陳蔡之厄 vs千葉 1-3
ここ2年常に苦戦を強いられている熊本に対し、なかなか攻め手に欠きセットプレーの流れから先制を許す苦しい展開だったが、選手交代を有効活用しながらジリジリとゴールに迫り、ATにスコアをフラットに戻して1ポイントを得た前節。上手くいかない時間もやり過ごしながら、一刺しで勝点を拾っていけるのは良い。
ミッドウィークには初のルヴァンカップも戦った。一部ポジションを除きターンオーバーをしたが、90分で決着付かずに30分の残業。途中からリーグ戦メンバーも投入して結果にこだわった部分もあり、終わってみれば4-1での勝利。スタートから出場したメンバーもアピールできた面はある一方、まだまだ発展途上であり、立ち位置含めた前進の仕方はこれからもっと仕込んでいく。そしてやはり、リーグ組のメンバーの理解度は当然ながら高いので、効果的にボール奪取から前進までやってのけた。これが誰が出てきてもできるのが理想なのは間違いないが、途中出場の選手が流れを変えられるのはリーグ・ルヴァン関係なく武器となる。
2戦連続引き分けながら、そろそろ3ポイントを欲しいという思いを強めて迎える今節の相手は千葉。相性抜群のお犬様というのは今は昔、最近はなかなか勝てていない。
昨シーズンは夏場から一気にギアが入り、8月下旬から怒涛の7連勝などもあってPO圏内にてフィニッシュ。が、ややピーキングが早かったような要素もあり、POでは昇格したヴェルディに惜敗。
今シーズンも小林氏が指揮を執り、まずは世界三大カップを連覇。引き続きハイインテンシティで即時奪回でぶん殴る。見木がヴェルディに栄転したものの、昨季躍進した藤枝の心臓である横山を争奪戦の末に獲得。更には磐田からエドゥアルド(旧:ドゥドゥ)も加入。中盤の質も明らかにアップした。ルーキーで2桁ゴールを記録した小森やLSBの日高も残留。ドゥドゥ、日高、田中和樹、高橋といったサイドの面々は厄介でしかない。各々がスピードや推進力を持っており、尚且つ躊躇なく戦える。また、そのサイドにボールを供給するのは田口。セットプレーやカウンターでも自由にでボールを蹴らせたら決定機を作られる可能性は高い。開幕戦こそ同じく昇格候補の山形に敗れるが、2節ではボール持ちたい藤枝に対してプレスで襲い掛かり4-0で完勝。ミッドウィークのルヴァンはターンオーバーで鹿児島に敗れているものの、リーグ組は継続路線で既に完成度は高い。
昨シーズンホーム最終戦で対戦した際は酒井と中塩の脇を延々と突かれた。ウチがスライドする前に角を取られて撤退せざるを得ず、そこからマイナスに落とされてバイタル使われるっていうことが多かった。ウチはある程度ボールを持たれることは許容すると思われるが、圧力をどこで掛けるかを見誤るとズルズル行く可能性が高い。インテンシティに陰りが見えてくる70分以降に活路を見出すように上手くコントロールしたいところ。CB2枚の120分フル出場を筆頭に一部選手は中3日という点は気がかりではあるが、アウェイ鹿児島90分敗戦と比較するとフィジカル的にもメンタル的にもそこまで大きな差はないか。
メンバー
ウチは前節からスタメン、ベンチ入り18人ノーチェンジ。
対する千葉は勝利した前節藤枝戦から2枚変更。久保庭→佐々木、横山→風間。
前半
強風により看板撤去となるこの時期恒例のコンディションの中、千葉ボールでキックオフ。ウチはコイントスに勝ってエンドチェンジせず前半の風上を選んだ。
立ち上がりは千葉の長めのボールがかなり押し戻されており、アジャストの為にフルスロットルではこない。ウチが保持する局面でもハイプレスではなく、ミドル気味に構える。
が、千葉に明らかに圧される。田口に対する牽制がほぼほぼできていなかった。千葉がボール保持時にエドゥアルドがやや前目に立ち、風間とエドゥアルドをウチのCMF2枚がチェックをせざるを得ない状況を作られる。中を締めて外追い込みを掛けたいのだが、前プレの連動性に欠き、結局幅を取られたサイドを経由して田口に斜めで通され、そこで自由にボールを触らせてしまった。当然そうなれば、風の影響を受けないような低く速い弾道のフィードで1つ飛ばしたり、風間や小森に楔通したりってことも可能。
ウチはボールを落ち着かせるポイントがない。追い風でボールが伸びるので、そこに最終ラインの裏にボールを落として竜士を走らせることが1・2回あったが、そもそも前進の手段が限られる。CMFがビルドアップで受けてもターンして前を向かなかった場面が何度かあったので、敢えて後ろで持っているのかとも推測したが、にしてもクリエイティビティは見いだせなかった。
21分、千葉に決定機。ウチのクリアボールをハーフウェー手前で佐々木が回収して田口へ。田口は風間に渡してすぐにリターンを受けると、田中がスルスルとハーフスペースを駆け上がって中塩の外側を抜け出してボールを受ける。田中のライン際のクロスは大畑が頭に当て更に中塩がクリアするが距離が足らずにバイタルで田口に回収される。田口はエドゥアルドに当ててスプリント。そこへのリターンはなかったがエドゥアルドは風間へ。風間は中を確認するもキャンセルして右サイドの高橋へ。高橋がPA脇で間合いを取ると、外側を田中が回ってフリーになりクロスを上げる。ふわりとしたボールに走り込んだエドゥアルドが酒井の手前で合わせる。シュートは枠に飛んだが、ここは櫛引が右手を伸ばして反応。
中塩が手を合わせていたが、そもそもクリアで押し返せずに千葉が敵陣(ウチの陣内)で進める時間が長いので耐えるしかない状況になっていた。
28分、またも千葉のチャンス。クロスのこぼれを佐藤がクリアしたが、佐々木が中央で回収して左の日高へ。日高は佐藤を引き付けてから椿に渡し、自らはアンダーラップする動きを見せるもキャンセルし、フリーでリターンを受ける。ボールを持ち佐藤と正対し、キックフェイクを何度か挟みながら外に流れたエドゥアルドに付ける。エドゥアルドはアウトサイドで身体の向きとは90度異なる方向にボールを動かし、椿とのワンツーでPA角まで到達すると中央でフリーの田口へ。田口はワンタッチで風間に送りスプリントするも、風間は和田のプレスを察知してスルー。後方にいた小森が丁寧に落とし、走り込んだ高橋が右足でミドル。グラウンダーの鋭いシュートだったが、ここも櫛引が反応。
そのこぼれ球を小森が回収し、小森→田中→高橋と繋がると、高橋は低く速いクロス。嫌らしいコースに飛んでいたボールに対し城和が足を伸ばしてコースを変える。そのままボールはゴール方向に飛んでいったがクロスバーの上部に当たってゴールを逸れた。
しかし、その直後のCKから失点。田口のインスイングのボールにエドゥアルドが頭で合わせる。これは櫛引が超人的な反応を見せるが、こぼれ球をフリーの佐々木が蹴り込む。
エドゥアルドの手前に佐々木が走り込んできたことでエドゥアルドに競れなかった。セカンドはある程度仕方ない。そもそも短い時間で決定機を作られ続けたので、失点も止む無し。
先制したことで、千葉はよりスムーズにボールを回す。風間だけでなく小森も1つ落ちて顔を出すことがあり、ウチのCMFとCBのどちらもチャレンジできないスペースでボールを引き出される。
38分に千葉の追加点。千葉右サイドでのスローイン、高橋から風間が受けると竜士と風間の間を抜けて前を向く。田中にスイッチするかに思われたがそのまま風間が抜けていき、ライン際で中塩を剥がす。タッチがやや大きくなったので城和が寄せてそのまま見送ろうとしたが、風間が隙を見逃さずにマイボールにしてマイナスに折り返す。アマが懸命に戻ってカットするがボールは不運なこぼれ方をして椿の元に。椿は落ち着いて右足で流し込んだ。
最後のこぼれ方はディフレクションなので不可抗力だが、一連のプレーを見ればそもそもそんな状況に持っていかれてはならなかった。ミスが3つ重なれば失点に直結のが通説だが、色々と防げる要素はあった。
1失点までであれば回復できるプランは持ち合わせているが、2点目は重く失点の仕方を含めて伸し掛かる。ほぼ攻め手を見出すことなく45分を終えた。
後半
後半からウチは竜士→惇希、和田→佐川の2枚替え。千葉も前半終了間際に痛めていた日高が続行不可能となり、メンデスが入る。
すると、いきなりスコアを動かす。47分、最終ラインから風間に通すと、少し時間を得た風間は左足で相手最終ラインの裏に惇希を走らせるパス。これは通らず鈴木に跳ね返されるもセカンドを髙澤が確保して中央へとアーリー気味のクロス。そこに走り込んだ佐藤は背後に逸らす形になるが、タイミング良く大畑が駆け上がり、佐川とのワンツーで一気にPA内に入る。角度はなくなったが躊躇なく大畑は右足を振る。これは藤田が反応するが、こぼれ球を髙澤が体勢を崩しながらプッシュ。
惇希がスタートポジションをやや下げることで田中の後ろ髪を引き、それにより風間に少しの時間的余裕とスペースが生まれた。そのまま全体で押し込むことで跳ね返されても2次攻撃に繋げたし、大畑と佐川のワンツーはどのスペースを使うかが共有されていた。最終的にPA内に大畑含めて5枚入っており、それだけ迫力持っていけばゴールの可能性も上がる。
直後に千葉にも追加点のチャンス。50分、右サイドのCK。田口のアウトスイングのボールをニアで佐々木が合わせ、さらには小森が詰めるが何とか掻き出す。しかしセカンドをエドゥアルドが回収し、寄せてきた佐川を剥がして右足でニアに強烈なシュート。確実に枠に飛んでいたが、またも櫛引がセーブ。
ウチも1点返した勢いで追いつこうと攻勢を強める。52分、千葉がマイボールにして小森へと縦パスが入る。そこに酒井が牽制に行くと、小森は風間に落とす。その先にも酒井が寄せるとややパスが乱れ、ルーズになったところをプレスバックした高澤が回収。周囲を確認し、一度城和で作り直す。城和は右サイドへのフィードを選択。向かい風に押し戻されていたボールに大畑が反応し競り勝つ。そのままゴールライン際まで持ち上がり、マイナスのクロス。プルアウェイの動きでDFの視界から消えた佐川が右足で合わせたが、少しボールが切れて左ポストを直撃。
佐川の嗅覚は流石だったが、少しボールがマイナスになった分だけインサイドの回転が強くなった。後方には惇希がいたので、大畑はそこを狙った可能性もある。いずれにしてもロストしてからすぐに奪回し、さらには手数をさほど掛けずにフィニッシュまで至ったのは良かった。
60分過ぎまで、ウチは明らかに前に出ていった。ビルドアップの際に先述の通り立ち位置が修正されており、CMF2枚がフラットにならないように風間がやや高めを取り、その前方には髙澤が落ちてくる。それに対して惇希はスタート時こそ風間の少し後ろの位置にいながら、ボールが前進すると髙澤と入れ替わるように大外で高めを取る。これによって髙澤と惇希を誰が見るかが曖昧になり、惇希が積極的に縦に仕掛けることと相俟って左サイドを掌握する。
右に関しても大畑が大外で高めの位置を取るとアタッキングサードでも仕事ができる。佐川との関係性も良好だし、そこにアマが押し上がってファウル貰ったシーンもあった。
が、結果としてこの時間帯に2点目を取れなかったことにより勝敗もある程度決してしまった感はある。左の惇希のところで毎回突破できるもクロスが合わないってことを繰り返すと、徐々に流れは離れていく。佐川が前から嵌めに行き、GKのキックをカットした場面などでモメンタムが来るかなとも思ったが、地力で優るチームはそう簡単に進めさせてくれない。
84分、自陣でマイボールにしたがパスがズレたところをエドゥアルドに拾われ、そのまま右の田中に展開。田中がワンタッチで上げたクロスにファーでフリーの呉屋が合わせる。櫛引がこの試合何度目かの超人的な反応で防ぐ。こぼれを酒井がクリアしたが、風に押されて距離を稼げず。そのボールを佐々木がダイレクトでボレー。当たりそこないの力のないシュートだったが、これが背番号10の元に転がる。2年目のエースは右足で落ち着いてコントロールし、左足で冷静にコースを突きネットを揺らした。
後半にリバウンドメンタリティを見せたものの、最後は相手の力に屈して1-3で終了。今シーズン初黒星を喫する。
雑感
想定内と言えば想定内だが、前半を耐えられるかどうかが全てだった。
今までも前半は危うさがある試合は多かったが、そこを耐えることで勝点を積んできた。それは前節の熊本戦も同様。ただ、相手のクオリティが上がり、綻びを着実にゴールに繋げてくるとなった時に今までと同様のアプローチで良いのか。3失点ともにミスが絡んでいるとはいえ、前半は特にズルズルと前進を許した。前から掴みに行くのは大賛成だが、取りどころがハッキリしなければ、安易に相手にスペースを明け渡すことに他ならない。監督コメントにある通り、スイッチの入れ方の共有はしたいところ。
攻撃に関してはスタッツの通り惇希のインパクトが最も大きい。ただ、そこにボールが到達する仕組みも後半はできていた。前半はある程度様子見に時間を割くのであれば、決定打は打てないまでもジャブを入れるような展開は必要。強風という難しいコンディションだったのは考慮すべきだが、前進できずにただ重心後ろのままでは厳しい。
3ミッドウィークにルヴァンもあったため、恐らく今節までが1つのターム。変化を加えるのであれば次節からか。3節を終えて2分1敗と、やや苦戦しているようにも思うが、昨シーズンも3節終了時は同様の2分1敗で4節の山形戦で初勝利を挙げている。反対に2022シーズンは3節まで1勝2分だったが4節のヴェルディ戦で初敗戦を喫した。こじつけだが、4節は1つのターニングポイントになり得る。今までの3試合で明らかになった課題をどのように修正していくのか。次もホームで戦うこととなる愛媛戦、ここで成功体験ができれば、自ずと上昇気流に乗っていけるはず。