国歩艱難 vs甲府 0-1

 スコアレスの時間を長くして一撃で仕留めようとするも終了間際に失点し、万事休すと思われたが、ラストプレーで佐川がミドルをぶち込んで辛うじて1ポイントを得た前節。順位の近い相手だっただけに勝って差を詰めたいというのは本音だが、負けていたらダメージは計り知れない。足掻きながら少しずつポイントを積んでいくことでしか残留は見えてこない。
 で、2試合負けなしと状態が上向いているように思われたところで約3週間の中断。河田、樺山、瀬畠、仙波といった新加入組をフィットさせる場としても有益な時間ではあった。一方でどのチームにも同様の時間が与えられているため、如何に効果的に落とし込めていたかが再開後の結果に現れる。隣とのTMは落としたとの報は入っているが、あくまでリーグで結果を出す必要がある。

 再開明け初戦、1万人の観客が見守る中で幸先よくスタートを切るべく迎える今節の相手は甲府。今シーズンスタート当初はアジアベスト16の舞台で戦っていたチーム。

 ACLの関係で2月にピーキングしていたこともあり、開幕当初は勝点を積んでいたが、徐々に勝ち切れない試合が続く。ウチとの前回対戦では4ゴールで会心の勝利を挙げたものの、その後もなかなか勝てず、GWの秋田戦以来勝利から遠ざかっている。状況が改善されないことから、7月頭に篠田氏を解任し、コーチだった大塚氏が後任として就任。篠田氏も6月から用いていた3-4-2-1を継続。ウタカを頂点にして2シャドーが裏抜けしつつ、WBが高い位置で幅を取る。守備陣もメンバーとしては堅そうに見えるが、複数失点が続いており、前節も終了間際に失点して3ポイントが手から零れ落ちた。

 前回対戦時は開始20分で3失点を喫し、大勢が決していた。ウタカにしてもアダにしても三平にしても前の火力は相当なものである。システムはミラーだと思われるので、噛み合わせ自体は悪くはならない=目の前の相手を上回るか。WBの立ち位置で優位に立った方が主導権を握る。暑さは間違いなく不安要素とはいえ、コンディション的には万全なはず。ここで走り切って相手を上回らない限り、状況は改善しない。アウェイでの不甲斐なさを晴らすためにも、積極性を見せたい。


メンバー

 ウチは前節から2枚変更。風間→瀬畠、アマ→仙波。アマは累積警告による有給。仙波と瀬畠が加入後初スタメン。

 対する甲府は後半ATに追い付かれた前節長崎戦から1枚変更。山本→ヘナト。

前半

 日が沈み、風もわずかに吹いて暑さも幾分収まったが、それにしても試合をするには厳しいコンディション。ウチのキックオフで試合が始まる。

 立ち上がりに1つウチが形を作る。2分、仙波が左サイド高い位置でインターセプトし、そのまま旋回しながら中央に運び、右を駆け上がったエドへ付ける。エドはパスの出すタイミングを探りながら荒木とアダイウトンを釣り出し、アダイウトンが下りてきたことによって出来たパスコースを使って仙波とワンツーでPA内に侵入。トップスピードのまま佐藤に平行のパスを送ったが、佐藤の右足のシュートはミートしきれず。
 仙波のゲームメイクがいきなり見えたが、エドも自分で上手くレーンを使って相手を剥がした。また、エドがスプリントしてハーフスペースを使う際に、しっかりと大畑も大外に上がっていたので、複数の選択肢を作った。

 甲府がウタカにシンプルに当てようとしたボールに対しても城和を中心に上手く身体を当てて対処し、セカンドをCH2人が回収してボールを握る。そこから対角にエドや菊地を走らせてサイドにポイントを作り、ニアゾーンを取る意識はある。ただ、ファイナルサードに入る機会は少なく、焦らず一度作り直してというシーンは多い。

 甲府はアダイウトンという分かりやすい武器があるので、そこの推進力で前進するための計算はできる。ボールが低い位置にある時にはLWBの荒木がホームフォーメーションの通り大外で幅を取るが、ある程度前進するとアダイウトンを大外に置いて荒木が内側に入る。この際にはアダイウトンを誰が見るのかという問題がウチには生じるが、基本的にはそのまま大畑が外までケアしに行き、エドが中に入って荒木のハーフスペースの動きを捕まえる。
 なかなか甲府は前に進む機会がなかったが、徐々にサイドからクロスを入れてチャンスを作ろうとする。何せ中で構えるのがウタカなので、一撃で仕留める可能性は十分。ウチとしては当然警戒しながらのクロス対応となる。

 29分、ウチのチャンス。自陣でビルドアップしている局面で大畑が2度スリップしてロストし、高い位置でボールを拾ったアダイウトンがそのままPA内へ侵入。深く抉ってからのマイナスのクロスの先には白のユニフォームの選手はおらず、菊地がワンタッチでエドに叩く。エドはそのまま加速して敵陣に入り、右大外の佐藤へ。佐藤は縦に矢印を向けてからカットインして中に2つ持ち出し、そのまま左足でゴールを狙う。シュートは枠を捉えていたが、ややコースが甘く渋谷に防がれる。
 ピンチから一気に引っ繰り返して相手のサイドの背中のスペースを突いた。カウンターの鋭さを見せたが、ゴールには至らず。

 32分もウチがゴールに近付く。中塩から菊地へのロングフィードは跳ね返されるが、すぐに梨誉と仙波がボールホルダーにプレッシャーを掛けて相手のコントロールミスを誘い、中塩が回収。中塩→佐藤→梨誉と中央で回し、右のエドへ。エドは縦に仕掛ける間合いを探るべく細かくステップを踏みつつ、中央の佐藤へ渡す。佐藤は左足を警戒されていることを逆手にとって1stタッチで右にコントロールして孫を剥がし、右足でシュートを放つ。しかしイン側に引っ掛かってしまい左に逸れる。
 エドから佐藤に入る前に梨誉が上手く中山を引き連れてコースを空けたり、大畑が上がることでエドと正対する荒木の気を逸らしたり、シュートまでの過程は良い。

 その後は中盤で攻守が入れ替わる展開が続き、互いにバイタルまで到達することができない。甲府は2・3本クロスからシュートは放ったが、どちらも期待値は低いもの。
 どちらにとっても悪い展開ではないが、攻め手を欠いてのスコアレスで前半を終える。

後半

 両チームともノーチェンジで後半に入る。

 後半も先にウチがチャンスを迎える。48分、自陣右サイドで大畑がスローインを入れ、河田が頭で1つ内側のレーンに落とす。そこにエドが走り込んできてそのまま前進。PAに入って抉り、ニアにマイナスのクロス。ここに梨誉が合わせようとしたが相手の足が伸びてきて対応され、シュートは打てず。

 ウチは前に出てボールを握ろうとしており、ミドルサードまでは到達するも、そこから先の手立てがない。CBがサイドにフォローに行ってクロスを入れるシーンも何度かあるが、クロス精度が伴わず流れが切れてしまう。
 そうこうしていると段々と疲労が蓄積してウチの中盤の強度が落ちてくる。また、甲府が重心を上げてハーフウェーを越えた辺りでCBがボールを持つようになる。当然WBも高い位置を取ってくるので、ウチは全体が低い位置で構える時間が増えた。甲府もすぐに縦に刺すほどのリスクは冒さないが、じりじりと押し込む。

 58分、甲府はアダイウトン→武富、ヘナト→木村の2枚替え。アダイウトンは交代が不満だったようで、ピッチアウトしてベンチに戻らずそのままロッカーに直行。
 ウチも60分に梨誉→樺山で最初のカードを切る。そのまま左に樺山が入り、縦への仕掛けを狙う。

 62分、甲府のシュートチャンス。関口から甲府右サイドのコーナーにロングフィード。これを村上が収め、後方の木村へ。木村は鋭いフェイクを入れながらも自らは仕掛けずに中央の中山に繋ぐ。中山は逆に展開しようと身体の向きを作るがキャンセルし、再度村上へ。村上は中山とのパス交換でリズムを作り、ニアゾーンに走り込んできた木村を使う。木村は1stタッチでキックフェイントを入れて瀬畠を剥がしてPA内に入る。左のアウトサイドでボールを押し出してシュートのタイミングを図るが、中塩と城和が間合いを詰めて対応し、最後は城和がシュートを至近距離でブロック。

 72分、甲府がウタカを下げてマクーラを投入。
 ウチも同じタイミングで河田→佐川、仙波→風間の2枚替え。仙波は出色の出来であったが、強度を保つための交替。

 ここからも膠着状態が続く。ウチは敵陣に入ってからの細かなパスミスでロストして帰陣を余儀なくされ、攻撃の糸口がない。ただ、ボールを奪った甲府側も3本パスが繋がる前にボールコントロールが乱れるので、どちらにも流れが傾かない。

 そんな中でウチにアクシデント。ラインブレイクするためにスプリントした佐藤がコンタクトのない場面で右太腿を抑えて座り込んでしまう。本人の仕草やドクターとのやり取りを見る限りだとハムの肉離れの可能性は高い。最短でも1か月ほどの離脱は免れないのではないだろうか。
 このタイミングでカードを切る必要があるが、これが3回目の交替となるため、判断は難しい。
 先に甲府が鳥海→内藤、村上→井上の2枚替えを行ったが、ウチは数プレーを10人で続行するほどベンチは迷った。その上で、佐藤→竜士に加えて大畑→田頭の2枚替えを決断。結果としてこの交代が両チームの交替が明暗を分けることとなる。

 83分、渋谷からのロングフィードに武富が抜け出して左サイドでボールキープ。オーバーラップしてくる荒木に対して田頭とエドのどちらかが行くのかがハッキリせずにボールホルダーへの限定ができず、風間もサイドのスペースをケアしようと後ろに落ちてきたため、武富からボールを受けた木村はフリーで目の前に大きなスペースを得る。木村→内藤→関口と右にボールは送られ、関口はインスイングのクロスをキャンセルして内側に入り、左サイドでフリーの荒木に柔らかいボールを供給。荒木は左足のフェイクで樺山を躱して右足でクロス。このボールに菊地の背後を取った内藤がファーで合わせる。ゴールから離れており角度も限られていた中でのシュートだったが、これがクリアしようとした中塩の左足に当たってコースが変わり、サイドネットを揺らす。11試合ぶりの勝利に向けて大きな先制ゴール。
 色々と原則がブレるとやられる。最初のボールが入ったところもボールホルダーへの寄せもキックフェイントにまんまと飛ぶところも悪い方向に結びついてしまった。

 残された時間で攻めようとするも、チグハグ。エドと樺山が互いのスペースを消し合ってしまって仕掛けられず、そこに田頭も何とかしようと距離を詰めると渋滞。相手がブロック敷いているとはいえ、なかなか縦に刺せずに時間が過ぎていく。風間のFKは枠を僅かに逸れ、CKからの佐川のヘッドもライン上でブロックされた。

 下位に低迷するチーム同士の試合は最後にチャンスをモノにした甲府が勝利し、11試合ぶりに3ポイントを得る。

雑感

 中盤の展開は見ていて楽しかったし、負けるほどの内容ではなかったかもしれない。一方で、3ポイントに値した試合だったとも言えない。良くて1ポイント止まりだっただろうというのが個人的な印象。

 CHのゲームメイクは勿論、ミドルサードまではスムーズに進む。が、そこから先は簡単に解決はしない。ミスは付き物なのも当然なんだが、フリーの状態でのパスのズレで局面引っ繰り返されると辛い。暑さによって両チームともにプレーのクオリティに影響があるのだとは思うが、敵陣に入ってから頭抱えるロストが目立った。
 失点後にギアを上げようにも残された余力はなく、効果的な前進もできずに時間ばかり過ぎていった。ロングボールでパワープレーするのもロングスロー入れるのも選択肢として必要だが、その都度行き当たりばったりで明確にゴールに向かう形が共有できず、各々藻掻くのみになっていく。
 甲府は明らかに田頭の背後に対角のボールを落として勝負させる意図を持っていたし、その辺りの差が結果に現れた。ただ、あの失点については選手個人に責任があるとは言えない。大畑が対アダイウトンでだいぶエネルギーを割いていたのは間違いないし、交代も理解できる。しかし、残り10分でCB替えるのは当然ながらリスク伴うし、本職ではない選手に任せるのは酷だった。

 負け方としては尾を引くもの。簡単にチーム状況は上向かないが、どうなろうと見守るしかない。

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