披荊斬棘 vs愛媛 4-0
狙い通りの形で先制しながらも、リードを保ち切れないどころか引っ繰り返されてしまった前節。内容は明らかに改善されているものの、結果に結びついていないのがもどかしい。複数得点が取れればと言うのは簡単だが、ゴールに近付く形を増やして試行していくしか取り組む術はない。
週の半ばには、鳥栖から河田の完全移籍、樺山の育成型レンタル、長崎から瀬畠の育成型レンタル加入のリリース。河田は登録上まだ出場できないが、レンタルの2人はすぐに出場可能となる。
中断まで試合数が少ない中で勝利を得るべく乗り込む今節の相手は愛媛。J2復帰初年度ながらここまで31ポイントを積んでトップハーフに位置する。
第2次石丸政権3年目で、なおかつJ3で勝ち癖つけて自信持って戦っている。ボールを保持したい思いはありつつも後ろからのビルドアップに固執はせず、セカンドボールワークに枚数割いて上回って押し込む。SBが内側に入ってきて捕まえにくくなるのと、石浦が兎に角厄介。緑の血が流れているのが良く分かる華麗なボールの扱いを見せる一方、ハードワークも厭わない。最前線の松田力も流石の嗅覚と馬力で仕留める。6月は好調を維持しており清水にも3-0で完勝したが、前節は熊本に4失点を喫している。石浦が怪我で離脱した影響もありそうだが、熊本にインテンシティで上回られていた印象。
前回対戦時は両チームともに勝利がない状況だったが、愛媛がセットプレーの流れから得た先制点を守り切り初勝利を挙げた。後半途中から終盤まで数的不利に陥り、相手に2ライン敷かれてほとんど何も生み出せないまま終わった。
毎試合繰り返しになるが、正しいプロセスを経て結果に結び付けたい。相手の出方次第では塩分要素が高くなる可能性があるが、幅を使いながらボールを前に運んで仕留めたいところ。
メンバー
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ウチは前節からノーチェンジ。新加入の樺山と瀬畠が早速ベンチ入り。細貝と平松も久しぶりにメンバーに入った。
対する愛媛は大敗した熊本戦から2枚変更。茂木→浜下、曽根田→石浦。怪我で離脱していた石浦が4試合ぶりにスタメン復帰。
前半
ウチのキックオフで試合が始まる。実況の話では前半はやや愛媛が風上に立つとのことだった。
ウチは立ち上がりからかなり高い位置までボールを運ぶ。両シャドーがウイングの如くサイドに張ってポイントとなる。いつもより明らかに外に出る意識が強かったし、それによってできるスペースにWBが意識的にランニングする。また、右は大畑、左はアマが補填するように立ち位置を取り、ロストしてもすぐに潰そうとする意識がある。ハーフスペースを有効活用できており、クロスから何度か良い崩しを見せた。
また、クロスの際に中央に佐川を置き、基本的にはそこをターゲットにするが、敢えて佐川を越してファーのスペースを狙おうという軌道のクロスも見られている。
例えば、7分のシーン。相手のクリアをアマが拾って菊地へ。菊地は中に視線を送って正対する相手を釣り、大外に流れたアマにフリーで渡す。ここでアマはファーに鋭いクロスを送る。ニアに梨誉、中央に佐藤、ファーに佐川と入っており、佐川の上をボールは越えたが、その後ろでエドがボールを拾う。エドはカットインと見せかけて縦に勝負して右足でクロス。これは谷本にカットされてCKとなったが、PA内までボールを運んだ。
クロス時に佐川がサイズで勝る山口に当てることで、競り勝つ可能性は上がるし、SBがクロス対応することで、さらに外側のスペースはウチのWBが突くチャンスがある。
12分、FKの流れからウチの決定機。敵陣左サイドからのFK。佐藤のファーへのボールは佐川の前で山口に跳ね返されるも、セカンドを梨誉が拾って右足でニアに低いクロス。これもクリアされたが風間が回収して再度大外の梨誉へ。梨誉はオープンに受けてすぐに左に持ち替えてインスイングのクロス。このボールにニアで佐川が首を強く振って合わせたが、徳重が弾いた。ここでもサイドでクロスからチャンスを作った。
19分もゴールに近付く。敵陣に押し込んでクリアされそうになったところを大畑が寄せてカットし、そのこぼれがPA右でエドに転がる。エド→風間→佐川とトライアングルでPAに刺すと、佐川が見事なボールコントロールと切り返しを見せて右足でシュートを放つ。これは枠の右に逸れたが、PA内でも枚数掛けて勝負てきている。
噛み合わせの部分で明らかにウチはサイドで上回る。愛媛のCHはあまり中央から動きたくないが、ウチはWB+WG+CH or CBの3枚でサイドに枚数割いて追い越していくので、必ず1枚は余る。上手く相手のWBを釣り出してその背後のスペースでポイントを作り、重心を上げてハーフウェーを越える。全体が押し上がっている分、愛媛がボールを持ったとしても高い位置でボールホルダーにアプローチできるので起点を作らせずにミドルサードで十分潰し切れる。
30分近くから若干愛媛が高い位置でボールを持ちだすが、ウチは間延びせずコンパクトに陣形を維持しつつ、ボールが後ろに戻されると1stプレス隊がきちんと蓋をしに行って対処。自由にボールを前に動かさせない。
36分、遂に均衡が破れる。中塩からのフィードを梨誉が深い位置で受けてキープしてスローインを得る。菊地がすぐに中塩に入れたが、愛媛は誰も寄せてこない。時間とスペースを得た中塩はファーへの完璧なクロスを入れる。佐川を越えた先に走り込んでいたエドが右足で面を作って丁寧に当てる。ふかさず上手く抑えたシュートはニアを突いてネットに突き刺さった。
ロングスローに備えようとしたのかもしれないが、明らかに愛媛の集中が途切れて隙があった。中塩があれだけ余裕を与えられれば高精度のボールが供給されるし、佐川と山口でミスマッチを生み、そこを越えたところを突いた。
先制点を得たが、前節を含めてここから先の進め方が難しいということをこれまで嫌というほど思い知らされている。まずはリスクを回避してリードのまま折り返す意思統一をする。櫛引がボールを確保した場面では、アマが時間を考慮して繋ぐのではなく重心を上げようと声を掛けていた。
最少得点差ながらリードを持って折り返すと思われた45+1分、待望の追加点が生まれる。櫛引のロングキックを梨誉が頭で佐藤に落とし、佐藤は横の風間へ。風間から菊地に楔が打たれるのと同時にアマが3人目の動きでスプリントして菊地の落としを受ける。そのままPAに侵入するともう1つ縦に抉り、ゴールラインぎりぎりで折り返す。DFの足に当たってバウンドが変わったが、このボールに佐藤が身体を投げ出しながら足を伸ばす。相手ともつれる形となったが、泥臭くゴールに押し込んだ。
風間→菊地→アマの連動した動きは日々の練習や試合前のアップでずっとやっているパスコンの形そのものである。アマがあのレーンに走り込むの偉いし、そこから縦に仕掛けたことで相手を剥がした。最後の佐藤も上手く山口の前に入り込んだ。
今シーズンリーグ戦では一度もなかった複数得点を挙げ、理想的な状況で前半を折り返す。
後半
最下位相手の2点ビハインドは受け入れ難いホームチームは後半開始から2枚替え。石浦→ベンダンカン、山口→パクゴヌ。石浦はまだコンディションが上がり切っていなかったし、山口のディフェンスの部分はウチが明らかに狙っていたので、そこをてこ入れ。ベンダンカンを頂点に据える。
ウチも佐川→平松。前から限定するのが上手いことを踏まえての平松投入だが、前半途中の様子から佐川に少しトラブルがあったのではないかとも推察される。
重心低くして構えても相手の勢いを助長させかねないため、どこまで押し戻せるかが後半立ち上がりの鍵だった。最初の15分で相手に流れを渡さなければ優位に試合を進められる。
48分、ウチの後半最初のシュートシーン。ベンダンカンがボールを収めようとしたタイミングで城和と大畑がサンドしてボールを奪い、城和が頭で風間に繋ぐ。風間→平松→アマと左にボールが渡ると、アマは前方にスペースがあったため左足を強振。強烈なシュートは徳重の正面に飛んだが、威力は十分だった。
55分、愛媛が1つ形を作る。左のパクゴヌ、窪田、谷本の連動した動きでファイナルサードに入り、窪田が正対する大畑を抜き切らずに早めにクロスを入れる。このボールにニアで松田が合わせたが、インパクトが弱く、櫛引が落ち着いて処理する。
バタつくことなくゲームをコントロールし続けていた中、57分にウチは試合を決める。相手最終ラインのビルドアップに対して梨誉がスイッチを入れて全体で圧力を掛け、風間が谷本まで掴みに行ったところでミスを誘い、マイボールのスローイン。平松がコーナーまで走っていき菊地のスロー受けてタメを作る。狭いスペースながら平松→アマ→平松→菊地と細かく繋ぎ、菊地が角度のないところからクロス。このボールにファーで佐藤がドンピシャのヘッドを叩き込んだ。
1点目同様、このスローインでもやや愛媛のマークがぼやけた。スローワー周辺には多くの選手がいるがほとんど余っている。平松が意表を突く動きは見せたが、そもそも小川が深追いせずに放した際に受け渡しが全くされていない。ゾーンで対応するのは基本であるが、場所によってアンバランスな配置になり、結果としてゴール前で誰も捕まえられていない。ウチはまたも左で作って右で仕留める形。山口が替わったとしても、愛媛左サイドの守備時にウィークがあるとスカウティングしていたと思われる。
後半も先にゴールを奪い、3点のリードを得たことでウチは精神的にもかなり余裕を持って試合を進めることができる。かといってやり方は変えることなく、相手のCHまでウチのCHが掴みに行って重心を上げる。
62分、梨誉が尾崎に寄せてボールを掻っ攫い、平松がボールを持って前進。バイタルまで持ち込むと、交差するように動き出した梨誉にスルーパス。梨誉は相手を引き付けてクロスを狙ったが、惜しくもカットされた。それでも、ショートカウンターの鋭さを相手に植え付ける。
64分、愛媛は浜下→茂木、谷本→菊地の2枚替え。
72分、ウチがまたもやネットを揺らす。左サイド深くのスローイン。菊地のロングスローを跳ね返されたこぼれをエドがバイタルで拾い、そのまま右足を振り抜く。地を這うようなシュートはそのままゴール左隅を突いたが、梨誉がGKの視線を遮ったとしてオフサイドのジャッジ。確かに梨誉が干渉したと取られても無理はない(拮抗した試合展開だったらもっと抗議してそうではある)。
74分、ウチはエド→瀬畠、風間→樺山の2枚替え。新加入組の試運転。瀬畠がCH、樺山が右のシャドーに入り、佐藤が1つ落ちてRWBとなった。
75分、早速樺山が見せ場を作る。素早い動き出しでマークを剥がして佐藤からのスローインを受けてPA内に侵入。角度のないところから迷わず右足を振る。惜しくもブロックに遭ったが、積極的な姿勢を見せた。
その流れからのCK。佐藤のインスイングのボールはニアで弾き返されたものの、セカンドを拾った樺山が柔らかいクロス。このボールは梨誉に届かずクリアされたが、その先に走ってきたアマがダイレクトボレー。エジルのように叩きつけるバウンドを利用した勢いのあるシュートは相手の頭に当たってディフレクトがあったもののゴールに吸い込まれていった。流れのあるチームはこういうシュートも枠に飛んでいく。
77分、愛媛は窪田→浦で5枚目のカードを切る。
ウチは俄然勢いに乗る。78分、梨誉が尾崎からボールを奪うと、ハーフスペースを菊地が追い越していく。梨誉から風間を経由して菊地にボールが渡ると、菊地はスピードを落とすことなくそのままPAまでボールを持っていく。尾崎が何とか追いつこうとするのを尻目にファーに鋭いクロスを入れる。少し平松が飛び込むのが遅れてシュートは枠に飛ばなかったが、見事なショートカウンターでフィニッシュまで持っていった。
79分、愛媛にアクシデント。途中出場のベンダンカンがスプリントした際に筋肉系のトラブル発生。恐らくハムの負傷だろう。既に5枚のカードを切っており、残り10分強を4点ビハインドかつ10人で戦う苦しい展開。
82分、ウチはアマ→細貝。今シーズン初出場となる細貝で試合をクローズしにいく。
84分には梨誉→竜士でサイドの強度の補完。
最後まで手を緩めることなく、やることをやり切った。4-0で試合を終える。
雑感
長かった。本当に長かった。ようやく今シーズン2勝目。
櫛引にほとんど仕事をさせず、クリーンシート。相手の状態云々ではなく、ラインを上げる意識もプレスに行くタイミングもチームで整理されていた。良い時はやはりCHが高い位置まで掴みに行けるし、ライン間を空けないように全体が押し上げられている。
そして、ケチャップの蓋が取れた。同じ狙いで複数ゴール奪えたのはチームとしても会心だったはず。これまでも取り組んできたレーンの使い方やボールの動かし方が結果に現れた。佐藤もエドもアマも目に見える結果が出てよかった。でもって、これまでの試合でも効いていた菊地だが、この試合でも攻守にわたって素晴らしかった。スタミナ落ちないし、ロストせずに繋げるのも大きい。CB3人も久しぶりに笑っている姿を見ることができた。
まだまだ1つ前に進んだだけに過ぎない。それでも、ここで得た成功体験を基に更に前に向かう。ここからだ。