敲氷求火 vs甲府 1-4

 立ち上がりの失点でプランが崩れ、そこからの連続失点で試合をコントロールできなくなって大敗した前節。シーズン当初から低空飛行は続いているが、ウィークポイントを確実に突かれてシーズンワーストとも言える内容だった。

 ショッキングな内容を引き摺らず切り替えて臨むアウェイ連戦となる今節の相手は甲府。アジアでベスト16の舞台に立ったチーム。
 篠田体制2年目の今シーズンは2月早々にACLを戦う必要があったため、1つのピークをそこに持ってきた。蔚山に敗れて大会を去ることとなったが、J2を戦いながらグループリーグを突破したのはリスペクト。
 三浦と長谷川、井上が栄転、松本、蓮川、品田がレンタルバックと結構主力が抜けた。一方でファビアンゴンザレスやアダイウトンといった火力を強化しつつ、今津や飯田といった後ろで計算できる選手も確保。4-2-3-1を基本としており、前の3-1はかなり厄介。ウタカと三平の目立つ2枚はボール収まるし当然決定力もある。長谷川が抜けたとしても2列目は充実しており、宮崎の機動力は勿論、アダイウトンという明確な武器も手に入れた。その後ろでは佐藤が落ちてCBからボールを引き出しつつゲームメイクするし、そうなればSBはかなり高い位置を取る。
 今シーズンは開幕2戦で徳島・水戸と状態のよろしくないチームを一蹴した後はなかなか勝ち切れない試合が続く。始動が早かった部分も少なからず影響しているのではないだろうか。それでもドローで勝点を着々と拾っているので、勢いが出るとPOまでは堅いと思われる。

 ウチとするとリバウンドメンタリティを見せられるか。ショック療法ではないが、ある意味一度壊れた後に基本に立ち返れるか(戻った基本の部分が脆かったら辛いけど)。昨シーズンダブルした相手、アマのミドル等々で完勝した地、1つきっかけを掴みたい。


メンバー

 ウチは前節から3枚変更。石井→櫛引、酒井→大畑、アマ→風間。櫛引が遂にスタメン復帰。CBと中盤は熾烈な争いに。

 対する甲府は打ち合いながら終盤に追い付かれた熊本戦から4枚変更。渋谷→山内、神谷→今津、小林→飯田、ゴンザレス→ウタカ。今津は有給明け。飯田がRSBに入るので関口はLSBに回った。

前半

 ウチはコイントスでエンドチェンジする。風はあまり強くなかったため、日差しの部分を考慮してか、若しくは以前のNACKでの試合のように声援で指示が通らない状況をなくすためか。昨シーズンの試合でもエンド替えて勝ったよなといった少し前の記憶を引っ張り出し、この試合も同じ展開になれと勝手に願った。

 前節の反省を活かして立ち上がりは慎重に進めたいところだったが、待っていたのはいきなりの失点である。

 6分、ビルドアップの過程で自陣深い位置で甲府のプレスをまともに受けると、大畑から田頭へのボールを木村に狙われてインターセプトされる。木村は隣のレーンに走ってきた関口に落とすと、関口はノープレッシャーの状態で三平に楔を刺す。PA角を取った三平はオープンに立ち、少ないタッチでアダイウトンに付けようとするもDFに当たる。それでもすぐにリカバリーして関口に戻す。バイタルまで到達していた関口は佐藤に渡し、佐藤は右外の飯田へ。飯田→佐藤→木村→宮崎と細かく繋いで宮崎が前を向き視線を引き付ける。宮崎は飯田とのパス交換でタイミングを窺いながらPA角まで仕掛け、再び飯田へ。飯田はワンタッチでクロスを入れると、中央で待ち構えていたウタカが右足でボレー。これは大畑が何とか身体に当てたが、こぼれ球がウタカの目の前に転がる。前節J通算300試合出場を達成した百戦錬磨のストライカーは守備陣のタイミングを外して右足アウトでプッシュ。
 ロストの仕方が良くないので陣形崩れるのと重心は当然後ろのままだから、ただただ甲府の前への勢いを受ける形となってしまった。PA内に枚数こそいれど、跳ね返せずに一番自由を与えたくない選手に仕事をさせてしまっているのは辛い。

 ホーム初勝利を目指している甲府としては幸先よく先制して肩が軽くなり、ウチは脳裏に前節の記憶が蘇る。そうなると、次に何が起こるかも想像に難くなかった。

 10分、甲府に追加点。ハーフウェーを越えたところでエドがスリップしてしまいロストすると、こぼれ球を三平が確保してウタカへ付ける。ウタカは緩急を上手く使って中塩と城和の身体の向きの逆へ進みCB3枚を近付けさせ、甲府左サイドに広がったスペースにボールを流す。そこに突っ込んできたアダイウトンがワンタッチで強烈なグラウンダーのシュートを突き刺す。

 さらに甲府が勢いのまま押し込み続ける。19分、右サイドのCK。佐藤のアウトスイングのCKにニアで三平が合わせると、これが櫛引の頭上を越えていき、勇利也が足を伸ばすも届かずネットに吸い込まれた。

 最初の20分で大勢が決してしまった。甲府は前線4枚でウチの3+2に常にプレッシャーを掛け続けてラインを押し下げる。ウチは後ろに下がらざるを得ず、加えてビルドアップの出口がない。ハーフスペースに立つ田頭に何とか渡そうにもパサーに圧力がかかってパス精度が落ちるし、田頭のところは完全にターゲットとして相手に狙われていた。田頭に入るタイミングで木村が チェックすることで前を向けなくなり、もう前進する術はない。

 で、ボールをロストすると重心が低いのでボールホルダーにチェックすらままならず。時々長いボールで陣地回復を試みるも、落ちていく佐藤和弘が労せずにボールを持って前を向く。また、宮崎と三平が2列目で漂ってポイントとなり、ウチは捕まえられぬ。加えて、アダイウトンの後ろに関口が立って左で2枚大きく張るのに対し、佐藤は二度追い・田頭は背走を余儀なくされる。推進力を持つ相手に中途半端な立ち位置で勝負するとなると、分があまりにも悪い。ボール保持時にはエドと佐藤が大外まで広く張るけど、そこに到達する前にカットされ、1stプレスできずにボールの前に数人置いていかれる。

 このまま殴られ続ける訳にはいかず、30分に田頭→惇希。エドをRSBに持ってきて応急処置。

 3点取ったことで甲府はわざわざ前に出てエネルギーを消費する必要はなく、プレスの基準点を後ろに下げる。ハーフウェーを越えるまでは牽制のみになったことで、ウチはようやく前にボールを運び始める。何度かDFラインの裏にボールを落として佐藤や勇利也がラインブレイクからチャンスを創出するも、惜しい止まりでゴールに至らず。

 差を詰めることができないまま、3ゴールリードを許して前半を終える。

後半

 後半開始から平松→佐川。後半開始15分以内で1つでも返せればまだ希望がある。

 47分、ウチの決定機。セットプレーの流れである程度攻め残っている中で惇希から右外の城和にフィード。城和が頭で落としたボールは勇利也に届かず跳ね返されるもエドがシンプルで前方に入れる。これが大畑を越えて城和に届くと、コントロールして左足を振り抜く。しかし今津が滑ってブロック。それでも中塩が回収して右の大畑へ。大畑はPA角からファーへ柔らかいクロス。大外で待ち構えていた佐藤亮が左足で合わせるも、アウトに掛かったシュートはポストを叩く。

 後半の立ち上がりはある程度前向きにプレーできる時間もあった。甲府がリスクを最小限に留めてビルドアップの制限をしていないので、ラインが押し上がってボールを前に運んでいるように「見えて」はいた。

 が、仕留めるところを仕留めないとやられるのが常である。62分、山内のフィードを城和がフリーなことを察知して胸で収める。横にいた惇希のパスコースを宮崎に切られていたため、城和は後方の中塩に戻す選択。が、これを完全に読み切っていたウタカがカット。そのままスプリントで中塩を置き去りにし、飛び出してきた櫛引のスライディングも躱して右足で流し込む。

 完全に試合が壊れていた。ピッチ上は最早何か起こすことができる状態がなく、やることなすこと悪い方向に左右していく。甲府がいきいきと死体蹴りしていく展開。ウタカのハットトリックのチャンスもアダイウトンのドッピエッタの可能性もあった。ただただ時が流れて試合が早く終わることを望む時間。

 ラストプレーでロングスローから北川が1点を返して気を吐くも、時すでに遅し。

 2試合連続の4失点、惨敗。

雑感

 先週あれだけ崩れながらも特段新たな手立ても処置も見られなければ、同じような事態を招くのも必然に近い。ボールが前に進んでいく気配は乏しく、出口に設定しているであろうところもバレていて蹴り捨てる以外の選択肢はない。
 失点した時点で縦に刺すことにも怖気付く。出すところがないのも当然ながらあるので一概にメンタルだけではないけど、自信を失っているように映るのは間違いない。仕方なくリスクを避けた横パスでボールは外回りになるが、ロストも時間の問題。完全にボールが時限爆弾化しており、横で時間を消費していざ縦を刺そうにも相手の陣形は整っているので攻撃を完遂する難易度は格段に高くなる。

 90分戦い抜いたことへのリスペクトはあるし、選手が一番苦しいのは百も承知である。ただ、この試合で得たものは正直ほぼ何もなく、負けるべくして負けた感が拭えない。

 ミッドウィークに菓子杯で柏と対戦し、週末は絶好調の長崎。柏のプレス強度はJ1の中ですら上の方であり、長いボールを用いてセカンド回収して前進してくる。恐らくターンオーバーしてくるはずだが、厳しい試合なのは間違いない。で、長崎は個々のクオリティと下平氏のポジショナル志向で殴られるのも確実。
 課題は山積しているが、改善の兆しがないのが一番堪える。

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