります。フライヤーが一般的に使うのは、「風」「雨、雷」「気温」「雲」といったところです。
表示させたい気象情報を選択して、地図画面に戻ると、地図上にその情報の数値予測に関するアニメーションが表示されます。下部の「曜日・日・時間」のスライダーを右や左にスクロールさせると、指定日時の数値予測へとかわっていきます。また、白い ▶ ボタンをタップすると時間がながれていきます。
メニューの「より多くのレイヤーを表示」をタップすると、さらに違った気象情報を選択表示できるようになります。
フライヤーにがソアリングをするにあたって有用な情報は、「下層雲」「クラウドベース」「上層雲」「中層雲」「湿度」と、ソアリングフォーキャストのサービスの方が洗礼されいるため私はあまり使っていませんが、サーマルを予測する「上昇暖気気流」あたりかと思います。
従来から Windy が対応をしている「GFS」や「ECMWF」といった予測モデルだけでなく、今回の対応で、これらの情報が気象庁の予測モデル「MSM」によるシミュレーション結果として表示できるというだけでなく、いずれの気象予測モデルでも高度を変えて確認することができます。
メニューの「標高」の項目のボタンを右にスライドさせると、高高度のアニメーションが表示されます。
ただし、高度毎の表示可能な項目は、当然「風」「気温」等の高度毎の予測データがあるもののみになります。(十分です)
なお、気象情報は大きなところから小さなところの順でみるのが鉄則であることとあわせて、高い所を把握してから低い所の情報を把握することが鉄則であることも意識のうえご利用ください。
(4) 局所気象予測情報の把握
パラグライダーのスクール・フライトサイトの局所気象予測情報を確認したい場合、メニューの「地図で表示」の欄から「パラグライダースポット」を選択してください。
地図画面に戻ると、パラグライダーのアイコンで、地図上に様々なパラグライダースポット(パラグライダースクール・フライトサイト)が表示されています。
真ん中の白い十字を、みたいパラグライダースポットのアイコンにあわせてると、上部にそのスポットの登録情報が表示されます。この表示をタップしてください。
その局地点の予報が表示され、下部の「曜日・日・時間」のスライダーを右や左にスクロールさせると、指定日時の数値予測へとかわっていきます。また、白い ▶ ボタンをタップすると時間がながれていきます。
さて、重要なのは、ここからです。
下部の「表示:ベーシック」の項目をタップしてください。
表示内容をベーシックから、「Meteog.」もしくは 「Airgram」に切り替えてください。
「Meteog.」では、地上気圧と地上風向風速、降水量、雲底高度、高層雲・中層雲・下層雲のグラフィカルな予測を見ることができます。
「Airgram」では、降水量、雲底高度、高層雲・中層雲・下層雲に加えて、各高度の風向風速・気温情報を見ることができます。
これらは予測モデルを切り替えて、それぞれの予測モデルでの予測結果を表示することができるようになっています。
また、他の情報同様に、下部の「曜日・日・時間」のスライダーを右や左にスクロールさせると、指定日時の表示へとかわっていきます。
これらも、情報量が多く、この情報をどう使ってコンディション予測をするかについては習熟が必要です。ご希望があれば、別途、ソアリング講習等で解説をいたしますので、お声がけください。
なお、Windy は「パラグライダースポット」で表示するフライトサイトの所在地情報を、Paragliding Earth 等の Web サービスとの API連携でデータを得て表示しています。
ご自身の飛ぶフライトサイトの情報が無い場合や、表示される情報に誤りがある場合、これらの Web サービスへのフライトサイト情報の登録や修正をすれば、Windy も必然的に追加・修正が行われる可能性がありますので、必要な場合は問い合わせをしてみてください。
グランボレは当初から登録があったため、私自身は追加や修正について経験がなく詳細はわかりませんが、Paragliding Earth へのコンタクトにも Windy の対応にも興味があるため、必要でしたらサポートをいたしますので、お声がけください。
3. Windy で Skew-T ダイアグラムをみる
この先はやや上級者向けの使い方となります。
Windy では、指定地点の数値予測気象情報を Skew-T ダイアグラムで見ることができます。Skew-T ダイアグラムは、エマグラム同様に気象判断に用いられる断熱図(熱力学ダイアグラム)の1つです。
ここで、Skew-T 来アグラムやエマグラムがどのようなものかわからない方は、別途の機会に本 Note で解説をまとめたいと思っていますので、その節にご参照くださいませ。
ここでは、Windy での Skew-T ダイアグラムの表示のさせ方だけ記載します。
先ほどのスポットの登録情報が表示された画面で、更に上部を右にスライドさせて「サウンディング」を表示してタップしててください。
タップをすると、指定地点のサウンディングが表示されます。
私自身が「サウンディング」に馴染みがなく、まだ詳細をわかっていませんが、表示される情報はエマグラムと同じく、縦軸を気圧、横軸を温度として、書く気圧での気温と露点温度の数値予報をプロットし点を繋いだ折れ線グラフで、Skew-T ダイアグラムと同じく見やすく傾きをつけて表現したものであろうと思っております。
Skew-T ダイアグラムでの表示の方がよければ、下部の「skew-t diagram」ボタンを押せば、Skew-T 形式での表示がされます。
また、気象モデルを選択でき、今回の対応により「MSM」も含めて切り替表示をすることができます。
今回の対応で、恐らく世界ではじめて気象庁の予測モデル「MSM」に対応した予測数値の Skew-T ダイアグラムの表示がつかえるようになっただけでなく、OS をたがわず使えるようになりました。また、フライヤーのユーザーが多い Android 版 Skew-T ダイアグラムアプリ「skew-t」同様に気温上昇のシミュレーションができ、 かつ、下記を自動計算で表示する従来からの特出した Windy のサウンディング機能が、気象庁の予測モデルの予測結果をつかっても表示できるようになったということです。
TCON(対流温度:Convection Temperature)
CCL(対流凝結高度:Convective Condensation Level)
LCL(持ち上げ凝結高度:Lifted Condensation Level)
CCL や LCL はなじみがあり、特に LCL は積雲の雲底高度の近似値、つまり逆転層が無い場合のサーマルトップ高度の予測として頻繁に参考にする情報です。アプリによっては手動で CCL と LCL を表示させます。
一方で、TCON については、馴染みがありません。
従来からある Windy のコミュニティでモデレーターがしている説明によると、TCON は対流雲の形成を開始するために到達しなければならない地表面の温度であり、つまり「地表面がこの温度になったらサーマルが発生するという予報」ということなのではないかと思われます。
元来、下記のような単純な四則演算で、そのフライトサイトでファーストサーマルが発生する時間の近似値を推測する手法はあります。
TCON がどのように計算をされるものかわかっておりませんが、おそらくこれに近いモノなのではないかと推測します。
いずれにしても、TCON も「MSM」の数値予測で自動計算することができるようになったということで、もしかしたら、気象庁の予測モデルを使い自動計算されたファーストサーマル発生予想時間をみながら優雅にテイクオフができる時代が来たということなのかもしません。
いずれにしても、このような時代の Skew-T の使い方については、別途の機会に本 Note で解説をまとめたいと思っていますので、その節にご参照頂き、フライヤーの皆様と様々な議論ができれば嬉しい限りです。
(後日追記:その後、TCON については、アタマのよろしい日本人トップパイロット様から「CONはSkew-Tから得られます。地上における飽和温度線が、等飽和混合比線(破線)に平行に沿って持ち上がるラインが上空の温度と一致するポイントから乾燥断熱線に従い地上まで降ろした温度が TCONになります。転じて言えば、TCON以下で持ち上がったサーマルの上限は露点温度以下に届かないので雲にならずブルーサーマルとなる。」という趣旨で内容を教えていただきました。気温から Skew-T 上で雲底高度を算出する LCL の逆算的手法で、露点から地上温度視点で雲底高度をみる、なかなかわかりやすい指標であると思います。「気象庁の予測するファーストサーマル」とはすんなりいかないものの、それなりに使える指標かと思います。)
4. 日本の気象予報情報サービスに関する憂慮
ということで、悪い方のニュースです。といっても、最初はそんなに悪くない。といよりむしろ良いニュース。
SCW がアップデートされ、局地モデルの予測時間を 8時間延長しこれまでの 10時間から 18時間となったようなのです。
SCW を見てみると、たしかに、「予測」のなかに、新たに「局地18」というメニューができております。
これまでの 10時間だと、前日の 21時頃にみても翌日の午前中の予測アニメーションしか見ることができず、最も精度が高いにも関わらず「局地」を使うことはあまりなく、よっぽど予測が割れて咀嚼が難しい場合に、当日朝に一応見ておくことがあるくらいの位置づけでした。
18時間となると、前日の夕方にみても翌日のコンディション予測ができるということになります。きわめて有用な更新で、流石の SCW様と言えるでしょう。
でも、その後 Windy のアップデートを聞いて、高い高度をみれるということで、このアップデートの価値がややぶっ飛んでしまったのですよね。それが悪いニュース。
が、Windy の粒子が流れる的な風の表現は、一見華麗で目を奪われるのですが、実はわかりずらく、実直な SCW / GPV の矢印表現は素晴らしいと思う次第です。
次は完全に悪いニュース。
ハンググライダーの優れたパイロットで気象予報士の内藤邦裕様が所属する、我らがウェザーニューズ社がドローンとスカイスポーツ向けのチャンネルをリリースしました。
今回の Windy の対応のニュースを聞く前のタイミングで、「待望の気象庁の予測モデル!!」と一部が(というか私は)ザワめき立ったのです。
が、中身をみてみたら、これが悲しくなる質でした。
確かに気象庁の予測モデルでの数値予測アニメーションなのですが、まず、表示できるのが 8時間先までなのです。
私は、ウェザーニュースの課金ユーザーです。
ウェザーニュースの予測天気図は、週間予報の予想気圧配置図も等圧線の間引きが最小限で、きっちりと前線が書き込まれています。前線の書き込みは数値予測ではできません。気象予報士さんが手間暇をかけて分析をしているということで、日本のサービスのなかで、最も見やすい週間予報の予想気圧配置図だと思っています。
週間予報の予想気圧配置図はスマートフォンのアプリだと無料アカウントでも見ることができるのですが、PC では課金しないとみることができません。気象予報士さんの作業に敬意を払い、課金しております。(たかだか 400円弱/月ですけど…)
なので、8時間先までしかできない表示を見て「あれ、俺ログインしていなかったけな?」と確認をしてしまいました。無料で見ることができるのが 8時間先までという事なのかとおもったのです。
でも、課金ユーザーとしてログインしていても、8時間先まででした。
8時間だと、前日24時に見ても、朝8時の数値予測しか見ることができません。当日朝 6時にみても、やっと14時までで、まだその日のサーマルタイムがまだ終わらない時間までの閲覧。
かつ、確かに高度を変えてみることができ、大局把握ができるものの、雲量については下層雲しか表示できません。
確かに下層雲には積雲(Cu)が含まれるためフライヤーには重要な情報の一つなのですが、ネガティブな気象情報として中層雲と上層雲も極めて重要なのです。
更に、局地情報については、250m メッシュと粒度はすごいのですが、なんと、上空 150mまでしか情報が無いのです。
航空法でドローンが地上から150m 以上の高度を飛行することを禁止されていることを意識しているのだと思いますが、150mって言ったらスカイスポーツだともうランディング寸前で、場回アプローチなら下手すりゃダウンウィンドやベースレグに入ってます。
しかも、8時間先までの情報しかない。ドローンパイロットだって、8時間先までの数値予測なんて使いようが無かろうと思うのです。朝起きて「フムフム今日午前中は、この場所でドローンを飛ばせるぞ」なんて使い方します?
仮に「直後の予想でメッシュの粒度が細かく高精度だから」と、実際に飛ばすときにこんな数値予測の気象情報を睨みながら鵜呑みにして飛行可否の判断をしていたら、その人はドローンの免許を取り上げた方が良い。
どういうニーズを想定してこんなサービスを作ったのでしょうか…。社内で内藤様にリアルなスカイスポーツユーザーのニーズを聞いてから「スカイスポーツ用」を唄っていただきたい。
そして、もう一つの悪いニュース。フライヤーにとって悪い、というより悲しいニュースです。
気象庁が「デジタルアメダス」というスマホアプリをリリースしました。
下記の通りで、高精度な「数値予測アニメーション」のように見えるのです。
が、実際にアプリをつかってみたら、気象庁の予報官が分析した従来の「府県天気予報」でなく数値予報のピンポイント天気を見ることができるといのと、数値予報アニメーションは 2日先程度までで地上情報のみ、あとは気象庁の観測点のデータを見ることができるという程度のものでした。
行政が行う気象予測は、国民の生命を守るという崇高な目標があり、災害の予測が主眼になることも、同じく農業や漁業での情報利用を想定することも当たり前で、不急不要なスカイスポーツでの利用が想定されていないことは致し方ないとは思います。ですが、Windy のようなサービスがあるなか、これを気象庁がやる意味はあるのだろうかと感じてしまいます。
気象庁の数値予測データは、「気軽に使えない」ことが問題と指摘されます。
アメリカ海洋大気庁の気象予測データ GFS は公開されており、Amazon Web Service 等のクラウドサービスに蓄積されたデータを使うことができます。
一方で、気象庁の数値予測データは気象予報業務支援センターからの有償での提供となります。
チェコ企業である Windy のこれまでの対応や、昨今のソアリングフォーキャストの Webサービスが気象庁の数値予測に対応しない理由はここにあります。
また、自国語で説明のある自国のデータを気軽に使うことができないことがら、日本が IT敗戦国であることとあわせて、日本で新しい気象サービスが産まれてこない要因の一つと言われます。
気象庁がデジタルアメダスというアプリをつくるより、数値予測データや観測値をクラウドにアップロードし公開し、民間が気軽に使えるようにすべきと感じ、日本の後進性の現れで、ありがちな、規制され情報がオープンにならずグローバルに立ち遅れる典型と感じざるを得ません。
という訳で、今回は以上です。
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