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オリジナル作品『クリスマスまでの55日間』と、ディケンズの『クリスマス・キャロル』のお話


1.『クリスマスまでの55日間~ディケンズに捧ぐ~』本編

こちらはXに投稿した、クリスマスドール劇の本編を前編・後編にわけてnoteにて再編集したものです。
実はディケンズの『クリスマス・キャロル』の前日譚として、考えたストーリーです。お楽しみ頂けましたら幸いです。
 
※画像、文章の無断転載、無断保存はご遠慮下さい。

2.登場人物

フェジウィック伯爵

作品の主人公。過去の深い傷を心に抱える若き伯爵。冷淡で人を信用しない性格だったが…。

フェジウィックは、ディケンズの『クリスマス・キャロル』の主人公、スクルージの若い頃の奉公先であるフェジウィックさんの若かりし頃という設定です。『クリスマス・キャロル』では商家を営んでいるような描写がわずかにありますが、ここでは伯爵としました。
『クリスマス・キャロル』の登場人物の中でもどんな人にも陽気で寛大な姿と夫人とのクリスマスダンスが印象的なフェジウィックは、スクルージに「クリスマスの精神」がどんなものなのかを初めに教えた人物だと私は思っています。

クリスマスの精霊

フェジウィックの夢に現れ、フェジウィックにクリスマスまでに『三つの宝』を探せと告げる。
その正体は謎に包まれている。

突如、フェジウィックの夢に現れた謎の人物。フェジウィックと瓜二つの顔で、夜毎、彼に罵詈雑言を吐き、フェジウィックを悩ませますが、彼をサポートし、見守る役目も果たしています。『クリスマス・キャロル』では【過去、現在、未来】の精霊がスクルージの元に現れますが、この彼もまた、クリスマスの精霊です。

ジョセフィーヌ嬢

フェジウィックが街で出会った清廉な令嬢。
慈悲深く心優しい。将来のフェジウィック夫人。

のちのフェジウィック夫人となる彼女ですが、『クリスマス・キャロル』では「フェジウィック夫人」とのみ記されており、ジョセフィーヌという名前はこちらの創作です。若き頃のスクルージの奉公先の老フェジウィック夫妻は陽気で愉快な夫婦として、始終楽しげに書かれています。

ウィルキンス

フェジウィックのかつての同級生。街で再会する。善良であたたかな性格で、家族を大切にしている。

ウィルキンスは『クリスマス・キャロル』で若き頃のスクルージがフェジウィックの屋敷に奉公している時の同僚だったディック・ウィルキンスの祖父の若い頃という設定です。ディック・ウィルキンスについて『クリスマス・キャロル』で詳細は特に語られていませんが、こうだったら面白いなという私の想像を元にしています。

ティム

ウィルキンスの息子。純粋で人懐っこい。
クリスマスが大好き。

ティムという名前も彼のキャラクターも『クリスマス・キャロル』の「ティム坊や」がそのままのモチーフです。『クリスマス・キャロル』で、スクルージは自身が雇っているボブ・クラチットの末息子ティムの第2の父となりますが、フェジウィックもウィルキンス家とティムにとって第2の父となったのではないでしょうか。

3.チャールズ・ディケンズの『クリスマスキャロル』について

『クリスマス・キャロル』(1843年)は、イギリスの作家チャールズ・ディケンズ(1812~1870)によって書かれたクリスマスを舞台にした小説です。

スクルージの元に現れたマーレイの亡霊
(ジョン・リーチによる『クリスマス・キャロル』の挿絵(1843~1844年))

19世紀のイギリスは、ヴィクトリア女王の統治の下、産業革命に成功して世界で最も経済的に栄えた国となりました。

しかし、当時の社会での貧富の差は拡大し、貧困や劣悪な環境に困窮する人々も多く存在していました。

チャールズ・ディケンズは、1812年にイギリス南部のハンプシャーで生まれ、父親の破産によってわずか12歳にして家族と離れて靴墨工場で働くことになり、苦難に満ちた少年時代を過ごした経験があり、貧困や格差社会の深刻さ、社会変革の必要性を作品を通じて訴え、社会改良を目指した、ヴィクトリア朝時代を代表する作家です。

『クリスマス・キャロル』は、ビジネスと金もうけにしか興味のない、ケチで冷淡な老人スクルージが、クリスマス・イブの日に仕事仲間であったマーレイの亡霊と対面し、『過去、現在、未来の精霊』に出会い、その精霊に導かれて時間旅行の中で自分の人生を見つめ、心を入れ替えるという内容の小説です。

改心したスクルージはやがて『最もクリスマスの祝い方を知っている人物』と人々から言われるほどになります。

この小説では、登場人物や場面のリアルな描写を通じて、貪欲、病気、貧困といった人間社会の暗い問題が、また一方では、クリスマスのなかで優しさや思いやり、慈愛の心などの人々のあたたかい性格や家族愛が描かれています。

ディケンズの代表作でもあり、現在の社会問題にも通じるこの作品は、クリスマス・ストーリーの中でも最も有名で心温まる作品として、今も多くの人々に読み継がれています。

4.あとがき

フェジウィック氏の舞踏会
(ジョン・リーチによる『クリスマス・キャロル』の挿絵(1843~1844年))

毎年、クリスマスシーズンが訪れると私は必ずディケンズの『クリスマス・キャロル』を読みます。

老スクルージ氏と「過去、現在、未来」の精霊を通して描かれる当時のヴィクトリア朝時代のイギリスの貧困や格差などの社会問題は、現在の私達の社会問題ともよく似ています。

人々の心の在り方。人と人との繋がりや、助け合い。慈愛の精神。時代は変わっても変わってはならないもの、変わらないものが『クリスマス・キャロル』の中にはたくさん詰め込まれています。

私は『クリスマス・キャロル』の数ある名場面の中でも、老スクルージ氏が過去の精霊に導かれて見た、フェジウィック氏の舞踏会のシーンがとても好きで、いつも、この場面になるとスクルージ氏のようにウキウキ、ワクワクとした気分になります。

奉公人であった若きスクルージに慕われたフェジウィック氏は『クリスマスの精神』を体現したような人物で、改心したスクルージがのちに『最もクリスマスの祝い方を知っている人物』といわれるようになりますが、そこにはフェジウィック氏の存在と振る舞いが少なからず大きな影響を与えているように私は思います。

愉快で心優しいフェジウィック氏にも、もしかしたら、過去にスクルージと同じような経験があったのかもしれない。

ふと、そんな風に思った所から『クリスマスまでの55日間~ディケンズに捧ぐ~』は生まれました。

この作品を考え、ドールを通して撮影しながら、私自身もまたフェジウィック伯爵と同じように、慈愛や人と人との繋がり、家族愛について改めて考える機会を得られたことをとても嬉しく思っています。

どんな時代でもクリスマスは世界中の人々をあたたかい気持ちにさせてくれる素晴らしい日だと、ディケンズの『クリスマス・キャロル』を通して、そして今を生きながら感じます。

最後まで拝読してくださった皆様に心から感謝を申し上げます。

そして、クリスマスおめでとう!

皆様のクリスマスが愛に満ちた幸せな1日になりますように。

5.作品ギャラリー


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